読書記録

2020年02月27日(木) 終の盟約 / 楡 周平




 ある晩、内科医の輝彦は、妻・慶子の絶叫で跳ね起きた。父の久が慶子の入浴を覗いていたというのだ。父の部屋へ行くと、妻に似た裸婦と男女の性交が描かれたカンバスで埋め尽くされていた。久が認知症だと確信した輝彦は、久が残した事前指示書「認知症になったら専門の病院に入院させる。延命治療の類も一切拒否する」に従い、父の旧友が経営する病院に入院させることにした。弁護士をしている弟の真也にも、事前指示書の存在を伝えた。父の長い介護生活を覚悟した輝彦だったが、ほどなくして久は突然死する。死因は心不全。しかし、あまりに急な父の死に、疑惑を抱く者もいて輝彦は父の友人でもある馬淵医師を訪ねる。
結果から言うと、医師同士の盟約はあった。

輝彦は弟の真也には本当のことを告げなかったが、真也の妻・明恵と看護師の友人は疑惑を捨てきれなかった。
明恵は義姉を、友人の看護師は明恵をそれぞれが自分より恵まれているという嫉妬も交えての疑問だった。
それにしても、明恵という女性、義父の介護を何ひとつせずに7千万円という遺産まで相続したのに、まだ義姉を羨むか。。。

まぁ・・・それはいい。
私のこれからの人生、最大のテーマは安楽死。
何とかして安楽死させてほしい。
認知症はもちろん、自分のことが出来なくなった時点で速やかに安楽死したい。
人権派弁護士である真也が言うように、医者同士による特権でひそやかな安楽死があるとしたら、それは不公平である。
貧しいものこそ、医療や介護にまつわる費用で家庭崩壊している例がいくらでもある。
私も自分が認知症だと診断されたら、何とかして自死するつもりでいるのだが。。。






2020年02月23日(日) バルス / 楡 周平

 界最大ネット通販会社《スロット》は、極限に達した物流システムに支えられていた。生命線の宅配便トラックがテロの標的になった時、日本中が機能不全に陥る。格差社会への不満を抱えた「バルス」と名乗る人物による犯行声明がマスコミに届き、次の犯行予告が伝えられた。宅配会社は荷物の受け付けを中止すると、それに伴いネット通販会社の出荷も停止、あらゆる産業で事業が滞りはじめた。バルスは予想外の要求を突きつけた。
それは『派遣法と労働契約法の再改正』だった。


 社会保障が何もない時給いくらの派遣社員という非正規雇用者の実態や巨大ネット通販の舞台裏。「送料無料」システムを支えるのは安い労働力。
非正規雇用が拡大すればこの国そのものの存続が危ういのに、政治家や富裕層はなにもしてくれないし、国民も足元に火がつかない限りは見て見ぬふりの、すぐに忘れてしまう。

犯人は井坂敏、スロットに派遣社員として働いていた大学中退の23歳の男。


「日々に変化というものは小さなものだ。大抵の人間は、今日の暮らしは、明日も続くと考えている。でも、それは間違いなんだ。小さな変化も積み重なれば、気がついた時には大きな変化になっている。その時に慌てても遅いんだ。富める者はますます富み、貧しいものはますます貧しくなる。そんな世の中になったら、社会は崩壊してしまうよ。」

以下、参考・・・

バルスとは、スタジオジブリ制作の長編アニメーション映画「天空の城ラピュタ」に登場する、天空に浮かぶ古代国家・ラピュタの崩壊を引き起こす呪文です。

ラピュタの言葉で「閉じよ」という意味があり、ラピュタ王家の末裔であるヒロイン・シータの一族の間で「勇気の出るおまじない」と対をなす「滅びの言葉」としてひそかに伝承されてきた。



2020年02月08日(土) 人間の往生 / 大井 玄


 終末期医療に取り組み続ける医師が、在宅看取りの実際と脳科学の知見、哲学的考察を通して、人間として迎えるべき往生の意義を語る。

 宗教というものから遠いところにいる現代の日本人にとって、死に臨んでの宗教的解釈はあまり意味がないと思うし、詩や歌の引用もしらけるというか、私としてはいかにうまく往生できるか、それしかない。

 いまは認知症が大きな問題で、著者の言う「意味の世界」を超えた症状は、人間の尊厳を失っている現実をもっと取り上げてほしかった。

結局、人生の週末・死にいたる段階は、実態を知らないことが、恐怖心を煽るもっとも大きな原因であるようです。
そうなのだ・・・どんな苦しみ・痛みが待っているのか、何処へ行くのか、それにつきるように思う。

 昔のように家で家族に看取られて自然に往生できたらいいが、それもしばらく日にちがかかる。
その間の世話は誰がするのか?
家族との関係が良好だとしても、私の場合それもストレスになる。

著者は触れていないが、尊厳死や安楽死を語ってほしかった。




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