『庭の話』

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毒草を食べた

「毒草を食べてみた」(植松黎 文春新書)
出版自体は少し以前の本なんですけど、中々楽しめる内容なのでボロボロになるまで
読んでます。活字中毒なので、何処に行くにも本がないと待ち時間が辛いんです。

タイトルだけ見ると著者が片端から毒草を食べまくっているみたいですが(実際私も
そう考えて張り切って買いに走ったのですが)実際 食しているのは一部、明らかな
毒草となると更に少なく(考えてみると当たり前ですが)ドラッグとして国外で辛うじて
試して見る事が可能な物とか、そんな感じです。煮ても焼いても食べてはならない
猛毒系は「食べてみちゃった」人達の事例が引用されています。
自給自足のアウトドアや山菜採りが趣味の人には もっと実用的なハンドブックが沢山
あるのでしょうけれど、この本は「どの植物が毒を持っているのか」ではなく
「植物も毒を持っているのだ」と言う とても基本的なことを教えてくれます。
「何でもかんでも食べてはいけない」動物学者の今泉忠明氏が、やはり毒を持つ動物を
扱った本のスベスベマンジュウガニの項で書いておられますが(小さくて可愛い
蟹ですがテトロドトキシンを身体に持っていて、食べると死ぬ事があります。
挟まれるだけなら大丈夫ですが)植物も全く同じ事が言えます。
動物は、それでも色がケバケバしかったり、威嚇行動を見せたりしますが、植物は
静かに佇んでいるだけです。
そして食べられる物とそうでない物が、とても良く似ていたりする事もままあります。
植物を怖がるためにではなく、物言わぬ彼らをより身近に感じるために、お勧めの一冊です。

我が家の庭が、1つだった花壇を3つに増やしたのが3年前。造園屋さんにレンガで
囲い土を入れて貰いました。腕は太いがそれでも女、私一人じゃちょっと荷の重い
仕事だったからです。
その年、見た事のない植物が沢山芽を出しました。それは大きくなり、実を付けました。
たまたまMixなんとかと言う、色々な種が混じっている物を撒いていた為 その中に
入っていた物かと初めは考えました。
黒紫の丸々つやつやとした実が地味な花が咲いた後、大量に付きました。ナス科の
植物である事はボンヤリと思いましたが、ブルーベリーみたいな実でもあり
「甘そうだ」と 何となく、なんとな〜くですが 考えました。
或る日、一つ摘んで食べて見ました。うっすらと甘い味がしました。・・・がっ!
「これは・・・やばいっ」言葉は悪いですが、まさにそんな感じ。本能による警戒警報。
ここでやっと、その植物が何であるのか調べる気になったのです。
植物の正体はイヌホウズキ。実に毒があります。バカナスとも言うそうですね。
バカのナスって事なの??
一粒でどうなるほど強烈な毒では無いようですが 毒は毒。某掲示板で「甘かった」
事を報告したら勇気を褒められちゃった。やっぱりバカのナスなのかしら。
花壇に入れた土に大量に種が混入していた様子です。これは凄まじく繁殖力が強い
植物でもあり、油断していると庭中がイヌホウズキだらけになってしまうので
慌てて抜きました。

でも黒紫の実はおいしそうでした。イヌホウズキが悪いと言うより植松氏や今泉氏
が言うように「何でも食うな」と言う事なんでしょう。
でもイチイ(オンコの木)の赤い実をおやつ代わりに もいでは食べてた世代としては。
イチイは種に猛毒が。でも赤い実は無毒なんだそうです。






F1品種の子供達

F1と言っても自動車レースの方じゃないです。
F1のFはFilial(〜世代の)と言う意味でF1で一代目の種を指すらしいですね。
お花でもF1って頭に付く品種が盛んに売られています。これはバイオテクノロジーに
よって作り出された品種です。良いところと良いところの組み合わせ、大きな花が
色鮮やかに、花期長く咲くように。種は出来ないものもあり、出来ても親と同じ花は
咲かせない、一代限りの花々です。どちらかと言うと花より実のなる野菜とか果物に
この技術は重要な物である様です。でも花でも良く見かけます、パンジーとか珍しい
花色の物は大抵頭にこれが付いてます、F1。

F1品種の中には本当に種を付けない物があります。種が付かないようにしてある
んだそうです。それでも付ける物もあります。親と同じ姿には咲かない、そして
親より魅力的な花を咲かせる事も無いと言われる、F1品種の子供達です。

