ことばとこたまてばこ
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2005年02月28日(月) 僅かな皺

くるくると黒の幻夢に踊らされる。
ぴんとばくはつ、なつかしゅうて鶏むさぼり。
誰ぞが我に「落伍者」と捺印。
手の皺を眺める手の皺を眺める手の皺を眺める。
手の皺、減りはせず刻まれるのみ。


2005年02月27日(日) 気高く

無数の雀が群をなし、蛙の仰ぐ空を彩る。
蒼穹に黒き茶の映える様は気高く。

咲き乱れる蒲公英をかすめて流れる風。
黄金色が緩やかに揺れる様は気高く。

陽光を存分に浴びて眼を閉じる野良猫。
猫と光と風景全てが等しく同化しゆる様は気高く。


わたしはそのたびに目を細めるのだった。


2005年02月26日(土) あいぶる

あなたの指が 私の中に 入って
ぷぷぷぷぷ つるつると 入って
掻き回して 掻き回して 入って

私は歓喜に任せるまま 眼閉じる

あなたの指 私の中 掻き回して
びびびびび じゅくじゅく じび
正確な位置を 堪らなく 押して


ああ

ああ

ああ ああ

閉じた眼の 更なる眼も 閉じた
私の私の 声も 情も 全て無く


2005年02月25日(金) 赤罰

びゅくびゅくしているね。

ああ、そうだ。びゅくびゅくしている。

肉。


2005年02月24日(木) 雪夜の降る音

歩く親父さんの背中 雪で白く染まって
いとも寂然と 雪は降り
いとも寂然と 親父さんは歩く
銭湯の煙突から蒸気 眩く白かった
耳が 赤いね

雪の降る夜は音が降る と昔誰からか聞いた
不思議では ないね
夜空で電灯に照らされる 白き塵埃
時折それはまるで 魂魄のよう
ほんとうに そうだと思っている

だからわたしは
たった今 音が降っているのだ
と知らぬ音に思いをはせては その正体を垣間見た気になり
嬉しく感じるのだった


2005年02月23日(水) 端麗なお方の鼻糞も端麗と

私の見つめる先には、長年恋して止まないお好きな方が映っている。

紛いもなく端麗なお好きな方の横顔。私うっとり。
2時限目の禿狐妖怪変化爺が書き残した数学の公式が彼の後に見える。
何故か薄ら笑いを浮かべてださくて変な角度に曲げたピースサインをしゆる男子同級生の顔半分。

それらのだっさーい、くっだらなーい嫌なもの全てに、実に映えて、あなたはまったく本当に素敵ね。って私は過剰な情にぶるぶる震えた。したらばお好きな方がやおらに鼻をほじくって。「ああ、チクショウ。鼻の奥の、なんちゅうの、穴の縁のとこに、あれ、ほほほう、あるんだよ、結構でかいの、が、さ、うるう、おっおっおお、って、あ、そ、そ、お、ぴゃらぴぴゃらぱぱらっぱー、取れただよう!」


でもいーの。それも人なの。
って思えど何故に私の涙は尽きぬのであろうか?


2005年02月22日(火) ぷるぴたぺたん

やおらに立ち上がりけつを左右に力強くびゅりびゅり振ったらば、
それを見た我が駄犬は尾を振り吐息荒く我にまとわりつき眼を輝かせて激しく喜ぶ。

何故。やめておくれでないかい。

あたしのこの奇行はだね、
なんだ、あれですよ、
わー、変な野郎、ははっ、おもろっ、見てやろうか、
って人々に思って頂くための、ええ、打算的な愚行であり、ピエロであり、
たとえおまはんが駄犬であろうとそんない純粋にされると困るのだよ。


