☆空想代理日記☆
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2007年08月31日(金) 8月31日(金)

 最近、新作のDVDのチェックを怠っているのではないかと急に思った。まったくその通りで、読書ばかりしていてDVDとの二股は上手にこなせていなかった。

 そういうことで、久しぶりにレンタル店へ行った。偶然にも昨日はレンタルが半額だった。これぞまさしくラッキーハプニングだった。

 1度に10枚までレンタルすることができるらしく、不逞者は人が無惨に殺害されてしまう作品を避けてどんどん手にとった。

 周りを視まわすと、半額の情報をききつけたらしい人間たちが、腐った野菜に群がる豚のごとくわらわらしていた。

 しかし、不逞者のように強欲な人はいず、2〜3枚程度しか持っていなかった。

 それを視て不逞者、大いに反省。全力で自分の膝小僧を叩きたくなった。

 瞬間的反省から目醒めた。

 岸和田少年愚連隊カオルちゃんシリーズの最新作がレンタルされているという情報を思いだした。

 二足歩行から四足歩行にチェンジして急いで向かった。

 陳列棚には、すでにDVDが抜き取られているジャケットだけがぽつねんとしていたのだった。悔しさのあまり、下唇を強く噛んだ。


2007年08月30日(木) 8月30日(木)

 気がつけば暑さも過ぎ去って、高校最後の夏を連想させる淋しさが漂っていた。

 あんなにたくさんの蝉が「がんばれ、人間」と励ましてくれていたのに、がんばれないまま蝉は朽ち果てていった。

 何かを忘れた感じのする昨日だった。

 この夏に忘れたことといえば、真夏の甲子園球場に忍び込んで、甲子園の土を盗んでこなかったことがあげられる。盗んだ土のかわりに、悪者たちが笑顔でアイスの汁を染み込ませた不逞者の母校の土を持っていくはずだった。

 そんなふうに夏を振り返ると、いつもより夕陽があかいような気がした。それを友人に言ったところ、

「信号、青にかわったよ」

 とだけ言って友人は携帯電話をぴこぴこしていた。

 不逞者にも夏の終わりを感知する機能があることがわかる。その証拠に、トラックが右折する時「右へまがります。右へまがります」と喋るのだが、いちいち「はい、どうぞ」とこたえたからだった。

 トラックからは女性の声が流れるので、不逞者の女性に対する優しさを披露したのだった。なぜか背景には秋の空。

 もしあれが「右、右なんだけど」だったら、確実に無視するのである。


2007年08月29日(水) 8月29日(水)

今日の一言
夏も終わりに近づいているのでそこらじゅうに蝉の死骸がたくさん落ちていても不思議はないのだが、そんなにみかけない。


 昨日は朝からものすごい雨が降っていて、雷も恐ろしかった。大雨と雷鳴の二者択一を迫られているような錯覚さえおぼえた。

 雨のすごさは口では表現できないほどだった。オールバックのおばさん占い師に「あんた、地獄へ堕ちるわよ」と死刑宣告されているような感じであった。

 雷鳴はといえば、恐ろしく短気のおじさんに「テメェ、地獄に堕とすぞ」と、有無をいわさない雰囲気があった。

 この二者択一の場合、究極とも考えられた。視えない力か無理やり視させられる力かのどちらかを選択しても、どうやら地獄行きはまぬがれないようだからである。

 悪天候の脅威を思い知る1日となった。

 悪天候といっても、箱に入った人を鋭い刃物で本気で真っ二つに切り捨ててしまう天功のことではない。自身が飼っている虎で人間狩りを愉しむプリンセス悪天功のことでもない。

 とりあえず昨日は大雨で、地面がボコボコにされていたのだった。


2007年08月28日(火) 8月28日(火)

 原因不明な背中痛がここまで続くと、もはや原因なんてどうでもよかった。ただ、「痛いよー、痛いよー」とわめき散らしていた昨日だった。

 この痛みをわかりやすく説明すると、包丁の達人がバック転しながら背骨をみじん切りにするようであった。バック転は関係ないのではないかと考えてみたが、関係ないのである。

 昨日も背中をかばうように生活していたため、中途半端なゾンビのようだった。

 背筋をのばすことはできなかったし、進化途中の不完全な人間のようでもあるのだった。

 じゃっかん背中を丸めるような感じでしか歩行ができなかったので、路上で遊ぶ子供たちから視線を集めた。

 下を向きすぎても上を向きすぎても激痛がはしった。したがって斜め下を常に視ていた。道を視ながらにして足許には何もないかと予測をたてて歩行しなければならなかった。とても高度なテクニックと勇気が必要だった。

