ことばとこたまてばこ
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2005年04月29日(金) いびつなれども

彼は美味そうな食べ物を目の前にして
「ああ、腹がドキドキするわ〜」と言った。

音無し子の彼は道を歩いていて急に
「いま偶然音楽が聴けたわ〜」と言った。

彼は丑三つ時に朝日の手話をしながら
「夜中に太陽を昇らせてるよ!」と言った。


その思考の言葉ってなんてすてき!


2005年04月28日(木) 日本各地に落ちています、そのほほえみ

御地蔵尊、陽光ふんだんに浴びて。

御地蔵尊、枯葉に深くうずもれて。


2005年04月27日(水) 出逢って別れて

今夜の夕食は肉じゃがにハンバーグよ、と書かれた妻からのメールを読む。
最近残業が増えた。最近子供が小学校に入学した。


夜列車に揺られてたどり着いた駅で私はまわりのみんなと同じく、定規で測ったようにちくとも狂いなくまっすぐと我が家の待つ帰路に向かうけれども、その彼は大きなリュックサックを背負ってどこか困ったような定まりのない足どりで歩いている。

私は彼に声をかけた。
近くで見ると彼は予想以上よりも若かった。
蛍光灯の白くも強い光にうぶげがうっすら照らしだされる。

私がどうしてこんな辺鄙なところにいるの?との問いに彼は自ら「旅人なんだ、オレ」と答えた。私はその傲岸不遜にも近いその口の切り方が、いかにも新鮮に思えて。

皺も増えるわけだ。はは。


2005年04月26日(火) ちりがみ準備ヨーソロー

騒がしく  泣いた  夜。
静かぁに  泣いた  夜。


どちらにせよ わたしのこころは いっぱいに震えたの。
自分の血と肉と心情を感じることで 子宝を たまわる。



2005年04月25日(月) ひどい母もあったものだ

おかえりなさい…


腹の中にわだかまる糞との死闘くり広げること数時間、わたしは呻いて、嘆いて、あえいで、わなないて、ぴんぴん震えて、飛んで跳ねて、回転して、悶えて、全身突っ張らせて、やがて見事勝利の栄光つかんだわたしは意気揚々ゴキゲンるんるんらんらんうふふあはは小鳥さんコンニチハぷりっ、といったツヤツヤした気分で厠のドアを開けたらば、我が母がほとほと呆れたような諦めたような、そんな気怠い表情で上記の言葉をぼっそりと述べた。

やめておくれ!

まじ、やめておくれよ!


2005年04月24日(日) 嗜好

口を重ねる接吻よりも、
頬と頬を合わせる接頬の方が好きだナ〜。

あたしゃ。


2005年04月23日(土) 春張る

指が奏でる物語と空模様のハーモニー。

ほつれてひょうたんの花芽吹く。

まどろむほほえみはとろとろなごみ。

桜の花びらが無限に敷く淡い幻の湖。

ほんのり立った春を愛でる老夫婦。

世界は眩しく眩しく、その眼うっとり細めて。


2005年04月21日(木)

うっふん、とわたし発情しながらあなたのぽってりとした唇に海苔を貼り付けたの。

あぎゃん、おめでとう。


2005年04月20日(水) チッ 言わせるなよこんなこと

風邪で横たわるおめえ。

いつもは元気な人が横たわるということは、どうしてこんなにも不安にさせるのだろう。だからみんな普段自分では絶対買わないような林檎なんか購入して、慣れない手つきであわあわと皮をむいたりなんかするのだ。

ほぅわっちゃー、切っちまった!いだいよいだいよ。


2005年04月19日(火) おばか

のぐそ と ちんぽ
合わせて
ちぐぽ  ぐぷっふひひっ


ってわたしはいったいなにを考えておるのか。
ハゲシー自己嫌悪。ちくちくするよ。しかしそれがまた


…よいのだ。


2005年04月18日(月) 空話

「手話」という言葉は誤りだ。


わたしたちは けして手のみで 会話をしていない。
手の形 手の流れ 表情 そして空間。
それらを駆使して 会話を交わす。


どこまでも厳密に 言ってしまえば わたしたちの言葉は
「空間」から一文字を取った『空話』と言うべきなのだ。

空間とは 物質が存在し、諸現象が生起する場 という意味を有している。
インターネットが網羅する今や 文字に映像は 確固とした道具ではありえなくなった。
だが わたしたちの言葉は それを言語とするあなたにしか述べられない言葉 なのだ。
なぜなら わたしの放つ言葉の前に わたし以外の人が 存在しなければならないからだ。
わたしがどのように手を流し 表情を崩しては和らげ どのように空間を位置どっているか、
わたしの言葉を見る わたし以外の人は どのようにしても言葉を放つわたしを観ざるを得ないのだ。  