ぶああっ

もうっ

くるるっ


全身思い切り震わせて、肉、ふるる。


2005年02月21日(月) 食罪

食物喰らい腹ふくれるたび
どうにも
罪悪感をひきずる


2005年02月20日(日) 顔の音

この地で 人の表情 鳴る
空のやうに薄い氷が 割れるに似た かそけし音
火のやうに紅い血が 溢れるに似た かそけし音
数多の言葉 その音を 表現する術を有せぬ


けれども あるんだよ


千差万別の者が たたえる 千差万別の表情
何時であれ 何処であれ 何者であれ
この地で 人の表情 鳴っている
現世の騒音満ちて 我ら 気づかず


けれども あるんだよ


2005年02月19日(土) 何を見ても泣けて

解放された精神で何を行うかと言えば 泣くだけさ
てりぶるに むやみやたらに 泣けて


干されているパンツを見れば
ああ、そうだね、これで包んでおる一物が生物を繁栄させてきたのだ
ってんで 何を見ても泣けて

母のどてらを見れば
ああ、袖が縫われておるよ、茶碗洗いのとき便利だからだね、ああ、想えばいろいろと
ってんで 何を見ても泣けて

鬼ころしという名称の美酒を見れば
ああ、オトウトが北海道から買ってきてくれた土産 相手を考え抜いた上での土産とはなんとつくづくありがたいのだろう
ってんで 何を見ても泣けて

新千円札を見れば
ああ、なんでっこんな紙に一喜一憂せねばならんのかね でもそれが楽しい やれんね
ってんで 何を見ても泣けて

カメラを見れば
ああ、これでおれの好きな人たちを できる限り最上の技術でもって 留めておきたいものだなあ ああ、いつのまにかおれ好きな人たくさんおるよ
ってんで 何を見ても泣けて


2005年02月18日(金) 来る堪え

赤い布が 奇天烈てけれっつのぱ
窒息させるよ あばらかべっそん

酒に酔うて 穴に銃を突っ込む

酒に酔うて 脳を吸う

ちゃかっぱちゃかあっぱちゃかっあぱ!
ちゃっちゃっちゃっかかかああっぱぱ!

びりぶるに尻を振るぜ


2005年02月17日(木) 盲目の翁

盲目の翁 濁った眼 うろんに泳がせて
樹海の中ひしめく木々の根に 翁は七度転び 八度立ち上がった
目印となりうるわずかな明かりも辞さぬ 暗闇
白杖は 三度目にけつまずいた時 とうになくしたよ


盲目の翁へ 奇跡は尻をふって訪れた
幾星霜も前に朽ち果てた巨樹なれど ふところは万種を受け入れる空洞
穏やかな生物が集まり 雨は防げ 水絶えることなく 豊穣な果実までがあった


盲目の翁 濁った眼 うろんに泳がせて
生物をひとなでして ぬくもり忘れておらぬ事を再確認
雨に濡れぬ幸福を 至極幸福ことだと再確認
清流にて喉をしめらせ 自分が水の塊だということを再確認
果実を一口かじり 腹がくちくなる幸福を再確認


そして翁は 巨樹を出た
何度も転んでは起きる その顔 泥だらけ
骨で聴きたまえ 骨で感じたまえ


2005年02月16日(水) ゆどみ

モノクロの陰影に隠れて 色にも顔にも現状にも
表せえない あんたのリアルはそこにある

君の場所にゆどみはないかい
君にゆどみがあったことはあるかい

時は いまだけ 流れるんでない
いまも過去も すべてを押し流して流れるンよ


2005年02月15日(火) ばかなおとこ

港が見える丘には 一本の桜がそびえたっていた
いつの日だったかな 君とふたりで桜の花片を浴びたね
いつの日だったかな 木の下で君は哀しい顔見せたね

今やあの桜はとうになくなった

教えておくれ あの時はいつの日だったかな
君がいなければ 教えてくれる者もいない

かわいいおんな もういない
のこされたのは ばかなおとこ

今やあの桜はとうになくなった


2005年02月14日(月) 定刻を摂取

壁に耳をあてて感じるは 白い鼓動
誰よりも愛おしい君の手で 頬を包まれて
肋骨雲の筋通る青空を背景に リズミカルに飛び跳ねる猿
トロッコが駆け抜ける トロッコが駆け抜ける