パンジーやビオラのF1にも種が付かない処理が施してあるのかも知れないけれど
稀に殖えてます。親と花色が似ていてもずっと優れず、花数も少なく、へろへろ
しています。そうでなければ親と全く違う花色が出て来ます。
新種が花屋さんに出回ると、取り敢えず少量植え付けてみますが、翌年必ず「訳の判らない」
パンジーやビオラが出て来ます。そして油断していると更に翌年、独自路線を行く
大きくなった彼らが居ます。しかも殖えてます。色は次第に昔からある紫に近い
色味となり、株も大きく花数も大量です。余り放って置くと増え過ぎて、これは
これで大変な事に。
オレンジのパンジーが毎年咲き続ける事は、うちの場合では有りませんでした。
僅かな株ですが親に似た色のオレンジが出るのは翌年までで、それ以降は
ほとんどが紫色になってしまいます。

それでも薄い紫、黒に近い紫、ブロッチのある奴ない奴、結構バラエティに富んで
面白いです。春一番、雪が溶け切らない頃に、気温の上がり易い砂利の上で彼らは
悠々と咲いています。
先祖帰った彼らは本来の逞しさを取り戻し、そろそろ自分達と同じ姿の子供が咲く
種を撒き散らす準備をしながら、生垣の下から外に向けて大株となって咲きます。
通りかかった人が 春早い割に堂々と根付いている姿を珍しがってくれます。

薄青く、可愛い班のあるビオラがシャクナゲの木に絡まるように咲いています。
株も華奢で、抜いて植え替えるとそれだけで茎も傷んでしまいそうです。
「お前は誰の子供だったっけ??」
代を重ねて行くごとに、変わった色味では無くなって行くかも知れないけれど
日向にも日陰にもそれなりに咲く、我が家らしいビオラやパンジーの姿へと変わって
行きます。通り道に上を向いて尻尾を振る子犬のように咲く花を見て「可愛い!」
と言ってくれる人もいて、上品さや豪華さはないけれど
「あながち親に負けてもいないぞ」などと考えて見たりもするのです。


庭のお客様・・・・・・人外編

庭に出ていると、人以外の生き物に会う事の方が圧倒的に多いです。
うちの庭の場合5割がです。(残りは野鳥とその他)だからそれが苦手な方々には
庭は中々にしんどい場所と言えるかも知れません。
お花が好きな親戚の人も、いざ庭を歩くとなるとどことなくビクビクしています。
こちらへどうぞと、モミジの木の下へ誘うと首をぶんぶん横に振られちゃいました。
しだれモミジの枝が長く伸びた そこは言わば閉鎖空間。しゃがみ込んで周囲を見回すと
あれこんな所にこんな花が・・・と言う発見が季節ごとに出来る うんと小さな隠れ家
みたいな所ですが、季節ごとに違う虫と鉢合わせした時に、確かに逃げ遅れる危険性が
大な場所でもあります。
もっとも、今の所は6月頭に必ず一度、スズメバチの仲間らしい物が巣となる場所
でも探してか現れる以外は、カメムシとかコガネムシばかり、ミツバチやアブの仲間も
自分の仕事に熱心でこちらを気にしている様子はありません。

それでも時たま「???」と思う生き物に出会う事があります。
まずはアマガエル、はじめにこの蛙を庭で見た時は周辺はまだ 空き地でした。
年に二度ほど 空き地に草刈りが入ると、短い間ですがバニラの匂いがそこら中に
立ち込め、これは大変気に入っていました。
雨が降ると空き地には水溜りも出来ていたので、蛙が出て来るのも別に不思議な
事とは思えません。小さなのが2匹、庭にいました。
それから2年、辺りに空き地はなくなりました。大きなショッピングセンターが
近所に建つと土地も売れららしく、1年ちょっと建築ラッシュになっていました。
そんな或る日、小さな熊手で土を掻いていると何かが飛び上がりました。
「ぎえっ」と、さすがに私も声を上げたと思います。
アマガエルです。しかも結構 巨大、何年ものでしょうか。でもって一体どこから
やって来たのでしょう。周囲に空き地はありません。少し離れた所に川はあるけど
そこから道路を渡ってやって来たんでしょうか。
巨大アマガエルは前脚に怪我をしていました。私の熊手が当たった様です。
仕方がないので、ギボウシの陰に隠しました。
それからはカエル登場→葉陰に隠すの繰り返し。彼は秋まで庭にいました。
翌年からは見かけていません。今思えば、どこかへ逃がしてやるべきだったのかも。
可哀想な事をしたかなと思う反面、今年あたりさらに大きくなって登場と言う事も
有り得ないとも言い切れないような。

