カゼノトオリミチ
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2007年03月30日(金) 高いところに居るお月さま





風吹く夜道を急げば 足元に街頭の影が揺れて

いつの間にか 天空は晴れ 灰色のちぎれ雲の

てっぺんに 居りますは きりり引き締まった

銀色に輝くお月さま



ずいぶん高いところまで 昇られたこと

さぞ良いながめでしょうか

ついでに あの扉のむこうに何があるのか

そこから見てはもらえませんか



重くて 重くて 開かないのです

両隣の扉を軽く開け するり抜けてゆく人々の中で

思いがけず 自動改札機のピンポンに

きまり悪げに 立ち尽くすヒトのよう

私は今日も扉の前で 途方にくれています



あの扉

硬くて開かないのか 私の力足らずなのか

それとも

誰かが反対側からも 開かないように押しているのか



お月さま 扉の向こうが

そこから見えたら 今夜の夢の中ででも

教えてくれると ありがたいのですが







2007年03月26日(月) アオゾラ




アオゾラ は ここにある

けして消えることのない ココロの中の空気孔



それは 私の ワタシからの出入り口

雨の日も だから平気

のぞいてごらん

その先には アオゾラが広がっているから



けして消えることのない

誰にも きっとひとつある 耳の奥の通風孔



しんと 息を止めてごらん

懐かしく心地良い風のオルガンが

聴こえるから











2007年03月19日(月) 柔らかな光のあたる場所で




牛乳びんの底に座って空を見ている



まあるく切り取られた うす水色の青空の

8時の方向から 2時の方向へ

大きな鳥が数羽 横切るのを見ている

耳に かすかな羽音を聞けば

あぁ 私にも そよ と風が吹く



傍らの 小箱は開けないで

心さそうメロディを奏でるけれど



ぶあついガラスをとおして差し込む 柔らかな光は

淡い紫のコブシを撫でてきたよと 得意げ



もう少し眠りたい

「わたしに なにができるだろう」なんて

もう言わないから







2007年03月17日(土) 空との会話




もくもくした柔らかな土の上を歩く

この春 いちばんのウグイスの声に

ぐるっと山々を見回せば 

尾根を渡っておりてきた風はまだ 頬に冷たい



季節は 行きつ戻りつ安定せず

小箱の奥の面影までが ふと 不安に翳ったようで

うす水色の空に浮かぶ 絹綿雲に 

ふたこと みことの呟きを 託したくなる



わたしはここにいます

まいにちが ここにあります

おきて つくり ねむります そのくりかえしです

そのために いきをしています

息をさせてもらっています



コンクリートのベランダで今朝

黄色の水仙が咲きました



私の毎日も ここにあります

起きて 創り 眠ります それだけです

それ以上の何ものでもありません

それだけなのに

息をしています

こうして

ここにいるんです












2007年03月06日(火) 晴れの空は誰にも




どろごろん と雷が一度 大きく鳴って

この通り雨も あがるようすです

薄墨色を幾重にも重ねた空も

もう アカネの頃



東方が わずかに緩み そこから

こちらを覗き込んでいるのは

うっすら オレンジ色した雲と

あの水色の空 



だから 言ったと思います

晴れの空と 曇り空と

その両方を 誰もが持っているんだから



重たい雲に 押し潰されそうな朝も

思い出して

あの時 晴れ渡る空を 見上げたじゃあないですか

その時は またきっと再び すぐにやってきます



歩きたくなければ じっとしていていいから

でも 心のどこかに

きっとある 水色の空



晴れた空を 見上げたことがあったよね

一度だけでなく 何度もあったよね












2007年03月02日(金) そんなまいにち





わたしになにができるだろう

とおくから おもうだけで

なにができるだろう



かみさまでもなく まほうつかいでもなく

きょがくのとみをもつ おうさまでもなく

ただ しんぶんや えいぞうで

それを しることしかできない



そして わたしときたら

ひだまりで ぬくぬく するだけ

だれのみがわりにも なれない なまけもの



ただ

てのとどくところで ちいさなせつやくをし

ちいさないのりをつぶやき

ちいさないきものを だきしめる



そんなていど

そんなていどの まいにち













natu