 もし仮に100円玉が落ちていたとしても拾えないのだった。そう考えながら歩行していると、フタや小石までもがお金に視えてしまった。そのたびにがっかりしていたのであった。


2007年08月27日(月) 8月27日(月)

 依然として原因不明な背中痛により不逞者、なかなか困っていた。

 しかし昨日は日曜日であるとともに格闘技の練習日であった。廃品回収などから漫画や雑誌を盗んでいく悪党を倒すべく、不逞者は筋肉を鍛えておかなければならなかった。

 午前中からトレーニングしようと思っていたのであるが、不逞者の主成分でる「もうちょっと、もうちょっと」の精神が邪魔して午前中からトレーニングはできなかった。

 ならば午後からだと気合いを入れて、ドライカレーを永谷園のお茶漬けのCMに匹敵するくらいの勢いで喰べた。背中が痛くて、ときおり「ちょりああ」と悲鳴をあげたのだった。

 勢いよく背中を動かしたせいか、しばらく電池が切れたタコのようだった。ただ、タコは電池では動かないらしいのだった。

 背中をかばうように歩行した。元気のないキョンシーのように感じた。となると、死んでいるはずのキョンシーが元気だということになってしまう。

 少し外に出ただけで帰ってきた。湿布を貼ろうとしたが背中なのでうまく貼れなかった。床に置いて、不逞者が湿布に向かって寝転んだのだった。


2007年08月26日(日) 8月26日(日)

今日の一言
牛や豚はやわらかい肉のほうが高級なのに、人間はかたい筋肉の男性のほうが高級。


 いつも忘れた頃に背中や肩が痛くなるのであるが、昨日はそれを実感したのだった。

 背中に激痛がはしっていて思うように躰が動かせなかった。ということで、何もできなかった。

 たとえば野菜や肉やラップに小分けした白米などを冷凍しているマードレを目撃しなかった。なんでも冷凍保存するのが好きな頭のおかしい生物で、もはや冷凍依存であるのだった。

 やっとのことでテレビに電源をともしたが、周囲の喧騒でぜんぜん聴こえなかった。しかし背中が痛くてリモコンを再び手にとることが困難であった。したがって聴こえないテレビを眺めていたのだった。

 なにより食事が大変だった。箸を動かすとピリッと痛いからだった。なのでスプーンを持つよりほかはなかった。

 簡単な食事を摂ろうと思い、卵かけご飯にした。白飯の上に生卵をおとすと、白飯の山をすべって茶碗から飛び出してしまった。スプーンですくおうと試みたが、スプーンの曲線にうまくおさまらずテーブルの下に墜落してしまった。がっかり。


2007年08月25日(土) 8月25日(土)

 そろそろセミの叫び声も数少なくなってきた。断末魔の叫びのようなものもいくつか聴こえた。

 近所の子供たちがセミを無差別に殺害しているのかと思った。それなら不逞者、大人として立派に説教をしなければならないとふと思った。

 窓から顔を出してみると、久しぶりに『るのあ〜る』が現れた。眼光するどくセミを捕獲していたのだった。

 口にくわえられたセミはそこで断末魔の雄叫びをあげていた。不逞者から視ると、白猫の口許が騒いでいるようになっていて、奇妙な特技をもつ猫のようだった。

 魚肉ソーセージをちぎって与えたが、るのあ〜るは興奮さめやらぬ状況であった。

 そのままセミを喰べそうな勢いを感じとった。別にセミを喰べることはとめないが、せっかく不逞者が魚肉ソーセージをちぎって与えたので、それもついでに喰べてほしいのだった。

 そうしてくれないと、猫にフラれたようにも思われるし、魚肉ソーセージをちぎって投げる趣味をもった独身者だと近所のおばさんたちに笑われるかもしれないからだった。


2007年08月24日(金) 8月24日(金)

 昨日は久々に本を仕入れに行こうと思った。しかし、地元はおろか、県内にある古本屋はすべて制覇しているので良い本が手に入るとは考えられなかった。

 というわけで、わざわざ県外にまで出向いて仕入れに行くことにしたのだった。

 今回眼をつけたのはトマトのことを「ポマード」と発音する人々で溢れている福井県である。

 市街地には4店舗あり、そのうちの3店舗を巡回したのだった。

 3店舗あわせて50冊ほどの本を仕入れた。

 問題はこのあとである。以前、増えすぎた小説が倒壊しないようにうずたかく積み上げたのであるが、さらに本を増やしてしまった。

 揺らすと爆発する爆弾を解体するかのような気持ちで買ってきた本を積み上げた。

 ぐらぐらするたびに息を強く吹きかけた。祈るような吐息であった。その祈りは天に届いたようで、無事に積み上げ作業を終えた。

 ひと安心して手をかけたら、反対側の本の山が倒壊したのだった。

 人差し指を自分のほうに向け、首を左右に振った。

 また淋しく積み上げ作業を始めたのだった。


2007年08月23日(木) 8月23日(木)

