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 お婿にいった四+カカのお話
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   香る珈琲、そして恋 -キリリク話-
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 【2部】 ぶらっく・るしあん-4話
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 【Epilogue】 そして、恋

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4話
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  月読-5話 -キリリク話-
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  月読 後日談


  テキーラサンライズ−19話
 ぎむれっと前日譚


   ぎむれっと-40話 -キリリク話
  かっこいいカカシと、
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 ※途中、18禁あり
  プロローグ  本編  エピローグ



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2018年09月23日(日)
テキーラサンライズ 11)


二度と、テンコには変化すまい、と決意していたはずなのに。

少し肌寒くなってきた外気に合わせ、ボクはひざ上丈のチュニックに細身のパンツを合わせた。秋の暮れた空のような暗めの柿色は、以前、カカシさんが買ってくれたものだ。
いくらか黄味がかっているものの、中忍以上が身につけるベストの色に似ていたため、なんとなく抵抗があり一度も袖を通していなかった。
今の流行りとは違うのかもしれないが、ほかに女性用の衣服など持っていない。ここで出番があって良かったと思うことにした。

頭部に沿ったベリーショート、やや黒目が勝った猫目の女性、テンコが鏡の中からボクを見ている。
今のボクよりも輪郭は細く顎もとがり気味だ。それもそのはず、これは10代前半のボクを下地にしている。

かわいいか?これ。毎度思う。
カカシさんも、ゲンマさんも、かわいいと評してくれたが、ボクは首を傾げる。
女子というより少年に近いと思う。テンコに比べれば、暗部所属で強面のカヤ(本名)のほうが、よほど少女らしい。
でも今回は、ゲンマさんとの約束事だ。周囲をペテンにかけるのに、今一度の変化が必要だった。

カカシさんが何を危惧していたのか、実のところボクはわかっていない。ゲンマさんも、同様だ。
何か危惧するところがあったはず、というところまでしか、ボクたちにはわかっていない。
でも、何かあったのは確かだ。でなければ、カカシさんが噂を追うはずがない。ただ、カカシさんは里外の任務に出てしまった。何か対処するにしても、戻ってからということになる。
だったら、ボクたちにできるのは時間稼ぎだ。
噂を放置すればするほど、敵(かどうかは不明だが、何らかの目的をもって嘘の噂を流した本人)の思惑に嵌まっていくだけだ。

「別の噂を流したいんです。最初の噂を打ち消さなくてもいい、でも、噂が錯綜すれば場は混乱します」
ボクの言葉にゲンマさんは頷いてくれた。
「でもどうやって?」
「ボク……テンコがカカシさんの恋人で、しかもゲンマさんと二股かけてる……かも?」
意図的にほほ笑んだボクの目の前で、ゲンマさんの口元から千本がぽろりとこぼれた。あわてて拾いながらも笑みの形にカーヴした唇の端に再び“ソレ”を差し込む。
カフェでなどなければ、きっと目を剥いてボクを睨んでいたことだろう。

とはいえ頭のいいひとだ。
「なるほど。わかった」
答えが短い。本心では嫌なのがわかる。場合によっては里に戻ったカカシさんが噂のほうを先に知れば、不況を買うのは必至だ。
いや、それ以前にゲンマさんに彼女がいたとしたら、と思い至ったボクは
「あ、すみません。ゲンマさんのご都合もありますよね」
と慌てて言葉を継いだ。が、どうやら、逆にそれがゲンマさんの決意を後押ししたようだった。
「いいや。やろう」
ニッコリ。例のウエイトレスがこちらを見ていないのを確認したうえで見せた笑みは、“特別上忍恐るべし”というものだった。

その後、ボクたちはことさら親密な雰囲気を醸したりはしなかった。そんなことをしなくても、ボクたちは十分、あのカフェのウエイトレスの記憶に残る。
そのままなら、もしかしたら「なんか好みのイケメンと、気にくわない女が同席した」という数多くの記憶のひとつとして、風化するだろう。
だが、そこに新しく興味を引く場面が加わったら……。
彼女が飲み物のグラスを下げに来たタイミングで、ボクは「でも、それじゃカカシさんに」と言った。「やっぱりカカシかよ。じゃあオレは」と言いつつゲンマさんは眉間にしわを寄せ目を逸らせた。
ウエイトレスはパチパチっと瞬きをして、すばやくゲンマさんとボクを見比べ、トレーを手にバックヤードに消えた。「ねえねえ、聞いちゃった」とワクワクとして同僚に話す彼女の姿が目に浮かぶ。

それが第一の仕込み。
そして今日は、第二の仕込み、だ。

少々、流行遅れのファッションを身にまとったテンコ、つまりボク、は歩いて、カフェに向かった。

つる草のような鉄製のオブジェが絡まったガラス扉を押し開く。
「いらっしゃいませ」
「あ、待ち合わせっ!!」
えぇー!!