もう一つはカマキリです。カマキリはしばしば花にとって困った虫を食べてくれるので
庭で放し飼いしてみたい虫なんですが札幌は彼らの生きて行ける北限を越えている
そうです。
函館くらいまでなら何とかオーケーと言う話を聞いた事があるんですが・・・
そのカマキリの小さな赤ちゃんが庭で見付かりました。誰が産んだどの卵から孵った
物かは全く不明。数は一匹。白い、体長2cmあるかないかの姿です。でもちゃんと
カマキリの格好をしています。
季節は晩秋、謎のカマキリ君はそっと発見された花壇へと戻されました。
春と間違えて一匹だけ孵ったのか、それとも春を越えられない事を知って孵った物
なのか、とにかく今度はもう少し、暖かい所に生まれておいでよ。

ゴカイの仲間とかワラジムシとか巨大ミミズとか他にも正体不明の物が土の中にはいますが、
言って見れば彼らは常連。
お客様と感じたのはカエルとカマキリ、このくらいです。


恐怖の天幕毛虫

大量に撒いたワスレナグサが翌年春に咲かず、更にその翌年に一斉に咲きました。
咲かなかった年には2株ほど買って植えてもいたのでそのタネなのかも知れないし
はっきりした事は判らないんですが、その年はとにかく見事に咲いたのです。
我が家の庭は草花ばかりをいじる低血圧庭師の他に、以前住んで居た家から持っ
て来たもう、かなり大きくなった木達と芝のお世話をしてくれる専門の庭屋さんが
来てくれます。
樹木の消毒と剪定、冬囲いも専門の方の仕事です。
ワスレナグサが咲いた時、丁度庭屋さんが樹木の消毒に来ていました。
「姉ちゃん(私は家主では無いので年齢に関係無くこう呼ばれてます)随分また
見事に咲かせたねえ」顔見知りの庭屋さんのおじさんが、塀の上に乗っかって休み
がてら褒めてくれました。
夕暮れになるとワスレナグサの青い色が何とも綺麗なのです。庭が光っているように
見える事がありました。
「ありがとう」相変わらず、どちらが職人さんか良く判らない格好で 私も庭に居ます。
「それで・・・どわあああっ」突然おじさんが身を仰け反らせました。塀から落ちるかと
私も慌てます。
「な、な、な、何だこりゃ!きんもち悪りぃ!!」おじさんが指差す方を見てみると
そこには何百匹と言う毛虫の行列が・・・・・・。
ボケの枝が太くなって動いている様に見えます。彼らは今、卵から孵ったのです。
「こりゃ手に負えん。ねえさんを呼んで来ないと・・・」
おじさん、職人さんだけど毛虫は苦手なのね・・・。ここで言う「ねえさん」は
ベテランのお庭屋さんのおねえさんです。植物の知識にも詳しく、虫にも詳しい
素人庭師憧れの、お庭のプロ。
前庭に居た「ねえさん」登場。「あ〜こりゃ、ウメケムシだわ。これ、ここから
孵ったんだよ」ねえさんはボケの枝に残る目の細かいクモの巣のような物を指しました。
「ビニール袋持って来て」

枝を落とすと、枝に着いた数十匹の毛虫が下に落ちます。ひいい〜
枝をビニール袋に入れ、消毒。ボケの周りも消毒。
「これ、一日待ってから捨ててね」 おねえさんから受け取ったビニール袋の
中身は・・・ひ、ひいいいい〜っ

大量発生した虫の正体はウメケムシ、別名天幕毛虫。ウメの木に良く付くので
この名があるらしいですが、桜にもボケにもバラにも付きます。
これはオビカレハと言う蛾の幼虫です。このオビカレハは中型の蛾で、何となく
地味な色合いでちょっと毛深くて、いかにも「蛾だな〜」と言う感じのする奴です。
この卵は細い糸で作ったテントのような物に包まれて冬を越します。
天幕毛虫の名はここから来ています。殺虫剤などに大変弱い毛虫で、毛はありますが
毒は無く、すさまじく気色悪い孵りかたをする以外は見た目ほどの悪さはしません。
ドクガやイラガに比べると、極端な話 ぷちぷち潰しまくっても問題無い奴らです。
でもやっぱり気色悪いですね、大量にいると。一匹一匹はニャッ○みたいな顔を
してなくも無いんですけどね。
「ああああ気持ち悪かった」って、おじさんも帰る前につくづく言ってたもん。
もうワスレナグサどころじゃありません。
こいつらがワンサと溜まっている状況だけは嫌だという人は、テントを見付けて
みるといいと思います。そして早めに駆除ですね。