 昨日は、家庭でできる本格的パラパラチャーハンをつくってみようと思った。前世が中国人である不逞者は、現世でチャーハンを極めなくてはいけない使命があるのだった。

 中華鍋みたいな立派なものがないため、代用品を早急に探さねばならなかった。

 家中を走りまわった。金ダライをコンロにのせてみたが、どうやら間違っているようだった。とりあえずフライパンで調理してみることにした。

 家庭でつくる時、ご飯は冷やしておくといいらしい。卵とまぜておけば、黄金チャーハンになるという情報もつかんでいた。あと、フランスパンの生パン粉をまぜると、どうなるのかわからない。

 そして熱くなったフライパンに油、卵の順番に投入した。それから冷やすことを忘れていたご飯をぶち込んだ。

 想像以上にヂュウヂュウ鳴っていたので、不逞者はかなり焦った。突然、知らない人に話しかけられたくらい焦ったのだった。

 でも気持ちは料理人だった。フライパンをがんがんあおって、なかのご飯は飛び跳ねていた。

 出来あがるまでにかなりのチャーハンが飛び散った。バラバラチャーハンの完成であった。


2007年08月22日(水) 8月22日(水)

 昨日は久々にクラシック専門のCDの店に行った。CDの店と書くと、CDで出来た店のようにも思える。

 たとえば実際にそうだったとしたら、この季節は大変である。太陽光を乱反射していて、眩しくて近寄れないからである。

 どうにかこうにか光対策をして入口までたどり着くと、注意書きが貼られているのかもしれない。それは、「傷つけないで。トンじゃうから」だろうと考えられる。

 また、全体的に虹色になっており、ぬるぬるしそうだと勘違いしてしまいそうである。

 このような悪意のこもった想像はさておいて、店内は優雅だった。

 ずらりと並んだ試聴コーナーも沈黙していた。新しいアルバムも発売されていない。新人もいない。

 それもそのはずで、オペラは発売の間隔が異常に長いからだった。

 不自然なカツラをつけていることで近隣では有名である店長に今後の発売予定を訊ねたが、「よくわからないです」のことだった。

 不逞者、店長に軽く敬礼をしてうつむきながら店をあとにしたのだった。後頭部がじりじりとしていた。


2007年08月21日(火) 8月21日(火)

 昨日は何をしたのか記憶にない。というのも、かなり不愉快なことがあったからだった。冷蔵庫にあったはずの魚肉ソーセージが無くなっていた時よりも不愉快なことだった。

 そういうわけで、昨日は何をしていたのかじっくりと記憶をたどってみようと思う。

 頭のななめ前あたりに綿あめのようにぽわぽわしたものが浮かんだ。

 家に喰べるものがなにもなくてどうしようか困っている時に、机の抽斗の中から青いたぬき型のロボットが出てきて「はい、これ。ガリバートンネル」なんて関係ない道具を出してくれた。

 しかし、よく考えてみると、不逞者の部屋に抽斗はない。したがって間違っているということである。

 道を歩いていると1人の少女と出会い、うわごとのように「ケーン、ケーン」と言っていた。

 どうやら胸に7つの傷のある男性を捜しているようだったが、今は21世紀なのでネタが古いのだった。

 まったく見当違いな記憶をたどっていたようで、すべてが不正解なのだった。では昨日は何をしていたのかであるが、それは不逞者もわかっていない。


2007年08月20日(月) 8月20日(月)

