読書記録

2016年03月29日(火) 桜の下で待っている         彩瀬 まる


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生まれ育った土地ではない宇都宮で、一人暮らしをする祖母を大学生の智也が訪ねる。
38歳で一回り上の夫を亡くし、えび茶色の素っ気ない上着と色の褪せたジーンズばかり穿いていた祖母が再婚をして住み着いたのが宇都宮だったのだ。
「日本中のどこに引っ越しても遊びに行くから。ばあちゃんの居るとこが俺の実家みたいなもんだし」
庭に伝うように咲いていたモッコウバラと同じ柄のワンピースは祖母には良く似合っていた。


△らたち香る
婚約者の実家を訪れた律子。
放射能について予習をしてきたが、婚約者の実家は放射能のことは気にかけつつも普通に暮らしていた。
着いた日の夜にかすかに香っていたのは、婚約者の家の庭に咲いていた鋭い棘があるからたちの花だった。
行きも帰りも郡山駅にある『モニタリングポスト』に心が揺れた。


菜の花の家
母の七回忌法要で仙台の実家へ向かった武文。
急なぎっくり腰で住職の到着が遅れるので、3歳の姪を連れてアンパンマンミュージアムへ行き、
伊達政宗公の墓所である瑞鳳殿も訪ねて偶然中学のときの同級生に会った。
今までは母の身勝手さばかりを思い出していたが、伴侶を亡くしてからの母のさみしさに気づく。
そして生前の母が愛でた庭は義姉が菜の花畑に変わっていた。


ぅ魯モクレンが砕けるとき
下級生を交通事故で亡くしたばかりの小学生の知里。
叔母の結婚式がある花巻に行く新幹線の中で車内販売の女性に声をかけられ、鉄の塊である新幹線は事故を起こすのかと聞くのだった。
一泊した母の実家で、夜目が覚めてみたら祖母が庭でハクモクレンを愛でていた。
「ハクモクレンは咲いでる期間が一年に三日か四日ぐらいしかなくて、すぐに花びらを落どして枯れちゃうんだ。最後を見でいてやろうと思ってさ」


桜の下で待っている
この章の主人公は新幹線で車内販売をしている〈さくら〉。
「ハクモクレンが砕けるとき」の章で小学生の知里に声をかけた車内販売の女性。
さくらの両親は、さくらが成人して間もなく離婚した。
母親は既に新しい家庭を持ち、父親とは10年近く接点がない。
ある日、5歳 年の離れた弟の〈柊二〉が結婚の報告に訪ねてきた。
しかし、めでたい話なのに何故か弟は少し苦しげだった。
「家庭って、そんなにいいもんだっけ・・・」
〈ふるさと〉を持たない、さくらと弟がみつけたものは、
自分自身が家族を持ち〈ふるさと〉になる、という想いだった。
自分がどこかに帰るより、居心地よくするから誰かに帰ってきてほしいな。
遠くから新幹線で来てほしいと思うのだった。



 桜前線が日本列島を北上する4月の、 盛岡行きの東北新幹線に乗って北へ向かう人たちの短編集。

私も自分の両親とは本音を言えば確執があった。
だが結婚して自分も親という立場に立った時、じわじわと親の、特に母の鬱屈した気持ちが理解できるようになってきた。
そして母が亡くなって初めて、わたしにはもう帰るところはないのだ、ふるさとは無くなってしまったのだと、肌で感じたことを覚えている。

















2016年03月19日(土) 与楽の飯           澤田 瞳子

副題 「東大寺造仏所炊屋私記」とある通り、
奈良時代、聖武天皇が命じた東大寺大仏造営事業に役夫として徴用されてきた仕丁たちの食事所での物話。

主人公は近江国高島郡角野郷から選ばれて召集されてきた21歳の真楯と、ちょっと謎な造仏所炊屋の炊男(かしきおとこ)である宮麻呂が中心で話しは進む。

きつい作業をしながら楽しみなのが飯場でとる食事。
真楯たちの働く作業場の炊屋の炊男である宮麻呂は料理の腕がよく、 すっかり評判になっている。

大仏、毘盧遮那仏の鋳造が当時いかに大変な大事業であったかと、 今更ながら痛感する。
そして主人公も次第に仏とは何かに気付いて行く。


仏はいると同時におらず、おらぬと同時にいずこにも存在する。




以前読んだ

『天平大仏記』          澤田 ふじ子
『国銅』             帚木 蓬生

と 似通った物語で、やっぱり私はこういう物語が大好きなのだと、改めて認識したけれど、現代に伝わるあの偉大なる廬舎那仏はただ静かに座するのみ。



















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