ふいに帽子がつるつるとほつれた


2005年02月13日(日) 劣等の情感を

音を知らぬ私はそのことを強みに換えて、
白色を更なる雪白の極みにまで見据えてみせよう。

考え抜き信じるしか、ない。


2005年02月12日(土)

ふと思い立ち、僕は自分の手を眺めた。

ただいまアルコール摂取にて赤く染まっておる我が両手。
ふと演劇やら詩やら小説やら漫画やら、僕の表現してきたもの全てはこの手からつくってきていたのだな、と気づく。

そして同時に「手だけなんて、なんともったいない」と想う。
次に靴下を脱ぎ、馬鹿の大足を見る。
これまたアルコール摂取にて赤く染まっておる我が両足。
考えてみればこの足でもって何かを表現したことがない。
無駄にでかい足をながめたすめ、つくづくもったいなしであることよ。
方法は未だ不明なれど、身体のあらゆる部分は必ずや表現の幅を広められるはずであることよと信じて。

さらにまた同時に「となるとまだあるやんか」と想う。
次に頭の皮を剥ぎ、自分の脳を眺める様を想像する。
想像してみれば我が脳はいまだツルツクテンテンであり、至極まっさらであることよ。
複雑怪奇なる皺を刻めるほどにおれは考えてきたか?と自問すれば、
「あー。いや、そういわれっとね、うひっうひひっ」と実に頼りのなき返答。くるわっぱ!

本を読みたい。
本を読みたい。

人に会いたい。
人に会いたい。

映画を観たい。
映画を観たい。

ものを考えたい。
ものを考えたい。


てんで駄目だ今のわたくし、と現状に甘んじること一切なくそしていつの日か君をぶちのめす、と。
ぬうわやばい今のわたくし、と現状に対して常に焦りを覚えてそしていつの日か君を見返したる、と。


2005年02月11日(金)

君の唄をつまんだ。
びりびりに魂が怯えて震えたよ。


2005年02月10日(木) 友による感染

会う友人によりおれは普遍的な愚鈍になり、
会う友人によりおれは才を煌びやかせる。

お前の友人は我を馬鹿にさせるか?
お前の友人は我を天才にさせるか?


2005年02月09日(水) 唄の衝動

よく晴れた日、数人の幼子が空を仰いで心底から楽しげに遊びまわる様を見た私は唐突に「唄いたい」という衝動に突き動かされた。

だけど私は生まれつきの音なし子。歌なんて聴くどころが知ったことすらない。
けれどもなんだろう。この灼けるような衝動。
私は今、この、たった、今、ほんとうに、唄いたいのだ。

まるで空を抱こうとするように手を極限まで力いっぱい広げて、音以外に一切が無の世界に少しでも潜り込もうと強くまぶたを閉じて、太陽の恵みを浴び、空気の恵みを浴び、風の恵みを浴び、森羅万象を浴びて、大きく息を吸い、万人が認めるような軽やかなリズムに乗り高らかに声を、どこまでも広がる声を私自身で上げたいのだ。

だけど私は生まれつきの音なし子。歌なんて聴くどころが知ったことすらない。
けれどもなんだろう。この灼けるような衝動。
私は今、この、たった、今、ほんとうに、唄いたいのだ。

冬の空はどこまでも澄みきっていて残酷なほど。
せめて、と思った私は肺を最大にふくらませたのち、瞬時息を止め、全身の酸素を絞り出すように空に向けて吐息。るるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる。


2005年02月08日(火)

夢幻のごとく木々がざわめく緑むせかえる森の中で僕の歯が全部抜けた。
土の枯れた茶色に白のドットが散らばり映えて。
歯の無くなった口内を舌で触れると、どこもかしこも肉の感触がするのみ。
もはや何も噛めないのだ、と思うと同時に背筋を悪寒が走り抜けた。