顔を動かせることなく 手のみ動かせることによって 意志が通ずると考えるならば それはジェスチャー程度の浅いものだ。
またそういった誤解を生む一因に 「手話」という言葉から来てはいないだろうか。



わたしは『空話』で 空間を 抱えて 潰して 撫でさすって 言葉を流す。
わたしは『空話』で 手にこだわることなく 全身全霊を使い 言葉を流す。


2005年04月17日(日) 聴きたもう おめえの存在を

おめえ は そこにいる。
わたし は おめえの前に いる。

おめえ が 誰であろうと わたしは 淡々と お茶を出す。
わたし が おめえに お茶を出す その行動は 真実そのもの。


それが 「聴く」と いうことだった。
「聴く」と いうことでは 「耳のみが声を感じること」 ではなかった。


わたし は 我が存在すべてを あなたに 向けるだけなのだ。
そしてまた おめえも わたしに向けて。


音無し子のわたし も 聴いている 聴いている 聴ける
そうだ おめえ の 心こそが 万古に通ずる 普遍的な 音 なのだ。








まったく 世界は完全なる 音に 満ちている!


2005年04月16日(土)

三 みっつ
四 よっつ
五 いつつ
六 むっつ
七 ななつ
八 やっつ
九 ここのつ
十 とお
とだね、たくさん たくさん 事柄を抱えて。

えっらいね〜
まじ、どえらいね〜


それはよいのだけれども
それはよいのだけれども
それはよいのだけれども


一 ひとつ
二 ふたつ
まっこと 己の核と成るは それのみ。


おめえは おめえは おめえは おめえは
覚えているのか、己の核を。
掴んでいるのか、己の核を!


2005年04月15日(金) まずは

くだいて
うめいて
なげいて

お尻をぷるぷる振りましょう


2005年04月14日(木) デザインはむつかしいね

黄色い欲望は、視姦されることによりて発散。
赤い欲望は、眺めることによりて発散。
えびょん。えびょん。えびょん。
これって、しわぶき?

アジアの果てにてあの彼は、約束を交わしたけれどもきっと、
二度と帰ってこない
君を脳裏にかすめ叫んでいるに相違ない。


君も友達になろうよ!
まぁ、あせるなって。何か手はあるはずでよ。


2005年04月13日(水) 真正童貞の知らぬということの罪は存外に重い

君という最愛の人に抱かれて

人はこれほどにも歓喜に打ち震え、わななき、極限に握りしめる両手は白く、うめき、鼓動ハルマゲドン、喘ぎ、全身の筋肉ぎゅりっと締まり、陰茎へと過剰の血圧凝縮し、ぶるぶる震え、白目を剥き、泡を吹き、痙攣することができるのか、

と、知った。


2005年04月12日(火) 逆恨みもほどほどにゃ

空へお行きなさい と皆がゆった
空へ行く資格は大丈夫あなた持っているよ と皆がゆった
あんたにゃ空を見る才能携えておるよ と皆がゆった

だから行った

どっこがやねんね!
空には乱気流吹き荒れて一定に止まることすらままならぬ!
雲の下におれば雷雨に怯えるばかりで
雲の上にいても何もなく誰もいなく時折通りすがる彼はすぐ去って
どっこがやねんね!

お行きなさい と皆がゆった場は存外楽園ではない
才能 資格 なんやねんね それは!
ばっかやーろ どどめきやーろ ぶるびきびゃーろ

私の知る最上の罵倒語 述べた瞬間の後、

だれもそこが楽園だとはゆうとらんかった
しもうた ぬかったぜ そういやたしかにそうだったぜ 

となると一面から眺めたのみでは推し量れぬほどの闇を もう一度 眺めねばならぬなあ
そう気づいた。

私は因業天使のアパートに下宿し、いつもと変わらぬ天上の夜明けを浴びた


2005年04月11日(月) よいどれ

スプレーを割り箸にビョッと吹きつけると、淫夢が我に救い難き酒を飲ませうる。


2005年04月10日(日) あの時あの時あの時あの時

あったたか〜いココアを時間かけて飲み干す。

数えきれないほどまんまるい型をくり貫いた跡が残る夜空はどこもきらきら輝いて。

情がまっすぐに花を貫く。

飛行機雲がたなびく空の下でペプシコーラを一気に飲み干す。

吊り輪の揺れるバスでこっそり、ついばむようにお前の口に。

甘いチョコには唐辛子ちょこちょこ入れて更に甘く。

わたしたちは痛烈なエメラルドグリーンと、激烈なスカイブルーのようね。

おっほほ、そろそろ心臓がぶっ壊れてしまいそうです。ああ、くるし。

雲と眼が合った。


2005年04月09日(土) 春嵐

自然はんは短命こそ美徳であるよと知ってるんでないかい?

