読書記録

2020年07月31日(金) 白秋期 地図のない明日への旅立ち / 五木 寛之


人生を、青春、朱夏、白秋、玄冬の四つの時期に分けて考える。

白秋期は晩年ではない。フィジカルにはさまざまな問題を抱えていたとしても、いまの五十歳から七十五歳までの時期は、むしろ人生の収穫期(ハーベスト・タイム)ではないかと、私は思う。

私は戦後に青春期を送った人間です。その人間にとって、家族の絆とか、血縁の絆とか、地縁の絆とか、そういうものから逃れて自由な個人として生きるということが、一つの夢でした。ですから絆というのは、自分を縛る欝陶しいものという感覚が強かったのです。いまさら「絆」などと言われても、という気分がどこかにあります。
白秋期の黄金を手に入れるには、「絆」ではなく、孤立しても、元気に生きていくという道を考えるべきだ、と思うのですが。

白秋期は、子供たちも大きくなった、ちゃんと家も残した、やるべきこともある程やった。こういう人びとが、現役から退いて林に住み、そこで来し方行く末を考え、人間とはいったい何なんだろうということを思索したり、自分の求める場所に行ったりして暮らすことができる季節です。


げに気になるには、自分の天寿です。それまでの時間を、自分自身のために使う。それが「白秋期」の目的ではないでしょうか。






2020年07月25日(土) 罪の轍 / 奥田 英明

 戦後最大の誘拐事件といわれた吉延ちゃん事件がモチーフ。


継父から虐待を受けていた宇野寛治(20歳)は、当り屋をさせられていたせいもあって時々意識が飛んだ。それが原因で周囲から莫迦だと言われていて、何をしてもドジばかりで少年院をでてからもいとも簡単に空き巣を繰り返していた。
礼文島から命からがら脱出して東京に行き、たいした考えもなしに誘拐事件をおこし簡単に吉男ちゃんを殺害して身代金50万円を手にした。

捜査に当たった大学出の落合刑事、検察のトップや老練な大場刑事、いろいろな立場の人の関係も面白い。

山谷の旅館のしっかり娘である町井ミキ子やその母、弟も。

事件は東京オリンピック開催の前の年のお話。
今のように携帯電話もパソコンもない時代の捜査。
浮かび上がった宇野寛治が話した方言も、落合刑事が大学の剣道部の後輩を動員しての捜査。
身代金要求の電話の逆探知もできなかった。


とにかく面白かった。
本を読むのが遅い私が分厚い587ページを二日半で読み終えた。

それにしてもタイトルの ”罪の轍 ” 言いえて妙だと思った。




2020年07月17日(金) 精神科医が教える「がんばらない老後」のすすめ / 保坂 隆


 老後はあまりがんばらず、少し気ままにのんびり手を抜いて、楽しく生きよう!
ベストセラー『精神科医が教える ちょこっとずぼら老後のすすめ』の著者が新たに伝える、ストレスのない「第二の人生」のすごし方。人間関係、お金、物、家事などをちょっぴり適当に。
無理せず快適に暮らすおすすめ生活スタイルを紹介。


私の場合、がんばりたいとはそんなに思わないが、死ねないからにはそこそこがんばるというか、今を維持していきたいとは思う。

手元に置いて、気持ちが萎えたときに読むのがいいと思う。



2020年07月07日(火) 70歳のたしなみ / 坂東 眞理子


 この『70歳のたしなみ』は書き始めてから二年と私としてはかなり長い時間をかけて完成した本である。
 当初は「70歳、遊んでいる場合か!」と叱咤激励調で書くつもりだった。人生は百年時代、寿命が延び体力のある高齢者がこれだけ増えているというのに、終活だの断捨離だの墓じまいだの「残された人に迷惑をかけないで世を去る」準備をすることばかりに関心を向けるのはいかがなものか。残り時間がこれだけ長いのに六十代や七十代で終活するには少し早すぎる。そうかといって旅行、趣味、グルメ、お出かけなど遊ぶことばっかりなのももったいない。もっと仕事でもボランティアでもやるべきことがいっぱいあるだろう。というのが私の思いだった。これだけ高齢化と人口減少がすすむ日本で高齢者が旅行と散歩とサプリメントだけにうつつを抜かしていいのか、そうせざるを得ない社会に義憤を感じていた。
     ━自署を語る から ━


この著者のベストセラーである『女性の品格』は読んでいないが、人間生まれた限りは生病老死はついてまわるとしても、精一杯生きよ、という風に私は読んだ。
悲観的になりがちな老年期を自分の心の持ちようと行いで社会のために生きよと。
私は希死念慮があって、毎日死を思っているけれど、それこそ足腰が丈夫で自由に生きられるなら何か他人様の役に立ちたいという儚い夢もある。
そういう意味でこの本は何気にバイブルのように思った。
正に次の誕生日には70歳になる。
死に病でないだけに、できるだけ上機嫌にふるまうのが自分のためなのだろうと思ったことだ。



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