 昨日は、舗装されたばかりの真新しい道路が真っ黒に焦げてしまった。それくらい暑かった。ただ、最初から真っ黒なのではないかという疑いが残る。

 日曜日といえば格闘技の練習をしなければならないのであるが、最近の不逞者はひどく疲れているのだった。これは、命の洗濯が必要であった。

 日曜日の朝から弱音を全力で吐いていたら、本当に練習するのが面倒になった。

 たまたま24時間テレビと関係が深いイベントがあるらしかった。そこには芸能人も来るようだった。

 ちょっとだけ行ってみようと思った。

 目的地へ歩いていると、同じ方向を目指している人々がたくさんいらっしゃった。なので急にどうでもよくなった。

 命の洗濯でいえば、これはすすぎのようである。それくらいの汗の量なのだった。

 引き返す時は、本屋やコンビニや酒屋などに立ち寄って、冷房のたくましさを思い知ることができた。

 店からでるとさらに気温が増したように感じ、汗がどんどんふきだしてしまった。

 命の洗濯の場合だと、脱水は目前だった。そして干物になってしまうのだった。


2007年08月19日(日) 8月19日(日)

今日の一言
イヤなこと。
友達の友達と遊ぶ時にある妙な緊張感。


 昨日、少し離れた地域では大雨警報がでていたようだが、不逞者の住んでいるところは依然として暑いままだった。ということで、不逞者の左膝の気象庁は沈黙したままであった。

 近所にある野球場では少年たちが鉄の棒とゴムのかたまりを投げて闘っていた。時々、笑みがこぼれる合戦だった。

 しばらくその合戦を眺めていた。
 心のなかで指導しているような感覚だった。ついでなのでサインを勝手に考えたのだった。

 右手で左手首をちょんと触り、引き続いてお尻を掻いたのち親指をたてて笑う。

 このサインの内容は、お父さんの嫌いなところを10個言えである。もちろんこれは不逞者の勝手なサインなので、少年に届くことはないのである。

 不逞者の架空采配のかいあって、目をつけていたチームが勝った。勝利者賞として、相手チームの監督の全財産がおくられることだろう。

 この時、友人からメールがきて、状況を報告した。

「ひと休みのなかで人生をおくっているようですね。堕落者め!」

 という返信がきた。そっと、眼をそらした。


2007年08月18日(土) 8月18日(土)

 昨日の不逞者、猛烈な二日酔いに襲われた。両足を綺麗にたたんだ、俗に言う女座りをしながら命乞いをするくらいのダメージだった。

 そのため、何をするにも逆風を感じるようであった。くわえた人差し指を目線より高くあげて風速を計測したところ、『逆風速800m』くらいはあったと思う。

 しかし昨日のうちにやらなければならないことがたくさんあった。

 たとえば、ジャポニカという単語を息継ぎしないで2億回は言わなければならなかった。

 さらにたとえば、そこらへんに歩いている野良犬たちをころんと転がして全身の毛を丸刈りにしなければならなかった。

 そしてまたたとえば、空中に放尿しながら飛びまわっているセミをつかまえて近所の子供たちに視せなければならないし、目の前でばりばり喰べるパフォーマンスをしなければならなかった。

 こんなことは急ぐ作業ではない。重要なことは、喰べたものを二日酔いの影響で吐き続けることだった。

 というわけで、昨日はずっと『人間奈良漬け』のようだった。


2007年08月17日(金) 8月17日(金)

今日の一言
どの年の風もながびく。


 昨日は猛暑の影響でエネルギーが不足していたので焼き肉を喰べにいった。なぜなら動物性たんぱく質が喰べたかっただけにほかならないからだった。

 店内はさほど混雑しておらず、まさに不逞者のためにテーブルが空けられているようだった。

 シーチキン缶に残る油をどうしようかといい歳して悩む不逞者、ひととおりの注文をした。店員さんはイヤな顔ひとつせず、笑顔だった。

 その店員さんの笑顔はまぎれもなく本物のように感じた。中指をたてながら「かしこまりました」や「ありがとうございます」なんてことはなかったからだった。

 暑かったこともあり、不逞者はがんばってビールを呑んだ。がぶがぶ呑んだ。口から『飛びだし注意』になるくらいまで呑んだ。

 いつの間にか酔っ払っていたようで、完璧すぎる千鳥足だった。上手に足を交差させながら歩行していたため、超内またのようにも思われた。

 破竹の勢いで胃袋へ流し込んだ肉とビールも、はやく外へ飛びだそうとしているのが感覚的によくわかり、それを必死におさえているのだった。


2007年08月16日(木) 8月16日(木)

 昨日もうだるような暑さだったため身の危険を感じた不逞者、外出をひかえることにした。

 外出をひかえた理由はもうひとつあった。最近、探偵かスパイに尾行されている気がするからだった。

 たとえば鍵をきちんと閉めたはずなのに、帰宅すると開いていることがたびたびあったからだった。

 部屋に入るとテーブルがあるのだが、テーブルの上に置いてあったリモコンが少しだけ移動しているようにも感じた。

 不逞者が外出中に帰宅していたマードレに訊ねても「わからない」とのことだった。

 ほかにも怪しむことがある。

 大切にとっておいたはずのパピコが無くなっていたこともあった。あれは1度にふたつ喰べるのが大変なので、2日に分ける喜びがある。それを探偵だかスパイのせいで失ったのだった。