あんまりにも春の風は突風。
つい先日息吹いたはずの桜、花びらが吹き飛ばされて。

いまもなお。いまもなお。


2005年04月08日(金) 桜と君

夜桜自身のかもしだす幽けし明かりは映え、
暗いながらも一層生々しく君と君の手の存在ありて。


散る桜の白い花びらと君の顔色は存外に等しくある。
それは疑いもなく知ってる感触。けれども確実に忘れていた感触。
けれども思い出した。
けれども思い出した。


私に聞くことは適わぬけれども
君の 笑い声、話し声、うめき声、
すべてこの花が知っていると信じて桜を見ながらまったく心地の良き狂気を味わう。


2005年04月07日(木) 家庭

横たわったままジィジィとバァバァ、お粥を咀嚼する。液体のように柔らかな米粒が唾液混じりに口端からいくつかこぼれる。ハァハァ、喜びも嫌悪も無く淡々とぬぐいとる。イモウト、それでも携帯メールの向こうにおわす友人をなんとなく最上とうろんに信じては頑と手放すこと知らず。チィチィ消えた。


駄目な場所へ転げつつある予感を痛烈に感じながらも、薄ぼんやりと暗い部屋にただ独りこもりきり、夢のような夢に想いをはせてウルルルルほくそ笑んで。


2005年04月06日(水) 表裏

ここでおめえは頭から腰まで土に埋もれていた。
にょっきり、地面から二本足と手首がのぞく。
苦く重苦しい土が口内に充満。

すると彼が桃色の自転車こいでやってきた。
足と手首を交互に眺めたのち、彼は靴と靴下を丁寧に脱いだ。
慈しみすら越える情に満ちた手つきで彼はおめえの手をそっと握りしめた。
そしておめえの足に寸分違わなく自らの足を合わせて、
長い時をかけてつりあいを保とうと曲がる膝を伸ばしていった。


じっくりと、ぎくしゃくと、おろおろと。


やがて彼はおめえの足の裏から立ち上がる。
まったくそれはもう完全に見事に!背後で透明に白い桜が吹雪く。
その瞬間から彼もまた頭から腰まで空に埋もれていた。
のっぺり、空からぶら下がる二本足と手首が見える。
乾いて空きし空気が口内に充満。

するとおめえは首を鳴らし空中より這い出た。
暗くも暖かな土の中から空を見下ろす。
空より突き出る二本足と手首。
おめえはその手に頬を寄せて何度も飽くることなく撫でさすった。
やがておめえは彼の靴下と靴を丁寧に履き、土を掘りながら去った。


じっくりと、ぎくしゃくと、おろおろと。


2005年04月05日(火) 先生

35年もの間、努めた想いが遂げた瞬間。
あのお方はとても嬉しそうにしていました。
教え子とあの頃は禁断の味であったアルコール摂取にて、
ぎゃほぎゃほ笑いうめきながら、その目尻潤う。

わたしもまたあのお方のように笑えるのかな、と、ね、
そうして想いは連鎖してゆくのだなあって柄にもなく。

ほーんと、柄にもなく!


2005年04月04日(月) あらら…

今こうしてパソコンに向かっているおれ、その机に置いてある本。
その本からさっき手が覗いていた。触ろうと動くと消えた。
見るとドリームキャッチャーがはためいていた。


2005年04月03日(日) ねこ

くるくる まるまる お猫さん。
ぴんぴんと雪白しっぽをたてて。
えめらるどぐりーんの眼が光る。
にゃわにゃわうと二度のあくび。
不機嫌な三白眼で正面見すえる。
ミャーアミャア ニャミャーア。
ぽかぽかと黄金色のお天道さま。
真剣も真剣で鋭いその眼は狩人。 
ゴロゴロ喉鳴らす音が手に響く。
くるくる まるまる お猫さん。


