読書記録

2019年03月30日(土) 国士 / 楡 周平


女性はほとんど登場しない企業小説というのか、 池井戸潤作品に似たプロ経営者と泥臭経営者との物語。

カレー専門店「イカリ屋」を日本一のチェーンに押し上げた創業者篠原は海外進出するにあたって数々の実績があるプロ経営者相葉に託す。フランチャイズビジネスの闇をテーマとした作品で、今やこういう暗部はすっかり我々にとって珍しくもないほど周知されるものとなってしまった気がする。
というのも似たような現実の話がそこかしこで聞かれるから。

創業者側と合理主義者側との登場人物が私には理解しがたく、何気に読みづらかったが途中から一気読み。
ラストの大逆転の痛快さは小説ならではだが現実はこううまくいくはずはないだろう。


国士

国家のために身命をなげうって尽くす人物。憂国の士。

かつての日本の経営者には、会社の繁栄は国が栄えるということだ。
それは、国民の暮らしが豊かになることにつながる。会社の社会的使命というものを十分理解している人がいたものです。







2019年03月21日(木) きのう、きょう、あした。 / つばた 英子  つばたしゅういち


ひとりになり、時が止まってしまった英子さん。時を動かしたのは「食は命」の哲学と、しゅういちさんの「何でも自分で」の言葉でした。89歳の英子さんが、手間ひまを惜しまない、日々のていねいな暮らしぶりを綴られている。

ある意味、理想というか憧れの日常がそこにはある。
私も戒めなければ・・・「何でも自分で」 そして 「いつまでも自分で」。



「あとみよそわか」
これは幸田露伴が娘の文に、鍛錬と呼べるほどの厳しさで掃除を指導したときに、よくくちにしていた言葉。「あとみよ」は『跡をみて、もう一度み確認』、「そわか」は『成就』を意味する梵語とか。よくできたと思っても、そこでもう一度自分のした結果を確認することの大切さを表していると、しゅういちさん。「私たちの暮らしの呪文,呟いていては楽しんでいます呟いてよ」



2019年03月15日(金) 秋風秋雨人を愁殺す ─秋瑾女士伝    / 武田 泰淳

 清朝末期の混乱極まった政治状況のもと、疾風のように駆け抜けた美貌の若き女性革命家秋瑾(しゅうきん、1875‐1907)の評伝。
革命のためにのみ己れのあることを信じて日本に留学、東京で孫文の中国革命同盟会に参加。帰国後、苛烈な革命運動に身を投じ、辛亥革命前夜、浙江省紹興で武装蜂起するも、志果たせず清軍に斬首された。
魯迅との関連、さまざまな革命家との確執のなか、日本刀を鍾愛した烈女秋瑾の思想と人間像を浮き彫りにする。以後の革命運動の精神的支柱となった秋瑾の鮮烈な生涯を多彩に描いた評伝の作。



私には難しい。
ゆっくり読むとしても大まかな内容を筑摩書房のホームページから引用。





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2019年03月09日(土) 家族の言い訳 / 森 浩美


 家族がテーマの短編集。

〇ホタルの熱
亭主に蒸発されて、よく熱を出す息子を連れて死に場所を探すため旅に出た。
辿り着いた海辺の民宿の女将さんに救われた。

〇乾いた声でも
仕事一筋の夫との距離を感じ始めたころ、その夫が会社で急死した。
若い秘書と関係があると感じていたけれど、夫の友人の言葉に後悔するのだった。

〇星空への寄り道
会社の整理を終えて帰宅するはずが、タクシー運転手の言葉で昔、家族と行った星空の美しい高原のホテルまで足を延ばした。

〇カレーの匂い
雑誌の副編集長をしている主人公は、取材先でかつての後輩に会った。
二人目の子供を妊娠しているという彼女は幸せそうで、今日は夫が早く帰ってくるのでカレーを作るのだと言った。
その彼女の夫から「きょうは急用ができて会えない」とメールがきた。

〇柿の代わり
私立高校の教員である吉村は若い妻との関係に悩んでいた。
受け持つクラスの女子生徒が万引きしたという連絡があって警察に行ったら、その女子生徒は昔、吉村が子供の頃によく近所の柿を盗んだような感覚で万引きしていたのだった。


〇おかあちゃんの口紅
身を構わない母がガンになった。
病院で医師からそう告げられて動揺したが、その母は子供の頃に授業参観で塗ってきてほしいと送った口紅をいまだに大事に持っていたのだった。

〇イブのクレヨン
母に捨てられたと思っていたから、なついてくれる妻の連れ子を可愛がった。
イブのホームパーティーに妻が母を招待した。
その母は失くしたと思っていたクレヨンを息子の代わりだと大事に持っていた。

〇粉雪のキャッチボール
高原のホテルの支配人をしていた父が65歳を機に退職するという。
最後の父の勤務を見るためホテルに宿泊した息子は、若い者から慕われている父の姿をみた。

著者は作詞家でかなりのミリオンセラーを生み出している。

薄情で軽薄な世の中になったとはいえ、家族との絆は深く重く、そして厄介で面倒な代物である。希望やあきらめ、下ろすに下ろせない荷物を背負うが如く、誰しもが日々の中で共生している。淡々とした悲しみや切なさ、ささやかな幸せの確認。あえて言えば、コドモには分からない部分。そんな場面を切り取ってみたかった。

良かった、面白いというより心に沁みる物語。





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