ボクの視線の先には、ゲンマさんと……。
「おぉ、待っていたぞ」と手を振る、ガイさんの姿が……。

心底驚いたボクは、思わず一歩後ずさってしまった。暗部失格………だ。



2018年09月12日(水)
テキーラサンライズ 10)

 暗部棟で、里内警備の交替まで時間をつぶしながら、ボクは改めて今回のことを考えた。

 あの日、ゲンマさんはにこやかな表情のまま、声だけ尖らせて言ったものだ。
「得をするとか損をするとか以前に、あんたとカカシさんのことを、快く思ってないのもいるんだ」
 そのときボクは不謹慎にも、グッとくる笑顔と不穏当な声音と発言とのギャップに萌える女性もいるのかな、などと、関係ないことを思っていた。
「そのことが、今回の噂と関係しているかどうかは、まだわからない」
 だからこそカカシさんも気にして別動隊を手配した、ということか。
 もちろん私用目的でそんなことはできない。つまり、カカシさんとボクの、いや正確に言うなら“カカシさんとカカシさんの相手”の噂が流れた影に不穏な空気を感じ取り、見過ごすことはできないと思ったから、だ。

「そもそも。あの日のあの茶番自体、カカシさんが意図的に演出した可能性もあるとオレは考えてる」

 え?とボクはあの日のことを思い起こす。
 依頼を受けたカカシさんたち上忍のスリーマンセルと、ボクたち暗部のスリーマンセルが入れ替わるというのが、任務のキモだった。
 入れ替わったボクらは、穏便に目的を達成して里に戻り……本来なら、変化を解くはずが、鳥面のたってのリクエストでカカシさんの姿のまま里に帰還しガイさんに捕まった。

「でも、カカシさんに変化したボクがガイさんと一緒にあの店に行ったのは、偶然ですよ」
「それは偶然なんだろう。それを知ったカカシさんが、一芝居打つことを、咄嗟に考えた」
 なるほど。思わずポンと手を打つところだった。危ない危ない、テンコに変化していることをすっかり忘れるところだった。

 ボクたちの話は、まず周囲の一般の人たちには聞こえない。聞こえないように話しているからだ。
 でも動作は見られている。目立たないようにはしているので、遠目から目を引くようなことはない。が、そこはそれ。身近に接したウエイトレスなどは、ゲンマさんのほうを、チラチラとみている。
 一応同席しているボクが、あまり年頃の女性らしくない行動をとれば、否応なく目にとまるし記憶にも刻まれる。

「何かをあぶり出そうとするなら、偶然の機会をうまく利用するというのは、いい手ではありますからね」
 務めてにこやかにボクは返した。まけじとゲンマさんも、にっこりとほほ笑む。ボクたちは傍から見れば、仲のいい……恋人同士ではなくても、兄妹……ぐらいには見えるだろう。
「確かに、カカシさんがボクに変化する必要は、なかったですよね」
「そういうこと!」

 噂を流してまで、カカシさんとボクの関係を表ざたにするとか、あるいは、決定的なものにするとか、よくわからないが、ボクたちに悪意があったとして、何が目的だったのだろう。

 要するにカカシさんとボクに注目が集まれば、多少は控えるとか、隠そうとするとか、そんなふうに僕らが動くだろうと思われたのだろうか。
 だとしたら、それはカカシさんというひとを余りに知らない、知らなすぎる。
 この際だから、公にしちゃおうか、みたいな方向に向かう可能性も十分あるのだ、あのひとには。
 暗部の古参や、カカシさんの長い知り合いのなかで、半ば公然というのは、そういうことだ。

 そもそもカカシさんは、ご尊父の自死とその後の諸事情とが相まって、一時、保護という名の監察対象だった。
 オロチ丸の実験体であるボクは、もともとが監察対象だ。

 そんな僕らが接近すれば、いろいろと勘繰る者もいるだろう。
 だが、それはボクがカカシさんに拾われて、彼の隊に配属された数年前なら、わかる、という話だ。
 当時も影ではいろいろ動いていたらしいことは知っている。が、特に圧力をかけられたことも、なかった、たぶん。
 だからボクらは暗部の同じ隊で任務をこなし、やがてカカシさんは暗部を離れ、ボクは暗部でも小隊長を務めるのはもちろん、分隊長を務めたり、という、それなりの位置にいる。
 
 なぜ、今になってボクらの噂を、暗部の外で。
 そう、なぜ、今になって、だ。
 しかもカカシさんの相手が「下忍」だなどと、うその噂を流して。

 里の空気が、何か大きく変わろうとしているのかもしれない。
 何かが水面下で動いていて、だからカカシさんとボクのことも、改めて水面上に上ってきたのかもしれない。

 僕は、面をしたまま、ふぅとためいきをついた。
 いずれにせよ「かもしれない」という推測ばかりだ。

 僕がカカシさんに変化して、カカシさんがボクに変化して、わいわいやったあの夜は、とても楽しかった。
 ゲンマさんが言うように、ガイさんもゲンマさんもイノシカチョウのお三方も、悪乗りしてくれて、みんなで大笑いした。
 「そういう悪戯や遊びを知らずに、6歳やそこらで上忍になって、戦場を駆け巡っていたからなぁ」というゲンマさんの言葉を反芻する。
 イノシカチョウのお三方は、確かに父親というほどではないけれどカカシさんよりは少し上ではあるので、まあ、わからなくはないが、同年代のはずのガイさんやゲンマさんが、カカシさんの悪乗りに乗っかるというのが、なんだか意外だった。
 でも、それぐらいカカシさんは好かれている。
 つまり好かれているカカシさんに、張り付いている僕が目障りということもありうるわけだ。

 里の古参もカカシさんのご尊父がらみや四代目がらみでいろいろあるだけで、カカシさんそのものを疎ましく思っているわけではなく、ただ、そこに引っ付いているボクが邪魔という可能性も十分ある。
 と思ったので、ゲンマさんにちょっとした依頼をしたのだが。

 ものすごく、いやそうに眉間にしわをよせていたが、最後には「わかった。乗りかかった舟だ」と言ってくれた。

 あるいは「ヤブヘビ」だったかもしれない。
 まあ、それはそれ、かな、とボクは自分に言い聞かせた。