枝から落ちた毛虫もその後一匹も見かけませんでした。どうやら全滅。
薬には本当に弱いみたいです。他の一部毛虫も見習って欲しいくらい。


庭のお客様

ガーデニンググッズと言うのがあります。
その中でも何と言うかソフト方面、カエルの顔の付いた長靴とか、沢山ポケットの
付いたジーンズ素材のエプロンとか。欲しいなあ〜、高価いけど。
でも庭に出ている時の私の格好は全然そんなじゃありません。履き潰した長靴に
着潰したジャンパー、ナイロン素材のだぶだぶのズボンに ほうっかむりをしてマスクを
しています。それで、いつも庭の中 ウ○コ座りで座っています。
本職の方の作業着(実際は本職の方は ずっと良い物を着ている)と良く間違われます。
はす向かいのおばさんに、「そっち終ったらこっち草むしってくれない?」と言われた
事もあります。「はい」と返事をしたら声で気が付いたらしく、仰天されてしまいました。
我が家の庭は通りより少し高い位置にあるので、道行く人の目の高さに庭土があります。
散歩がてら通りかかる人が草花の話をしているのが聞こえると、緊張して私は思わず
木の陰に隠れます。ですがそう言う中途半端な事をすると大抵は見付かって、双方が
「うわあっ」と言う事になります。
「庭姑」(にわじゅうと)なんて言葉もありますが、実際は庭を見に来る方々は
好奇心豊かな気持ちの良い人ばかりです。緊張は私が勝手にしている物で、やはり
「この花、あそこのお店にあったわねえ。何て言う名前だっけ?」と言う声が聞こえると
教えてあげよう!と思いながらも身体は木の陰にこっそり隠れてしまうのです。
そして結局見付かって「うわああっ」となって「済みません。この花・・・」
「ええと、この花はですね・・・」となるのですが。
「ど、どうぞ宜しかったら見て行かれませんか?」と汗を流しながら言う事もあります。
一度「おうちの人に聞かなくてもいいの?」と聞かれた事もありました。やっぱり
「うちの人」ではないと思われているのね。

そんなこんなである日、どうした加減か海外からのお客様をお庭にご招待する
事になりました。ご近所に住むその方は ご主人がニュージーランド出身の方で、
その時は 妹さんが遊びに来ていたらしいのですが、彼女が庭に興味があるのだと
説明を受けました。
「ど、ど、ど、どうぞ、中へ」
通訳してくれるのは日本人の奥さんで、私は英語はさっぱりです。
母国へ帰ると「庭が待っている」と言う その妹さんは、地中海のハーブとやはり
イングリッシュガーデンで多く見られる植物、そして日本の山野草に関心を持って
見ていた様子でした。
「ああっこんな事なら 雑草くらい、ちゃんと抜いておくべきだったっ」
後悔先に立たず。砂利の上ではこれ見よがしのホタルブクロがブロンブロン
揺れています。

「ニュージーランドの夏の暑さは厳しくて ちょっと外出して戻って来ると庭の花も
葉もちりちりになってしまっているの。手に負えないわ」
なるほど、こちらも暑い日は暑いけど、ちりちりと言う事は無いな。
別れ際、庭正面のリンゴの木にみなの目が止まりました。
「これは何の木ですか?」
「リンゴです。ええと」これは自分で言ってみようかなと、一生懸命慣れない言葉で
説明します。時折奥さんが助け舟を出してくれます。
「これは、息子が生まれた時に植えたものです。息子と一緒に木も大きくなって
たくさん実を付ける様に。我が家のファミリーツリーです」
「素晴らしいわ」と妹さん。これはちゃんと解ったので、嬉しくなりました。
「では息子さんに婚約者が出来た時には このを持って婚約者の家を訪ねるのね?」

・・・・・・・・・。
それは・・・・・・考えて見た事もありませんでした。
何となく「実がなる」ってのが縁起が良さそうだって事でリンゴにしただけなんで。
彼らはとても丁寧にお礼をして庭から離れて行きました。私の手は泥だらけでしたが
握手をして別れました。
子供の健康を願って植えた木でしたが、それ以来 自分の中でこのリンゴは少しだけ
違う意味を持って立っています。
実を持って行くのが照れくさいなら、パイにするのもいいかも知れない。
今は焼けないけど(恥)その頃までには何とかなるでしょ。
いつか、そんな日が来たら 嫌がっても持たせてやろうと思っています。

