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2020年12月03日(木) ■
イエイガーマイスター/ハンターの守護聖人〜現代 2)


もし、自分たちが今の時代に若者だったら。
テンゾウとの関係にも、もっと自由な気持ちでいられただろうか……。
そんなふうに思うのは、今の時代がかつて自分が若者だったころよりいい時代になっていると感じるから、なのだろう。
いいことだ、とカカシは思う。いい時代を作ったのは、ナルトたちの世代だ。けれど、“いい時代”を維持していくことになら、自分も少しは役立つことができるだろう。

「ボクたちは、あの時代だからこそ出会えたんですね」
カカシの思考を断ち切るようにテンゾウが言った。彼方を眺めながら、むしろうっとりと呟くように。
「ボクのような過去の負の遺産みたいな忍が、こうやって生きていられるのも、今の時代ならでは、ですね」
ああ、やっぱりテンゾウは自分のことをそんなふうに思っているのか、とカカシはそっと息を吐く。
「まあ、負、と言っても、負同士を掛け算すると正になるらしいですから、逆転勝利ということもあります」

言って、テンゾウは視線をカカシに向け、微笑んだ。
敵を恫喝するときや、たまに部下に睨みを効かせるときに浮かべるテンゾウの笑みは、それはそれは怖い。が、その欠片もない表情に、カカシも釣られて笑みを浮かべる。
「掛け算する相手の“負”って、もしかして、オレだったりする?」
「さあ、どうでしょう?」
そして、また二人で笑いあう。

火の国の平均年齢と比べれば、カカシはまだ若い。それでも同年配の忍は少ない、つまり引退するか亡くなっているのだ。
時代が悪かった面ももちろんある。とはいえ、総じて忍の寿命は短いと言えるだろう。
戦闘で亡くなることも多いが、チャクラを駆使して術を使うという、そのことが寿命を縮めるのか、案外、壮年の忍や引退した忍が突然、亡くなったりすることも少なくない。

だから少年のころに知り合った二人が“いいトシ”になり、時々ではあるけれど、こうやって任務を共にすることは、稀有とまではいわないまでも、よくある、というほどでもない。

特に今回のように、戦闘が前提とならない任務の場合、若手を育てる意味もあり、細かい指示を出したうえで下忍を使うことも少なくない。
カカシを指名したのは、それだけナルトが(もしくは側近の知恵袋も)危機感を抱いているからだろう。

意外性�癸韻噺世錣譴襯淵襯箸世�、ただ無謀なわけではない。下忍になりたてのころなどは、そう思われていた節もあるが、彼なりの信念(本人曰く“忍道”)に従ってのことだ。
途中の戦略については力任せなところが多々あったとはいえ、彼なりの勝算に基づいていた。ただ、なかなか周囲の同意や理解を得るだけの説得力を持たなかったのも事実だ。

果たして自分も、ナルトの力量をきちんと見極められていたのだろうかとカカシは思う。他の者よりは理解はしていたとは思うが、さてはて……などと、想いを馳せていると、血液を研究所に持っていった忍が戻ってくる。
「あの」と言いよどんだ後に、意を決したように一息ついてから、告げた。
「お二人に、研究所に来てほしいと」

カカシはテンゾウと顔を見合わせた。

「わかった。監視体制はいつも通り。ボクの代替は立てない、ただ何か危急のことがあれば連絡を」
テンゾウはそう告げると「いきましょう」とカカシに向かって肯いた。

「隊長の代替を立てなくて大丈夫?」
研究所に向かいながら、カカシが尋ねるとテンゾウは、ふっと笑う。
「隊長などというものは、何か事起きたときのためのものですから。ボクがいなくても回るようにしておくことが基本です」
へえ、というカカシの呟きが聞こえたのかどうなのか。
「と、昔カカシさんに教わりましたから」
カカシも笑みを浮かべた。
「そんなことを言った記憶もあるなぁ、確かに」

実に暢気な会話を交わしながら、二人の神経は鋭く研ぎ澄まされていた。
戦闘時のように張り詰める、というのではなく、ただ静かな水面に枯葉よりも軽い羽根が落ちても波紋が広がるように。

研究所の入り口に着いた、とドアが開く。
「待っていたわよ」
大蛇丸がいた。