 その件についてもマードレは「わからない」の一点張りだった。

 不逞者の部屋に置いてあるチョコレートがマードレの部屋にあった時も同じこたえだった。

 これは間違いなく、探偵だかスパイの仕業に違いない。一体、誰が雇っているのだろうか……。


2007年08月15日(水) 8月15日(水)

 昨日も天気が良かったので散歩にでも出ようと思った。恐ろしく遠くまで歩いて帰りのことは一切、考えない散歩である。不逞者はこれを『超人散歩』と名づけているのだった。

 不逞者の住んでいるところの近くには最近、新しい道路が開通されたのだった。

 もとは自然が満載だったところを切り崩して通ったこともあり、なんかいい感じの道路だった。

 その道路をひたすら真っすぐ歩いた。

 かなりいった場所に墓地があり、たくさんの大人たちが菊の花を持って歩いていた。

 ついでなのでお墓参りごっこでもしようかと思った。つまり、知らない人たちの行列の最後尾についたのだった。

「さっさと参って、冷やし中華でも喰べたいわあ」

「ファンタ! ファンタ!」

「実はこの間、キョンシーを視た」

 などの声があった。最後のは絶対に嘘だと思ったが、口に出さないでおいた。

 しかし、いろんな人がいた。掌をあわせて眼をつむり、鼻あたりをもにょもにょ動かして痒いのを我慢している人がとくに印象的だった。

 ともかく不逞者、知らない人の墓石の前で厳粛に参ってきたのだった。


2007年08月14日(火) 8月14日(火)

 昨日は盆休みだったので友人たちも同じようにクズらしく過ごしていると思って連絡したところ、長方形で表面がつるつるになっている単なる石に土下座する儀式をおこなうため時間がないとのことだった。

 ずいぶんと罰当たりなことを書いているが、罰は友人だけに当ててほしい。

 どうも外出したくなった。これは不逞者にとって珍しい反応なので、とりあえず外へ出た。

 まあまあ涼しい風が吹いていた。近くにあるベンチへ行こうと考えたが、太陽のシャワーを浴びていて触ると火傷することを予測するのは簡単だった。

 なので建物でできた日陰に座ってベンチを視ていた。命をかけて視ていた。知らずにベンチに座って「どぅアチぃ!」と悲鳴をあげる人を待ち伏せた。

 人間を警戒するはずの野良猫も日陰にやってきた。不逞者はついに、野良猫にまで人間以下のクズだと思われたようだった。

 蝉が頭にとまったりもしたのだった。蜜はでないから安心だった。

 日傘をさしてベンチに座った女性が、不逞者のことを観察していた。しまったと思った。


2007年08月13日(月) 8月13日(月)

 昨日は日曜日だったがお盆なのでいつものスポーツジムは休業していた。

 そればかりか不逞者の両親は朝からお墓参りの準備で走り回っており、同じところをぐるぐるしていた。

 お墓はなぜか田舎のほうにある。長男である不逞者も出席しなければならないようなのであるが、かれこれ20年ばかし行っていない。

 親戚は圧倒的に女性が多く、おまけにパワフルだ。人ごみなどが苦手な不逞者にとって地獄のような場所なのだった。

 おばさんの心を掌握した会話をすることに適合しない不逞者、いつも理由をつけて欠席しているのであった。

 昨年は、冷たい水や熱いお湯の調査をすべて右足の爪先でおこなっているため足を大切にしたいと理由をつけた。

 実際に爪先で調査をしているので、嘘いつわりではない。

 今年は、どんな理由をつけて欠席しようかでひどく悩んだ。

 ああでもないこうでもないと悩んだ。

 悩んだが良いことは浮かばなかった。しかし、行きたくないことだけは伝えようと思った。が、両親はずっと前に出発していたようだった。


2007年08月12日(日) 8月12日(日)

