日常のかけら
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◇焼き芋食べたい◇

「なあ、焼き芋が食いたい」

笙玄が落ち葉を掃除しているのを見て言えば、

「笙玄に言え」

すげない返事が三蔵から返った。
じゃなくて…

「えぇ―っ、三蔵としたい」

振り返ったら、

「出来たら呼べ」

そう言って、部屋を出て行った。

「三蔵!」

慌てて後を追ったけど、もう姿が見えなかった。
何だか腹が立って、廊下の石畳に八つ当たりしていたら、笙玄に聲をかけられた。

「悟空、どうしたんですか?」
「なんでもないっ」
「そうですか?じゃあ、私と焼き芋しませんか?」
「…へっ?」

びっくりした。
三蔵の声とか俺の声とか聞こえたんだろうか?
凄いタイミングで言われたから、返事しなかったら、

「嫌ですか?落ち葉が思ったよりたくさんだったので、燃やすついでにと思ったんですが…」

しょぼんと肩を落とすから、

「ううん!お、俺も焼き芋食いたいなあって、三蔵に言ってたところだから嬉しい」

急いで言えば、嬉しそうに笑ってくれた。

「じゃあ、急いでお芋、持ってきますから、悟空は中庭で待って鋳て下さいね」
「うん!」

俺は笙玄に頷きながら、焼き芋が出来ても三蔵にはやらねぇって思った。

(悟空)

2014年11月11日(火)


◇どこ?◇

境内で御輿が踊る。
今年の豊作を祝う祭りだと、宿の主人が教えてくれた。
神社の本殿の前は御輿見物の人でごったがえしていたけれど、人の頭の上に放り上げられるような御輿の動きは悟空を夢中にさせた。

夢中で陽の光に飾りをひらめかせて宙を踊る御輿を見つめていた悟空はいつの間にか三蔵と離れてしまっていた。

「あれ…?三蔵?」

ひとしきり参拝客に披露して、御輿はまた、街へ練り歩きに参道を動き出した。
引いた人波のあと、本殿の前で三蔵を探す悟空の姿があった。

「三蔵ぉーっ」

くるりと周囲を見渡してもあの綺麗な金糸は見えなくて。
不安に駆られて走り出そうとした襟首を掴まれた。

「何処行く」
「ふぇっ?!」

振り返れば、三蔵が半ば呆れた顔で立っていた。

「三蔵!」

掴まれたまま三蔵に抱きつこうとする悟空にため息をこぼして、三蔵は手を離すが、すでに悟空は三蔵の腰にしがみつくようにして抱きついていた。

「ったく…気が済んだのなら帰るぞ」

ぽんぽんと頭を叩いて身体を離させるのへ、悟空は嫌だと首を降るから、

「仕方ねぇな…」

そう言って、三蔵は本殿の端に悟空を抱きつかせたまま移動し、煙草に火を付けた。

「これが吸い終わったら帰るぞ」

もう一度、悟空の頭を叩けば、微かな頷きが返った。

(三蔵&悟空)

2014年11月03日(月)