僕は焦って病的なほどの汗を流し、そばにいた君の人差し指をしゃぶる。
ちゅうちゅう、手の味を根こそぎ吸い尽くすようにきつく吸う。
そして噛む、がしかし歯ごたえは何も伝わってこなかった。
はんなりと肉が肉をはさむだけで、君に対する暴力的な想いに任せるまま指を千切り喰らうことも出来なかった。

はむはむと甘噛み。
はむはむと繰り返す。
はむはむと甘噛み。

ふふ、くすぐったいわ。君が言った。
君はおれのこの燃えさかるような、狂おしく呻くほどの、この気持ちを知っていない。
ふふ、くすぐったいわ。君が言った。
君はおれのこの、おれのこの、おれのこの、おれのこの、愛に気づいていない。

思い知らせてやろう、とより強く噛みしめるけれども、
君はうふふふふふふとより強く笑うだけだった。
ふふ、くすぐったいわ。
そういう君の眼は絶望的に深淵たる情に濡れていた。
僕への愛じゃない。
幾分の憐憫を含んだ、僕という男への情。
僕への愛じゃない。
僕への愛じゃない。

僕への愛じゃない。

夢幻のごとく木々がざわめく緑むせかえる森の中で僕は君の指をしゃぶり君の胸に抱かれて。


2005年02月07日(月) これは眼の鼻水です。

世界が狭まっているよう、と少なからず思っていたわたし傲慢でしたね。
泥酔した翌日、布団の中で刺激臭に涙ぼろぼろこぼして起床したらば、枕元一面が血まみれであり驚愕したところ昨夜のタバスコであることに思いいたると、次に眼や鼻、喉がまったく燃えるようでぐぎゃぎゃぎゃ叫んで再度泣きわめく。

よかよか、本日は泣く行為をタバスコのせいにすることができた、ってんでクルクルほくそ笑み、ほほほ、ぬぐってもぬぐっても止まらぬ涙の味は通常よりもしょっぱさを帯びていた。


2005年02月06日(日) 酸素不足

胸塞がり驚天動地のごとく感情が散り散りに乱れ、
吸っても吸っても空気が足りないよ。

吸って、吸って、吸って
吸って、吸って、吸って

焦りと不安と恐怖に身体髪膚が押し潰されて、
吸っても吸っても空気が足りないよ。

吸って、吸って、吸って
吸って、吸って、吸って

弱いかな、おれ。はは、ごめんって誰に謝って?
弱いでよ、おれ。はは、すまんって誰に謝って?
どうしてこんなに寒くて暑いの?
どうしてこんなに空気が足りないの?

吸っても吸っても空気が足りないよ。


2005年02月05日(土) 二十日

二十日鼠、我の胸に降り立ち顔を見ている。

二十日間、我は冷たく狭い場所、ここは?

二十日後、我は悩みの末に知りそめる。

二十日前、我の心臓は活動停止していた。

二十日盆、我は田舎の墓の下でようやく気づきました。

二十日月、ススキと赤トンボの生命輝く季節でした。


2005年02月04日(金) どっちも気持ちええのに

たとえお前が陰茎下げる男だろうと、膣挿入後腰前後陰茎摩擦運動するよりも
壮絶に気色のいい舌技を有しているならば、いいのではないの。
男色の気は無いおれでも、それはそう思う。

…ということをほろりこぼしてみたら有りとあらゆる方々に恐れおののかれて
「ほほほ、男と女といふ性の区分は限りなく深くて、それってまるで差別と同じだわ」と思った。


2005年02月03日(木) 耳は真っ赤、情感も真っ赤

梢から陽光がこもれる永く急な坂を負けじと競合けんけんぱで登った日、覚えてる。
冬至を迎えたあたりのとても寒い日だったけれど、ずっと動きっ放しでとめどなく汗を流していた女子のえらく赤い頬が齢重ねた現在もなお、まぶたに焼きついて。

指で透明の煙草をつまむ仕草をし、白い吐息を煙になぞらえて少しばかりでも大人びようと2人して抗っていたよ。

その他に当時の事柄はどうにもぼやけてしまって思い出しきれぬのだけれど、これだけは鮮明に覚えてる。はて如何なる理由からかな。
しかし思うにつけてだね、あの子の頬はまったく熟した林檎のまんまで素敵だったね。


そんなことを冬の寒気が極まるにつれて頻繁に思い出す。


2005年02月02日(水) 誠に愛するべきに足るお空様

ふはっ、見ろよ。この雄大な空をサー!青く限りなく広大なる空!雪のごとく純白なる雲!くわっぱ。まいるねどうも。んーん、ふっふっふー、おれって空が好きでさね。はっ、だからこんな空の日にはどうも心躍ってたまんねぇよ、ショーミの話サー!