 昨日は二日酔いだった。どれだけ呑んで二日酔いになったのかというと、80チョプンくらいである。

 ここで説明しておかなくてはいけないことがある。チョプンという単位だ。たった今、思いついた言葉を適当に遣ったので、正直こまっているのである。

 だから1チョプンは、いい加減ピクルスはいらないよマクドナルドさん、と計算することに決めた。

 ということで80チョプンのアルコールを摂取したことになる。とっても意味不明だが、元から意味はない。

 例によって二日酔いの不逞者は無気力だった。もしかしたら生きていることさえも幻なのではないのかと考えてしまうようで、実は頭が痛くて考えてなかったほどだ。

 何と何をしなければいけないのかもわからなくなっていた。

 お風呂場でオシッコはしなくてもいいし、隣のおばさんのおでこを箸でつままなくてもいいようだった。

 しなければならないことを必死で考えた。が、頭が痛くなってその場で崩れ落ちた。

 ついでなので、崩れ落ちたそのままの姿で1日を過ごしたのだった。来客がある度に驚かれた。


2007年08月11日(土) 8月11日(土)

 ここ数ヶ月の不逞者といえばDVDやおばさんの迫力をレンタルすることに夢中だった。

 借りすぎに気をつけていたはずが気がつけばレンタルした品物で溢れていた。このまま返さないでもいいじゃないか、と頭の片隅に住んでいる大きなフォークをもって尻尾がスペード型の悪魔が囁いているのだった。

 そんなのはダメ! ゼッタイ! と全裸に白い翼がはえていて、ハープのような弓矢をもった天使が反論した。

 天使の言っていることはもっともであるが、どこか腑に落ちないのだった。

 道端で出逢った場合、悪魔は黒い全身スーツをまとっているけれど天使はといえば全裸なのである。全裸に凶器をもった存在の言うことは、普通信じないだろう。

 不逞者の心が悪魔に傾きかけたところで天使が土下座した。実に美しい土下座であった。土下座をするために生まれてきたといっても過言ではないようだった。

 接近戦しかできない悪魔に対して、離れた場所から矢を射抜いて天使が言った。

「さあ、借りたものを返しにいくんだ。さもないと……」

 矢が不逞者の顔面に向いていた。黙ってしたがうことにしたのだった。


2007年08月10日(金) 8月10日(金)

 昨日は自然の空気をたらふく吸いこんでこようとそういうところへ向かったはずが、着いた場所は100均と呼ばれる店だった。

 たまたまノートやペンやなめ猫の定規などが欲しかった。だが偶然にも発見してしまったポテトチップスやチョコボールなどを笑顔で購入した。

 あんまり100均には行かない不逞者、たまたま店内が気になったので買い物袋を手にさげたままうろうろした。偶然にも綺麗な食器や視たこともない石鹸をみつけて興奮した。

 視力が悪いので、少しだけかがむようにして商品を視た。

 すると少し離れた場所から店員さんが不逞者に「トンカツにマヨネーズとかつけそうだよね」と言わんばかりの視線を投げかけてきたのだった。

 何がなんだかわけがわからなかったが、不逞者はトンカツに塩をかけるので、気にしないようにしていた。

 白いシャツにネクタイという、出がけの姿の店員さんが不逞者に、「買い物袋を持ったまま店内を歩かれますと、その……、万引きかと」と言った。

 不逞者、怒った。

「ここは100均なので、実行したとしても百引きじゃないんですか?」

 静けさだけが残った。


2007年08月09日(木) 8月9日(木)

 実はこの数日間、不逞者はとんでもないくらいの頭痛に悩まされていた。

 頭蓋骨をぱかっと開いて、なんか硬い棒かなにかで脳みそをぐちゃぐちゃにされているような痛みだった。

 このため、いつものような鋭い言動はできなかった。いつものような鋭い言動とは何かというと、不逞者が教えてもらいたい。

 頭痛からひろがり、首痛、肩痛などもあった。

 原因はいまでもわかっていないのだった。

 マードレが全裸で独りオセロをしているところなんて目撃してはいないし、パードレが見知らぬ子供に向かって石を投げているところも目撃してはいない。

 白いスーツを着た男性がペンキ塗りたてのベンチに座って立ち上がったらゼブラ柄になっているようなマヌケな場面も視てはいないのだった。

 ほかに頭痛の種になるようなことはないかと考えた。しかし、種があって花がないのはどういうことなのかなんて無駄なことしか思い浮かばなかった。

 仕方がないので、このような無駄な時間が頭痛の原因なのだろうと決定したのだった。


2007年08月08日(水) 8月8日(水)