相変わらず、誰か来ると庭師は隠れてしまいますが
庭のお客様は、素敵な人ばかりです。




タカラダニな季節

それは見るからにダニであって、しかも真っ赤なのです。
だから血でも吸ったように見えます。それが庭一面に居るのです。
季節は6月、庭真っ盛り。作業に精を出す庭師がすっかりびびる様にそれは
現れるのです。彼らの名はタカラダニ。やっぱりダニでした。

タカラダニの発生期間は短く、わっと現れてわっと居なくなります。何処へ行って
しまうのか誰にも判りません・・・いや調べれば判るんだろうけど、調べてないので
判らないんです。
大事なのは タカラダニが見た目ほどには凶悪ではなくて、血も吸わないし特に人にも
植物にも悪さはしないらしいと言う事です。
彼らは何故か、そろそろ昼間は熱くなり始めたブロック塀の上にいます。もぞもぞと
大量で真っ赤な状態で動いているので発見するとぎょっとします。
カモミールの花を摘むと、中心部にびっしり居て真っ赤になっています。
彼らは花粉を食べているらしいのです。びっしりとは居ますが、やっぱり結局ダニなので
食べる分も知れているんでしょうか。コガネムシ君たちの食害に比べれば、無いような
もんだと言って良いと思います。
初めて見た時はそれでも驚きました。行きつけの、地方大手花屋さんに出かけて
「すみませ〜ん。なんか真っ赤なダニみたいなやつがいるんですけれど」
「ああ、それね〜。今年はそれ一杯居るみたいだね」
年によって大発生する事は解りましたが、何かまでは判りませんでした。
インターネットは便利です。調べたら案外直ぐに正体が解りました。そりゃあ直ぐに
調べましたさ、だって怖かったんだもん。
シオヤアブと言うアブが大量発生した時も調べました。これは大きくて毛が生えてるし
いかにも刺しそうでもあるし。でもこれも滅多に刺さないそうで、無視していれば
自分でやりたい事をしている様子です。
タカラダニも同じで、彼らの陣取っていない花を選んで摘むようにしていれば
そのうち居なくなってしまいます。
彼らは有機質の多い土壌に大発生するようです。堆肥とかたくさん撒いちゃうと
タカラダニがやって来ると言うわけですね。でも有機質が少ない土は、タカラダニ
以上の
困り物なので、これはもう共存して行くしかないです。アブラムシより小さい彼らは
わらわらとやって来て、ブロックの上で日向ぼっこをして、カモミールの花粉を食べて
本格的な夏を前に一匹もいなくなってしまいます。
来る年と来ない年があるようですが、彼らが行ってしまった後は「夏が来るんだな」
と言う思いと同時に、やっぱりどことなく一抹の寂しさを感じてしまいます。

人を噛まないらしいから、こんな呑気な事言ってられるんですけどね。


Fさんの庭

今の家に住む前に、15年暮らした家が割とご町内にある。
それほど遠くへは越さなかったのである。家主がそろそろ老齢のため、新しい環境は
馴染まないと言う理由があったのかも知れない。聞いてないけど多分そうだろう。
ずっと長い事 お隣さんだったFさんのお宅とは、引越し後も交流があった。
定年退職しているご主人は趣味の庭にいそしみつつ、たまに奥さんに自分でラーメンを
作り 振舞っていると言う、手まめな方であった。
とは言え、ちょっと気難しげに見えるこのおじさんが私は少々苦手であった。
だから15年、通りすがりに頭を下げる事くらいしか した事は無い。
親が親しくお付き合いをさせて頂いていたため、息子を連れて或る日、お邪魔する
事になった。「となりのおじさん」ことF家のご主人は、春も早い家の中に沢山の
サルビアの苗を育てていた。
庭ではコルチカムとギボウシが芽出しを終えたところだった。コルチカムはやがて
葉が枯れ、秋も半ばを過ぎて突然クロッカスみたいな花を咲かせるまで休む。
どちらかと言えば、春先の葉の方が印象深い。
ギボウシは白い斑の美しい見事な物だった。「すごいですね」思わず言った。
「これはホワイトクリスマスと言うんだよ」とF家のご主人。
ええ、そうかなあ?ちょっとホワイトクリスマスにしては葉がうねっている様な
気がするな。うちにも一株あるけれど、ちょっと違う気もするな。でもまあ、いいや。
「殖えちゃってねえ、困ってるから今度持って行ってあげる」 やった!
「ありがとうございます」
ちょっと怖かったおじさんはすっかり好々爺となっており、孫がみな大人になったと
寂しそうに言って、息子と遊び チョコレートをくれた。