っておれ傲慢に口端をゆがめほくそ笑んで。
したらば、空怒髪天をお衝かれになられた。

あんさんなにあたしを舐めてん?ほっ、凄まじき度胸であることよなあ。至極哀れね。ってんで、空暗転。黒雲が立ちこめてぎゅるぎゅるの土砂降りで、文字のごとく水滴の一粒一粒がまるで土砂のように身体を打って、いてぇよ、眼も開けられぬ、息もできぬ、体温は根こそぎ奪われガタガタ肺炎と寒気による震えはやむ気配をちくとも見せず、くわっ、ひでぇ、と思う間なんてのもありえなく続いて豪雪が降り寄せ、一瞬のうちにほどんど雪達磨のように白き人になったおれは体温は根こそぎ失われ、凍傷で指先足先はどす黒く壊死した。

はらほろひれはれ?と思い、そしてこれが最後の思考かい?とちびりと悲しみを覚え、はは、みなさんさようならと覚悟を決めたところに再び青空が戻り、太陽が空にそびえ、その暖かみはまるで菩薩様の微笑みのようで凍り付いた身体も歓喜のあまり打ち震え、あちこちから下がる氷柱も溶けて、ふわあ、生き返ったよう、気持ちええよう、と感謝感激雨霰の情感を空に向けたらば、以前として空はおれを睥睨するばかりで、え?なに?まだ怒ってはる?っと思ってたら、は、喉乾いたね、は、どこぞに水分は、と探し求めるがいずこの水分も蒸発して無くなっており、はっはーん、マリーアントワネットは言いましたぞね、パンが無ければケーキを食べろ、とね、だったらジュースをば、って甘いよ甘いよ甘いよおれ、あるわきゃねぇじゃんネー、あっても腐っており飲もうとしたらば一撃で腹をぶちこわすこと疑い無きものであったよ、ほらね、だめなの、って乾いて乾いてカラカラにひらかびるのだけれど、容赦なく照りつける陽光に体内の水分は更に蒸発していって。


あーん。そんなチビシーあなただから好きになったのよさーと死言を述べたらば、あらそうなのだったらはよいいなさいよねって、ほっほ、新春の新秋の穏やかな気候にやわらかい風を運んできた空様。いぎがえっだだようー、とおれ感涙にむせぶ。

あのお方という者はまったく気まぐれであり、まったく予測不可能であり、まったく変動に満ちており、全身全霊をもって愛するに相応しきものであることよなあ、とつくづく実感の今日この頃であった。


2005年02月01日(火) 失望の涙は冷ややか?

暗闇のふちに赤い花が咲き乱れ、艶やかな花びらが一枚、散る。
冬が静かな音程を伴って忍び寄る。
恐ろしく耐え難き寒さにわたしは抵抗し、煉獄の旗を掲げて。

前世との乖離を求め続けた果てには、聖なる酒を浴びるほどに飲む、夢想の中にて。
至極邪魔ったらしい補聴器も無用。拙は森羅万象の奏でる音を知っていた、夢想の中にて。

しかし現世は毅然とやってくる。酒も音も皆無である。
拙は打ちのめされて絶望し、泣き叫び、喘ぎ、喚き、呻き滂沱たる涙を。


は、我に失望して滂沱たる涙を流せることが
類い希なる勇気を有していることの証明なのだよ。
そこから。そこから。そこからからからかんらからからって声高らかに笑ったらどうですか。


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