カゼノトオリミチ
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2008年03月31日(月) 春によせて…チイサナオモイ




チイサナオモイ…

かさねて かさねて

それは

春のばらの 花びらのように

幾重にも かさねて



ある日

風に 呼ばれて 散ってゆく



花びらは 土に落ち

優しい 雨にうたれ

何も語らず 朽ちてゆく

それでも 終わらない

変わらない

チイサナオモイは…



きっとまた どこかで

芽を出す 忘れられても

きっとまた

いつかの春に


2008年03月29日(土) カタカナの花





どうやら 歩いているの

みんなそうだよ というと いいえ もう

自分のことしか みえないと 

まわりのことなど みえないと



最近は 花の名前だって

カタカナばかり どうしてだろう

おぼえきらない



ひとつの 話を 分け合いたい

でも その方法を もう

とうに忘れてしまって



誰も 私の話など 気にも留めない と

古い 思い出の曲を

いつもつぶやくように 歌っている

自分だけの ドアのむこうで



どこで 砂ぼこりと 消えてしまっても

誰も 興味などないでしょう と



名を おぼえようともせず

揺れる 花を いとおしそおに

みつめている 

夕暮れの風が まだ冷たい ね





2008年03月24日(月) 心配しないで




ごめんね っていうのなら

理由は 言わないで

理由なんて いらないの

ごめんねの ひとことで もう それだけで いい



それが 最後のわがまま

理由なんて いらないの

理由なんて 言わせないの

なんていじわな人だろうと 思ってちょうだい



ウソだといってほしい

冗談 だといってほしい

でも うけいれるしか ない こと

わかってる わかってるから

だから…

理由なんて いらない 言わせない

ちゃんと

うけいれて あげるから

大丈夫だよ そんなに 心配しなくったって


2008年03月20日(木) 春の雨の理由




手が止まり 思い直して 窓を開ければ

冷たい春の雨

ベランダの物干し 揺れて

うす墨色の低い雲 西へと流れる

なのに

向こうに見える建物たちに ほんのりと

光が射しているように あかるくみえる

恵みの雨 という言葉が浮かび

冷たい空気を 深呼吸



黒い土の下で 眠る小さなものを 思い出す

身体に 春の雨の理由が 流れ込む

気持ちに 新しい息吹が 流れ込む

季節は だまって動いている



どん感な 生き物は 

時をもてあまし せつなさばかり集めては

窓の外を ながめている




2008年03月17日(月) 浅い春の午後に




早い春の頃は 気まぐれで

じんちょうげの香りと 降り出しそうな 灰色の雲と

中途半端な ぬるい風が

開けなくてもいい 小さな不安の箱を ひらく



どんよりの 続く先で きっと

忙しくしているのでしょうね

こんな季節など ものともせずに

笑いながら 怒りながら 力強く



どうか 眉根をひそめることの ないように

むずがゆい 鼻をこすってみて

空を見上げ ふと タメ息など つかぬように



気圧の谷が 連れて来る

メランコリーなど 感じぬようにと

願っています 遠くから

街に 静かに 憂いの沈殿する

この 浅い春の午後に




2008年03月15日(土) 交点




朝日が昇れば 雨戸を開け

一日を 呼び込む

夕が来れば 雨戸を下ろし

今日という日を 終わらせる

昼間 街角で じっとこちらを見ていた

栗毛の小さな のら猫も

どこかの木の下で 目を閉じたろうか



あの時は ごめんね 知らなかったんだ

逃げ出す姿 三本足で

左うしろ足 動かなかった

だから あんなに 痩せてたんだね



ガラガラガラと 雨戸が閉まる

やがて ちっぽけな あの猫のこと

忘れていくんだろう

あの子の 朝 と 夕 は

変わらず 訪れるだろうに

街角で偶然 重なった点は また 離れて

たぶんもう

交わることは ない


2008年03月08日(土) 夕暮れ 便り




毎日 ベランダ 通り過ぎる

夕暮れの風に のって 小さな手紙が

時たま 届いた事が

あったような 気がして

今日も

ベランダで 待っている

開いた手紙に なんて書いてあったか

はらり さくらの花びら すり落ちたか

薄灰いろの 記憶を たどり

今日も

こうして 待っている

とうの昔に

郵便屋さんは あちらを発ったと

旅の 鳥

ならばもう 返事はこないだろうと

胸の奥 絞りながら

それでも 待っている

でたらめな言い訳と メロディ

口の中で くりかえして

なるべくキレイな 心でもって



2008年03月04日(火) しじゅうから




しじゅうからの 鳴く朝

口にすれば きっと軽くなる

ちょっと 嫌なことが あったの

ちょっと ツライことが あったの



ココロの糸が するする ほどけてゆく



母は ただ 刺繍糸で 手仕事を

柔らかな布は 

いつか 茶色い染みとなってゆく



ワタシは ただ コトバを並べ 

ベランダで 風に散らすだけ

時の流れに 意味を問うても

返事は来ない

  

積み木 重ね 崩れ 繰り返す

また迎える 次の朝

刺繍糸 コトバ それぞれが 時を紡ぎ

黙って 散り行く



針のひと目が やがて小さな花を 作るのを

飽かずに 眺めていた

母は 幼い日を 刺繍の草花に

凝縮していた



natu