それから数日後、Fさんはいきなりやって来た。新聞に包んだ大量の植物。
「ど、どうぞお入り下さい」慌てるこちらに、いやいやと手を振って行ってしまった。
大量のギボウシの苗とコルチカム、そしてジャーマンアイリスの小芋が残された。
何かお礼を と言う私に親はやんわりと「こちらの付き合い」を強調する。
世代が違う付き合い方と言うものはあるらしい。だから私は植物の世話をする事にした。

一年後、ギボウシが芽を吹き、昨年は芋のままだったジャーマンアイリスが蕾を
付けた。大急ぎで適当に植え付けたので植え替えないとと思いながらもこれは嬉しい。
明日はアイリスが咲くだろうというその日、電話が鳴った。
Fさんが亡くなったと言う報せだった、癌だった。
訪ねると残された奥さんが、孫達がお祖父ちゃんとの別れに書いた手紙を見せてくれた。
庭では比較的手間要らずのギボウシとコルチカムが何事も無かった様に場所を取っていた。
「今年も植えるつもりでサルビアを育てていたんですよ」と奥さんが言った。

それから2年、頂き物のギボウシは少し大きくなった。気のせいか斑も大きくなり
やっぱりホワイトクリスマスである様にも思える。
「だからそう言ったろう」 とFさんが笑っているような気がする。


頂き物のジャーマンアイリス。お孫さん達は大きくなった。
Fさんの花もまた殖え、季節になればこうして咲く。


おじさんおじさん、それ 違う

季節は10月、息子の幼稚園の運動会が 近所の運動公園で行なわれます。
息子が年中さんだったので一昨年の事、お昼の休憩時間に子供達が地面をしきりに
掘っています。掘っているのは小学校低学年から中学年と言った所、お兄ちゃんです。
何を熱心にと見れば、虫を拾っています。
誰かのおじいさんかな?初老の男性と子供の声が聞こえてきました。
「これクワガタの幼虫なんだよね?」
「そうだ、クワガタの幼虫だ」
見ると子供達はみんな何やら必死な形相。どこから見付けて来たのかビニール袋に
その怪しげな虫を詰め込んでいる子もいます。
「クワガタの幼虫なんだって」「クワガタ」「クワガタ」
あちこちで子供達の声が聞こえています。気のせいか土を掘る子供がどんどん増えている。
虫がこれまたよく捕れる・・・。

おじさんおじさん、それ違う。それクワガタの幼虫じゃない。
大体こんな芝生しかない運動公園に何でクワガタの幼虫がいるのよ?
そうは思ったけれど、おじさんは自信満々 言えるわけがない。
息子がそりゃあ羨ましそうな顔をして見ています。油断をするとお兄ちゃんの中に
突っ込んで行きそう。クワガタ捕りに必死のお兄ちゃん達にはこんなチビ助 邪魔に
しかならないでしょう。それほどみんな真剣。
「あの虫ならうちの庭にもいるから帰ったら見せてあげるよ」
「クワガタの幼虫?クワガタの幼虫いるの??」
・・・いや、クワガタじゃないけど。

子供達が必死になって捕っていたのはコガネムシの幼虫でした。芝生の下などに
沢山いて、根を齧る厄介な奴、大人になったらなったで葉や花を食べる厄介者です。
確かに、クワガタの幼虫に似ていなくも無いけれど大分小振りです。
それに本物はもっと何と言うか貫禄があるよ。木の下にしかいないしね。
逆に木の下であれば街路樹の下にも昔はいました。でも、今はいないのかも
知れませんね。
コガネムシも種類は一種類ではなく、結構色々な大きさ 形のものがある様です。
運動公園の物とうちのコガネムシが同じ種類かどうかは判りませんが、一種類居付いて
いれば十分なので 比べたいとも思いません。
子供達は結局かなりのコガネムシ幼虫を袋にゲットした様子。
家に帰って育てた子も、或いはいたかも知れません。クワガタって大人にも何となく
響きが魅力的ですし。でも悲鳴を上げるほど凄い物に変身する訳でも無いので
案外、育てて見るのは面白いかと思います。「なあんだ、違った」となってもコガネムシに
対する別な興味が湧く事もあるかも知れないし。

