読書記録

2009年03月22日(日) 青い棘              栂 須美子


 主人公の沢は国籍のないセミョンと日本人の乃との間に産まれた。
戦前の社会で混血というハンデの多い人生のなかで必ず心の支えを必要とするときがあるだろう、という修道女の熱意ある説得によって母の乃が沢の受洗を承知させた。
乞食のようなセミョンに何か安らぎのようなものを認めた沢だったが、沢の何気ない作文と言葉がセミョンと乃を追い詰めていく。
ゆえに父を殺したという思いと、母に愛されない心の空洞が沢を修道院行きと5年後の還俗へと繋がる。
物語の最後のほうで、結果的には夫との間に隙間を感じ始めたとき子宮も失って望んでも子供を持てない状況になった。
そんな中でセミュンの死後に代母ヨハンナのもとで暮らし、その最後を看取った笙一郎との再会は沢の心に沁み入った。
聖体した身は離婚できないけれど人はあらゆるものを内包しつつ、一見淡々と平凡に、日常をこなし続けるのだ。


人生似幻花
不楽復何如
(一期一会、チャンスは今しかない、たのしまずしてまたいかに?)




本を読みながらタイトルの『青い棘』の意味をずっと考えていた。
若い頃の社会や家族への鬱屈した思いが青いのか、寄る年波にはその青が抜けるのかそれとも濃くなっていくのか・・。
これから折あるごとに私はきっとそのことを思うのだろう。






















2009年03月09日(月) 遮断              古処 誠二


 死の二週間前に届いた差出人のない手紙は、この作者お得意の終戦間際を鮮明に甦らせてくれた。舞台は沖縄・・。

その短い手紙の文面の間に 19歳の主人公佐敷真市の重い数日が少々前後して進められている。
真市は同じ防衛召集された清武の妻であるチヨと生存の望みがない赤ん坊を助けるため、戦場を北上していた。??
生きているはずがないと分かっていた。それでも、捜さずにはいられなかった。脱走した自分を悔いたためか、清武を撃ってしまったためか・・。

死してなお子供を守ろうとする母親のそばで真市は、感覚と感情を遮断しようと強くまぶたを閉じた。


沖縄戦の記憶は人それぞれである。
ただし強いという一言で共通していた。














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