読書記録

2000年12月19日(火) 泥流地帯        三浦 綾子


 泥流地帯と続泥流地帯の2部構成


明治30年代の初めであろうか、上富良野の日進の沢に福島県から入植した石村市三郎を祖父とするその家族たちがこの小説の中心的な人物である。
その家族構成は、孔子、釈迦、キリストのことにも精通していて、孫たちによく語って聞かせる市三郎とキワを祖父母とし、父の義平は4年前に冬山造材で木の下敷きになって32歳の若さで死に、未亡人になった母の佐枝は今は札幌に出て髪結になるために働いている。

遠く、ふるさとの福島を離れて、はるばると北海道までやって来た祖父たちが得たものは何だったか。苦しい開拓の仕事と、貧困だった。その挙句が、息子の夭折であり、つづいて嫁の佐枝との別離だった。幼い孫たちを抱えて、祖父たちは更に農に励んだ。一番上の孫が嫁に行き、拓一と耕作が、何とか一人前になり、末の孫が十五になって、いくらか生活にゆとりらしいものができようとした頃、一挙に、何もかも十勝岳の噴火で押し流された。きめこまかく耕してきた畠も、地獄のような石河原になってしまった。更にこれから、拓一が辿ろうとしているのは、あの流木の散乱する、硫黄と硫酸に荒れた泥田だ。なぜ、こんな苦しみを孫子の代まで負っていかなければならないのか。


<神より福祉(さいはい)を受くるなれば
 災禍(わざはい)をも亦受けざるを得んや>
                  ヨブ記


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