ことばとこたまてばこ
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2006年07月12日(水) 君の言葉を観たいんだ

さあさあさあさあ、ご覧あれ!
わたしのこの手のひら!

あいうえお、の指文字から始まって
何千、何万回もの言葉を紡いできた。

渾身のちからをこめて稲をつかみ、
米を食する君らへ向けて渾身の声を、とちぐはぐに願いながら。


知っているか

あそこでは何十もの手が踊り交ってきたのだ。



君の言葉が観たい、と!

おめえの言葉が観たい、と!

あなたの言葉が判りたい、と!

貴様の言葉が嫌でも知りたい、と!




親愛の情がこもったあなたの言葉、
チョット、チョット、チョットでいいんだ、


一切の声も届かぬ私らへ観せてくれ!と!



とんでもない、とんでもない、
言葉への熱情!



さあさあさあさあ、ご覧あれ!
わたしのこの手のひら!

何千、何万、何兆もの言葉をつむいだこの手のひら!


お願いだ、未だ見ぬ君よ!
どうか願わくば君の声を観せてくれ、と!


おれは、おれは、おれは、おれは。


おれは、おれは、おれは、おれは、おれは、おれは!




2006年07月04日(火) 記憶

すべての生きる者たちの手が、
ひとつの凍えた骸にさし出された。


その骸を舐めよ、
なんと存外にしょっぱく冷たいことだろう。


もはやだれも通る者のない廊下を渡り、
聖なる水を運んでこい。

そして呑ませよ。


その手を舐めよ、
なんとしょっぱく灼熱であることだろう。



まなざしはけっしてそそがぬことだ。


手で額の曲線を触れよ、
手で目の弾力を感じよ、
手で鼻の筋をなぞらえよ、
手で唇のふくらみをまさぐれ、

手で骸と化した生者の顔をよみがえらせよ!


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