でも庭に放すと大変だけどね。


うちの庭に常駐するコガネムシ。せっかく咲いたんだから
少し遠慮して。


お得なガーデン2・・・・・・閉店セールお勧めします

庭に咲く花はきっと咲いて欲しい花であろうし、それは必ずしも安けりゃあいいのよ
なんて物ではないと思います。
でもやっぱり、リーズナブルなガーデンのお話の続きです。

中々値下げをしてくれないお花屋さんがあります。もう花の季節は終ってんじゃんと
こっちが勝手に思っていても、どっこい値段は変わらない。温室設備などを抱えて
いて、ちゃんと冬越しさせて翌年 芽を出すのを待って売りに出す花屋さんもあります。
そう言うところは2年目に売りに出された時、初めて安値が付いていたりします。
狭い鉢で一冬越していますので根が一杯一杯を通り越して瘤状になって土から見えて
いたりして何だか痛々しいですがダイコンソウ30円とあるとやっぱり買ってしまいます。
そう言う植物は案外復活までに時間がかかったりします。結局弱っているのでしょう。
咲いたら 嬉しいのですが。

やはりその年のうち売りに出された植物が欲しい、根の傷みも少ないし・・・
そう言う事であればやっぱり「閉店セール」がお勧めです。
大型ショッピングセンターに契約して季節だけ出店して来る花屋さん、それと
ホームセンター この2つは閉店安売りの宝庫だったりします。
契約出店して来る花屋さんは商品を引き揚げる余裕が無いところも多いので
「もってけドロボー」状態によくなっています。花泥棒よりお金を払ってる分
こっちがましです。欲しい物は多少よれていても逃さずゲットです。
良くウィルスなどが付いて来ると言う話も聞きますが、ウィルスは値下がりして
いない物にも付いて来ます。ナメクジなども同様です。むしろナメクジなどは
入荷して時間が経った鉢ほど食べられている筈なので解り易いかも知れません。
こちらでは出張店舗では7月に店を閉めるところもあります。幾ら北国の夏が
すずしめだとは言え、ビニール小鉢に入った植物の管理は中々大変そうです。

春早めに何点か買っておくと、お店のおばさん(もしくはおじさん)に顔を
覚えて貰え「これも、これも持ってって」 と幾鉢か押し付けられる様に持たされる
事もあるかも知れません。まるで昔の八百屋さんです。
その中から確実に越冬し、翌年も咲くものを選びます。今年の花は基本的に諦めます。
今年は駄目だった、でも来年こそはと 花の方も思っているかも知れません。
いや、思っていたんじゃないかなあと言うような咲き方をしてくれる物もあるので
楽しみに待つ価値はあると思うのです。

売れ残ったらお店の人も困る筈です。誰に遠慮がいりましょう、買わない手はありません。


黄色いのが30円ダイコンソウ。八重咲きが綺麗です。
でも どれほど綺麗に咲いても「30円だった」と、まず言われて
しまうのが痛々しいところ。



お得なガーデン・・・・・・10円ギボウシ

ギボウシは 私自身好きな植物で、沢山育てています。
でも、そろそろ手に負えない大きさに成長する物も現れて・・・僅かに残った
傷みがちな芝を剥して レンガを敷いて、夏場涼しげな落葉樹を植えて根元にびっしり
ギボウシを植えたいと言うのが私の希望なんですけど、あくまで私は我が家の庭手入れ
担当係(芝だけは別)どんな庭にするかは庭の「持ち主」が決める事なんで〜。


元々ギボウシは日本や中国に昔からあったユリ科の植物で、それがヨーロッパや
アメリカで品種改良を重ねられ、ガーデンブームに乗っかって逆輸入のようにして様々な
種類が日本に入って来ています。私の生まれた家にも大きなスジギボウシ
(ウンジュラータ)が日陰にどかんとありました。家の人はギボと呼んでましたね。
タマノカンザシと言うギボウシがあります。中国原産のこのギボウシは漢字で書くと
玉簪 その昔中国の女性がこの花を髪に挿して香りを楽しんだと言うところから来て
いる様です。確かにユリの匂いを更に品良くした様な何とも言えない良い香りがします。

近所に2年前までSと言うホームセンターがあって、そこが実にマニアックな植物の
仕入れをするんです。サフィニアに混じってイカリソウとか大文字草とかの種類が
やけに充実していたり。そして、実に売り方がいい加減。どんどん品物が入って来る
からでしょうか。値下がり幅がこれまた凄まじい。私は大好きでした。
ある時、「園芸市」と銘打って無造作にビニール鉢を重ねてあるので行って見ると
この間まで何とか茂っていたギボウシが見事に枯れています。ですが季節は秋
どうやら自然に枯れた様です。値段を見ると・・・10円
おい、これまだ生きてるぞと思いましたがこれはお買い得。けれど全部買い込むのも
人の道にもとるかと思い、2株買って様子見です。他の人は傷みかかったサフィニア
の方に行ってます。そっちこそ これからはそれほど楽しめないと思うんだけど。