2005年04月02日(土) 実の事

路上一本、ただ犬が歩く。

電信柱一本、ただカラスが天仰ぐ。

身体一本、ただ人が糞を流す。


2005年04月01日(金) 膿音

ある日、おれは聴者の友人に悩みを打ち上げた。
「なあ、いま、おれ悩んでんだけれども」自分でも分かるほどにぎくしゃくとした手話で言った。
「ああ…、どうした?おれで分かることならなんでも」彼はおそらく声が伴った手話で言った。

おれは右に顔をかたむける。すると重力に引きずられて下向きになった耳から真っ黄色の膿がどぼどぼこぼれた。手で受け止めようとしても、すぐに溢れんばかりの膿が溜まる。おぞましい悪臭が漂う。掌3杯ぶんの膿が溜まった頃、おれは顔を真っ正面に戻した。

「どうしよう。この頃さ膿が止まらないんだ。臭いんだ」
彼は悪臭に瞬時顔をしかめた他に、表情らしいものを出さなかった。
「頭ん中、いや、耳の中に膿が詰まってるんだ。この汚物が。どうしよう。とても気持ちが悪いよ」
「何時から、何がきっかけで、耳から膿が出るようになったんだ」彼が言う。
「さあ。それがちくとも判らないんだよ。いつも常に出ていたようだし、ある境から急に溢れたようだし。どうしても判らないんだよ」
「じゃあお前の覚えている一番古い記憶でいい。何時からだった?」
「ああ、と、そうだね、故郷の稚内で小学校に入ったばかりの頃、そうだね、降り積もった雪をさくさく踏みしめて歩いていた時、突然どろっと。そうだ。その前日の夜はとても寒かったんだ。そしてとてもうるさかったんだよ」
「うるさい?」
「おかしいね。おれ聞こえないのに雪の一粒一粒がキュンキュン鳴っているんだよ。聞こえたんだよ。キュンキュンキュンキュンキュンキュンキュンキュンキュンキュンキュン…豪雪の一晩中、雪の数だけキュンが続いてさ。今思えばよく発狂しなかったなあ。ひひ、偉いね、おれ」
「…」
「その翌日、学校へ行くんだったか帰りだったか。はっきりしないけれど、とにかく通学路の途中雪を踏みしめていたら、ごぽっ、って膿が出てさ。白い雪に黄色い膿が映える様は実に気持ちが悪かったよう」
「おい、大丈夫か」
「あ?」
「大丈、夫か?」
「あ?あー、だいじょう、ぶ」
「いい?見て」
「だいじょーぶ。見てますよって」
「その膿、俺はたぶん音そのものだったんじゃないかと、思うよ」
「膿が音?」
「じゃないかと、思う」
「へへ、音が膿なの?はは、おっもしろーい。それもアリかもねぇ」
「黙って、おれの手を。見てくれ」
「…」
「おれは聞こえる。音を知っている。お前の言うような雪の音なんて、知らない。本当だ。知らないんだ。おれもよく判ってはいないんだけれども、なんでも雪は音を吸うらしいね。だからなのか、おれの知っている雪のある世界はどこまでも静かな世界なんだ。そしてそれが当然だと思ってい、たけれど…」
彼は手話を、そして言葉を切った。
「お前が言うことを聴いて初めて知った。雪世界にも音がある、と」
彼はしばらく強く眼を閉じていた。
「そうして逆に思ったんだよ。お前はおれの知らない音を、必要以上に聞いてきていたんじゃないかって。どれがどの音が聴くべきに耐えうる音なのか、聴かざるに済ますべき音なのか…こう言うとすれば、おれはお前よりも判別できるよ。でもお前の知っている音はお前しか知らない音なんだとすれば、そりゃ、しんどいよ」
「いや…、だって、でも」
「他の誰かと価値観を共有できる、ということのありがたさ分かってるでしょ」
「まぁ…」
「それと同じなんだよ。おれが安心できるだけの判断をすでに他の誰かが体験して語っている。ちょっと悔しくもあるけれど、まぁ、ホッとしてしまうね。安心してしまう。でも、お前は」
「おれ?」
「少なくとも、おれの知る間では無い。偉そうにとうとうと語ってきたけれど、それらもお前は既に知っていたんじゃないかな。だから、音を忌み嫌う対象として膿を出した…そう考えるのは無理あるかな?」
「分からない」
「当たり前だ。分かる、なんて言ってもらったらこっちが困る。それでいいんだと思うぜ。お前にしか聞こえない音。それってすげえ聴かせてくれ、って思うぜ」



膿は本当に悪臭を放っているかい?
と最後に彼は言いました。


わからなくなった。


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