 昨日はセミが自然発火してぽろぽろと木から落ちているくらいの暑さだった。

 暑いなか温かいものを喰べると美味しいという噂を流したことのある不逞者、嘘を真にしておかなければならない気がした。

 ここ不逞者の住んでいる土地には、味噌が嫌いな人間でも笑って喰べられる魔法の味噌があって、鍋にするものだった。

 この鍋には鶏肉がかかせないのだった。ということで近所にあるスーパーマーケットへ行った。

 鶏肉が驚くほど安く、目玉が飛び出そうであった。これは買わねばならなかった。

 ただしスーパーマーケットという場所は、一説によると戦場らしかった。

 不逞者の周りにもカートを走らせているおばさんもいたし、シーチキンの缶をかまえて武装しているおばさんもいたし、「若い頃は良かったわぁ」が口癖であろうおばさんもいた。

 皆それぞれ眼をぎらぎらさせていた。

 50円引きのシールが貼られるのを待っていたからだった。それでなくとも安かったので、良さそうな肉を買い占めてきたのだった。

 不逞者のことを、素人だねぇ、みたいな眼で強く睨んでいた。


2007年08月07日(火) 8月7日(火)

 昨日は何もしなかったし、日記になるような出来事もなかった。

 たとえば未亡人の女将が1人で切り盛りしているような居酒屋で、女将の壮絶な過去の話に泪するようなことでもあれば日記のネタにもなった。だが、そういう居酒屋は知らないのだった。

 もしもそれに近い居酒屋を知っていたとして、そろそろ暖簾もしまおうかという時に、セーラー服を着たおじさんがすべりこんで入店することでもあればネタになった。が、ネタになる前に、なんらかの罪で逮捕されているであろう。

 未亡人の女将もセーラー服のおじさんもいないのだが、どっかの居酒屋の帰り道で、花火の火薬をひとつにまとめたお手製の爆弾を仕掛けているような人物がいればネタになった。ネタというよりスクープである。

 ただ、不逞者も共犯者だと思われそうでもある。それに都合よく爆弾男は発見できないものである。

 あれこれ悩んだ末に嘘が満載の日記を書こうかと思った。しかし度がすぎる嘘を書いて、不逞者の人格が疑われたらどうしようかなどと考えているうちに嘘はやっぱりダメだと思った。

 結局、何もなかったし、何も浮かばないのだった。


2007年08月06日(月) 8月6日(月)

 昨日は背中の激痛で目醒めた。正確にいうと左肩胛骨から2センチくらい背骨に向かうと思いきや下のほうへいったところが痛かった。

 就寝前にヨガの達人ごっこなんて遊びはしていないので、この痛みについては理由がわからないのだった。

 山形県かどっかの人が怪我をして、寝込んでいるところを親族ならびに恋人などが痛みを和らげようと試みて

「痛いの痛いの飛んでいけ」

と呪文を唱えた結果、「痛いののかたまり」が偶然にも不逞者の背中を襲ったのかもしれない。

 そんなバカな、なんて自分でも思ったが、それくらいしか原因が見当たらないのだった。

 背中が痛くて困ったことといえばシャワーだった。夏といえば汗を気持ち悪いくらい垂れ流すので、シャワーを浴びないわけにはいかないのだった。

 ただし左手をあげると電流が流れるので、昨日の不逞者宅の消費電力は不逞者がまかなった。嘘である。

 右手しか使えないということで、髪の毛を洗う時はモデルさんのように片手で頭をなでまわした。

 躰は普通に洗えたが、問題は右手をどうやって洗うかだった。


2007年08月05日(日) 8月5日(日)

 昨日は友人たち数名から連絡があって、海水浴に行きませんか? といった内容だった。

 暑くて顔をあげられないでいたし、冷たい水のなかに入れば涼しいはずだと思う。さらには不自然なほど高値の海産物と一緒にアルコールを摂取すれば、微笑みながら募金したくなるくらい幸せになるのだった。

 ビーチバレーでわざと失敗して舌をペロッと出したり、スイカ割りで自分の足の爪を叩き割ったりもするのだった。

 水上バイクのような乗り物をうまく乗りこなし、首や肩などにワカメをくっつけながら海賊きどりにもなるのだった。

「そこの女子、砂浜に描いてある相合い傘の隣に名前を記入してみませんか?」

 などと、実に変態のような声掛け運動にも余念がないはずだった。

 電話口の向こうで友人たちは迎えに行くだとかどこにしようかなどと盛りあがっていた。

 下敷きでおこした静電気を頭にあてるようなテンションについていけず、

「うん、海はいいねえ。だから行かないでおく」

 そう言うと、友人たちが電話口の向こうで派手に転んだのがわかった。これでよかったのである。


2007年08月04日(土) 8月4日(土)

