My life as a cat
My life as a cat
DiaryINDEXpastwill


2014年09月30日(火) 卵の重み

さつまいもとオレンジだけで煮れば低コストなのだが、贅沢にバニラビーンズなんかを一緒に煮たものだから、一気にコストは倍以上に膨れて料亭価格になってしまった。気候がいいので、ゆっくり料理するのが幸せ。食欲の秋は料理熱と共に到来する。野菜価格の高騰はだいぶ落ち着いたかな。恋しかった葉物も買いやすくなったし。

10月から食品の値上げラッシュ。価格が変わらなくても気付くと袋の中身が軽くなっているのには幻滅する。食いしん坊の才能か、そういうことは目敏くすぐに気付いてしまう。食品の適正価格というものは非常に見抜きずらい。わたしがいつも不安に駆られながら買う食品のひとつは卵だ。オーストリラリアではどこでもCage eggとFree rangeの2種類が置いてあった。Free range1ダースは2ドル程度高くなっているが、ケージの中でストレスに満ちた鶏の気味の悪さを想像せずにすむなら2ドルは惜しくなかった。それがここではそういうチョイスがない。高い卵は栄養価がすぐれていたり、鶏に与える飼料が良いという記載がされているだけでCage eggにはかわりないのだろう。実家の庭で自由気ままに歩きまわっていた鶏は気まぐれにたまに卵を生していたが、自然なペースではとてもスロウで、彼らの卵はお宝のような貴重さだった。そんな背景があって、″特売100円″なんてのは正直うすら気味が悪い。卵を口にするときはその重みを感じてしまう。

昔、欧米では毛皮を身に着けていると卵を投げつけらたという。その話を聞いたとき、毛皮を剥がれた動物達の痛みと同時に投げつけられた卵の出所を思って、大きなため息が漏れた。


2014年09月20日(土) リサ・ラーソン展

銀座松屋で開催されているスウェーデンの陶芸家のリサ・ラーソン展を観に行った。入口付近では″北欧フェア″などというのが催されていて、人でごったがえしている。IkeaもIittalaもムーミンもマリメッコも嫌いじゃないけど、そこまでの北欧ブームもいまいち理解できない。展覧会のほうはそこまで混雑していなかった。リサさんの緩やかな時間と優しく温かな手の温もりが練り込まれた作品の数々、動物も人間もどこか完璧でない歪さが愛嬌で癒される。

なぜが一番インパクトがあったのはリサさんの旦那さんが拾い集めた彼女の「失敗作品」だ。彼女が捨てた物を旦那さんが拾い集めて、石を積んで作られた壁の隙間にはめ込むように置かれている写真があった。好きな人の手で作られたものはたとえ本人が失敗と言おうと、愛しいものだ。そんな愛情物語が詰め込まれていた。わたしが焼いて、床に誤って落としてしまったキャロットケーキを″大丈夫、食べられるよ″と丁寧に埃をはたいてくれたボーイフレンドのことを思い出した。

外は小雨がぱらついていた。デートでくるはずだったのに、急に彼の家族が倒れてしまい、病院からキャンセルの連絡が来たので、一人で来たのだった。こんな日は一人でいることが妙に寂しくて、過去のあたたかかった時間ばかり思い出してみたりする。


2014年09月09日(火) 親子の時間

不貞行為ばかり働いて、男としては全く食指の動かない同僚が、ランチを食べながらふと思い出したように娘の話をしたりする。離婚して親権を母親に譲って以来週に一度の″デート″を重ねているそうだが、愛し合う二人の時間は天下無敵、一緒にお風呂に浸かり、シャンプーをしてあげたり、遊園地に繰り出したり、買い物に行ったり、甘い時間に身を委ねている様子だ。娘は体も心も日に日に大人になっていき、お父さんに制汗剤を買わせたりするとか。。。。

こんな話をしている時の彼はいつもより何倍も頼もしく素敵な男に見える。男性に限らず、人は守るべきものが背後にあると、とても大きく見えるものなのだね。彼を″男″として見るとがっかりさせられることばかりだが、娘の話を聞くたびに、それでも父親としては立派な奴だ、と見直す。人は趣深いな。悪いだけの人なんているわけないね。みんな良いところが必ずあるんだもの。世の中に、神様に感謝してしまう。いつもと変わらず仕事してるけど、こんな話を聞いた午後は心がぽかぽか温かいのだよ。


2014年09月05日(金) 焼きたてのパンの薫りに

遊びほうけた夏休みの代償を払わされるかのごとく仕事に追われていた。元気の源であった料理の時間と料理そのものを失うと、オイルが切れた自転車のチェーンのごとく心と体がぎしぎしと音をたてはじめる。起きたそばから疲労感に取りつかれた朝、窓を開け放ちコーヒーを啜っていると、どこかから風に乗って漂ってくる焼きたてのパンの薫りに何故か涙が出てきた。その夜、いつもより早く会社を出て野菜を買い込んで、ニラ玉とピータンの入った中華粥を作った。垂れ流しのテレビではなく映画も観た。″Love in the afternoon(邦題:昼下がりの情事)″のオードリー・ヘプバーンのあまりにもの可憐さに心ときめく。

″気になる男の子″とのデートは続いてるけど、なにせ職場が同じなだけに、今はお互い仕事の悩みに頭を抱えていて盛り上がりに欠ける。週末は美味しいものを食べて、のんびり読書でもして、ささくれた感性に栄養をつけてあげることにしよう。


Michelina |MAIL