VITA HOMOSEXUALIS
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地下鉄を虎ノ門で降りて外堀通りを歩いて桜田通りに入る。この道を歩くとかつての政治活動の思い出がよみがえって気分が落ち着かない。
われわれのデモ行進は清水谷公園に集結して出発、まさにこの道を歩いて日比谷公園を目指すのだった。
明るい歩道には急がしそうなサラリーマンや、のどかな若いカップルがいた。
だがわれわれはヘルメットをかぶって車道を6列横隊で歩き、両脇を機動隊にがっしりと固められているのだった。機動隊は隙があればわれわれを検挙しようと足をひっかけたり、警棒をにゅっと突き出したり、いろいろなことをする。
そのデモの喧騒も遠い時代になり、私は仕事を取るためにそこを歩いていた。しかし、私はそんなときふと恐怖に襲われた。もしもあのときの「同志」に出会ったら、遁走した私は必ず査問にかけられる。それは爪と皮膚の間にマチ針を入れて行くのだ。そうして彼らの言うなりに自己批判するまでそれが続く。言葉はていねいでやわらかだ。自決を迫る侍のようだ。
私は今でもこの恐怖から完全に自由にはなっていない。
いつか彼らが私を訪ねてくる。だから、それまでの短い間、私は奔放な性を楽しんでいたかった。
政治活動にのめり込んでそろそろ疲れ始めていたころ、同郷の友人が東京に遊びに来た。
まさかデモに連れていくわけにも行かず、私たちが打倒の拠点と考えていた皇居前広場や、帝国主義の象徴と考えていた東京タワーに連れていった。その晩彼は私の部屋に泊まった。
部屋は狭く、布団は一人分しかなかった。物入れを作って少し高くしたところに畳を敷いたのが寝台だった。彼は畳の上に直接寝、掛け布団だけをかけた。私はその下の畳みに寝、普段の敷布団をかぶって寝た。
寝苦しさを感じて目が覚めた。彼のすう、すう、という規則正しい健康な寝息が聞こえた。月のあかりでほんのり白く光っている彼の寝顔は彫像のようにきれいだった。私は彼を抱いてみたかったことを思いだした。目を覚ますかな、と不安に重いながら、私は彼の唇にそっとくちづけをした。それは何の味もしないものだった。
私はそっと彼の布団をはぐった。トランクスから白い腿が元気よくはみ出しそうだった。私はそっとトランクスを脱がしてみた。半分ほど脱がすと、陰毛に覆われた彼のペニスが出てきた。
私は彼がいつ目を覚ますかとドキドキしながら彼のペニスに手を触れた。それは包茎だった。私はそのペニスをゆっくりしごいた。ぺニスはだんだん大きくなり、皮が剥けて亀頭が出てきた。「仮性だったんだ」と私は思った。彼の亀頭はピンク色に輝いていて、つるつると針空いたあって美しかった。私は思わずそれを口に入れた。
私は舌を転がして彼のペニスをまさぐった。それはだんだん大きくなった。
「むん」という声がしたので、彼が目を覚ましたと思い、私はあわててペニスから口を放した。でも彼の寝顔は変わらなかった。
そのうちに彼は右手を不器用に伸ばしてペニスを握り、力の抜けたやり方でそれをしごき始めた。
「オナニーの夢を見てるのだ」
「かれはこうやってオナニーするのか」
その持ち方は私のとは少し違い、かるく握った握りこぶしを棹に当てて上下させるのだった。夢でオナニーしているので動作は正確ではなく、しばしばペニスを握り損ねた。
彼が私の目の前でオナニーしている・・・それはかなり衝撃的な光景だった。
しかし、射精までは行かなかった。しばらく手を動かした後に彼は自分の手をペニスから放した。亀頭は表皮の中に戻った。ペニスは再び小さくなり、私はそれを彼のトランクスの中に仕舞った。
目覚めてから何か言われるだろうか? 私はそれを気にしていた。 言われたら正直に言うつもりだった。オマエが好きだからオマエが欲しかった。 断られれば謝ればいい。
でも翌朝はなにも起きなかった。
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