 あ、雨だ。と思ってうえを向くと眼のしたあたりに雨粒があたる確率の高い不逞者、昨日は病院へ行かなければならない日だった。

 病院へ向かう道すがら観光しているであろう外国人一行とすれ違った。1人の外国人に話かけられて、英語能力がアップルとかマッスル程度の実力の不逞者が動揺しているうちに違う外国人が財布をスッていく。気がついた時にはさらに違う外国人の手に渡っているという、心温まる連携プレイを経験させられそうだと思った。

 しかしそんなことはなく、外国人は不逞者のことをアップルとかマッスルくらいしか喋ることができないことを見抜いているようだった。

 なんだか何もしていないのに負けたような気がしたのだった。

 診察をうける前にシャツのボタンを少しはずして、片方の肩をだして、憔悴しきった表情をつくった。

 先生は当然、不逞者の異変に気づくのだった。そして何があったか訊かれるのだった。

「アップルとかマッスルしか喋ることができなくて、外国人たちにもみくちゃにされました。いや、くちゃもみかもしれません」

 先生、そうですか、の一言で幕をおろした。


2007年08月03日(金) 8月3日(金)

 第二次引っ越し計画にむけて、いろんな物件を不動産屋を通さずに勝手に視にいくことにした。

 もちろん鍵はないので外面だけである。しかし、鍵があったところで中には入れなかったのではないだろうかと思った。

 どういうことかというと、昨日は800℃を超す真夏日だったからだ。太陽熱によって温められたドアノブをちょっと触れるだけでも丸焼きになるのだった。

 凶器とも呼べる灼熱のなか、情報誌に掲載されていた家へ向かった。

 途中、ひからびた男性や側溝に流れる汚染された水を必死に口へ運んでいる女性などがたくさんいた。なかには半分溶けかけている子供たちもいて、はだしのゲンを連想させた。

 目的の家は自然に囲まれており、優しい風が木々を揺らしている優雅なところだった。

 風があるということで、ここらには太陽熱で命を涸らしている人はいず、悲惨な世界とは縁遠かった。

 ただ、鍵を持ってないのでドアノブに触れることはしなかったから、正確なことはわからない。したがって泥棒と間違われることもなかった。

 ゆっくり眺めていると、どうやら誰かが住んでいる気配があった。残念。


2007年08月02日(木) 8月2日(木)

 昨日は全国的に映画館の入場料が安い日だった。これは行くしかないのだった。

 どの映画を観ようか悩んでいると、大人になってから仲良くなった友人から電話がかかってきた。

 いまだに電話を切るタイミングがうまくつかめない不逞者、小学生の頃の思い出話をしてぜんぜん噛み合わない会話を楽しむ。

 それもそのはずで、友人とは通っていた小学校が違うからだった。

 そうこうしているうちに携帯電話の液晶部分が脂まみれになった。これは、不逞者が年老いたという証拠なのだろう。

 とりあえず映画館に行ってから決めようと思った。なかなか自由なスタイルだと思ったからだった。

 家から出た。無駄に広いスペースのところで近所の子供たちが花火をしていた。

 嫌な予感がしたので、そこでしばらく立ち止まった。どうせなので子供たちを観察したのだった。

 奴らは、色とりどりの火花を楽しんでいるというよりは、点火する行為に快感を得ているようであった。

 導火線に点火する時の表情は、誰かの椅子のうえに接着剤を塗りつけて、その主が座るのを待っているような笑顔だった。


2007年08月01日(水) 8月1日(水)

 昨日はスポーツジムを外から見学しに行った。

 中に入って見学すると、応接室みたいな部屋に通されていい香りのお茶と甘いお菓子などを喰べさせられて、いつの間にか契約書にサインさせられるのではないかと危惧しての行動だった。

 そのスポーツジムは大通りにめんしていて、ガラス張りになっていた。歩いたり走ったりする機械がずらりと並んでおり、ちょっと不気味な光景であった。

 タオルを首からさげて、しょっちゅう顔面をふいている男性が万引き犯のような表情で必死に走っていた。

 ただ、同じ場所で脚をバタバタさせているので、悪い夢をみている人の脳内の映像が実写化されているようにも視えた。

 さらにしばらくすると、その男性は周りにいる女性にアピールしているようにも視えた。

 苦しそうな表情を我慢していて、顔面の半分だけを歪めていた。

 不逞者、外から指をさして笑った。

 走る男性がアピールしていた対象の女性が不逞者のほうを視て、笑っていた。

 他人をバカにする三権分立のようでもあるし、そうでもないともいえるのだった。



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