数日後、再び「市」を訪ねてみると、あらかた無くなった植物の中にギボウシだけが
残っています。何で?みんなギボウシ嫌いなの?
このまま捨てられてしまうのは余りに気の毒なので 4株ほど購入しました。
〆て60円。得とか言うより、勿体無いですねえ。
さすがに何株か人に上げました。「騙されたと思って日陰に植えて見〜」って。
翌年はそこでかなり大株になったヘメロカリス・ステラデオロを100円で購入。
苗からだと3〜5年はかかる大きさ、ああ〜勿体無い。
大好きだったホームセンターSですが、やはり全てがこの有様であったためか
ついに潰れてしまいました。花屋巡りの楽しみが一つ減り、悲しいです。

10円ギボウシの正体はこのタマノカンザシ種でありました。
他のギボウシより芽出しが遅い代わりに秋も比較的遅くまで楽しめます。
花だって綺麗なんですよ(写真)。香りも良いし、値千金です。


10円ギボウシことタマノカンザシ。葉は艶のある緑色です。
花は意外と大輪、ギボウシの仲間では際立って美しいです。









難しい冬越し

北海道の冬は暖かいを通り越してむしろ暑いです。勿論、室内の事ですが。
ここ札幌辺りでも1月2月の最低気温はマイナス10何℃、バラは凍らないけど
外に出しっ放しにしておくと、気温が上がると黒くなって腐る。
バナナで釘は打てないけど 気温が上がるとやっぱり黒くなって腐る、屋外では
そんな感じです。
ですが昼間の室内となると、多分我々は薄着をしているんだろうなと思います。
ちょっと前に大流行したフリース素材、屋内では暑いんですよ こっちだと。
それだけストーブがんがん焚いていると、つまりそう言う事なのですが。

気密性の高い住宅、セントラルヒーティング。お部屋は乾燥、気温は高い。
しかも降り注ぐ陽射しの量は圧倒的に少ない。
秋の終わりまでゆったりと花壇で暮らした植物にとってこれはかなりきつい状況で
あると思われます。ひょろひょろになってしまいます。しかも虫が付き易い。
葉水など頻繁にして様子を見て居ないと、最悪カイガラムシなどグロイ系の大発生
を見て ひっくり返る事になります。(経験済み、グロイです)
人間が外から帰ってほっとする様な快適な環境は花にはやや暑過ぎ、シクラメン
なども継続して上手に咲かせるのは中々難しい事だろうなあと思います。

何とか冬を越し、へろへろになった植物を今度は庭へ降ろすのですが これがまた
厄介です。北国の春は いつまで経っても寒いのです。ゴールデンウィークを目の前に
庭師達のウキウキ度は最高潮となりますが、その頃 花屋を賑わしている色とりどり
の花々の半分くらいは、いきなり植え付けると弱るか枯れるかしてしまいます(涙)。
満開のものは 勿体無いけど花を摘んでから植え付けないと、夜の寒さが株には
大層な負担となります。日光の量もまだまだ十分とは言えません。
そんな中、室内でへろへろしていた植物を植え付けると、まず、より一層へろへろ
となり、やっと緑を保っていた葉は黄色くなり、やがて落ちてしまいます。
そうでなければ急な陽射しのびっくりしていきなり葉焼けを起こし、どちらにしろ
落ちてしまいます。「あいや〜〜っ」
坊主となった植物を前にしばし考えます。「自然の力を信じてみよう☆」自棄です。
半ばどうでもいいやと言う気分で待っていると、あら不思議、半月ほどで坊主に
葉が生え、蕾を付けます。それから秋まで 彼らは何とかマイペースで過ごすのです。

とは言え年ごとに株は大きくなりますし、冬の間の管理も大変になります。
春先にはロゼットになってべったり地面にへばり付く様に冬を越したツワモノが
余裕しゃくしゃくと言った感じで葉を伸ばしています。彼らは外気に合わせて
成長するので急に霜が降りたくらいでは全く堪えません。
やはり一部の鉢物以外は土から上げての室内越冬は厳しいなと思う今日この頃です。
土地の気候に合う「植えっ放しな奴ら」の逞しさにはやっぱり敵いません。


管理人 焙煎 |午後からガーデン