Title / Place of peacefulness(安らぎの場所)
◆Thanks◆
 music by Are you
picture by LOSTPIA



思い出の貝殻をお気に入りの小瓶に詰めたら・・・
耳に近づけてそっと・・振ってみてください
懐かしい音が聴こえて来ませんか!?



遠い日のギフト

 


photo by |創天|



思い出したよ 
今 小さな手にかかった白い息が
指の間をすり抜けるように
輝く星に届こうと空に昇っていったから・・

あんなに欲しかった薄紫の鞄
あれは遠い日 冬の始まる頃
あなたが私に贈ってくれたもの

幸せの欠片が
空から降って来た白い夜
鞄の中にいつも入れてた小さなノートに
そっとあなたのこと綴ったから・・

いつからか それは
掛替えのない宝となり
消えない彫り物のように
私のカラダに刻まれた

いつからか それは
私のココロの一部となり
記憶の彼方に溶けていった

いつの日か 
雲のように時は過ぎ
思い出がふわりと空に飛び出した
・・・

今ね
私の空っぽの心に
あの時の鞄と
思い出の小さなノートが
空からふわり舞い下りてきたよ

薄紫の鞄は
あの日の白い息と同じ
高い空からの優しいギフト
帰らない遠いあの日あなたからの・・・
決して消えない大切なギフト


126







風になる

 




暗い空を覗いて
怯えながら泣いた
今日は乾いた風になろう

優しい空を描きながら
懐かしさで泣いた
明日は涙の虹かける風になろう

遥か遠い暦の向こう
小さな港町の埠頭に
朧な影が滲む
沖行く小船が首を傾げ
遠い空が心配そうに近づく

いいえ
あれからの日々は
今日のために駆け抜けた
・・・・・
もう何も迷わない

心配してくれる人たちに
上手な説明もできぬまま
自由の空に舞い上がり
心は既に風となる

いま
君だけに吹く風になる
今日こそ
君に寄り添う風になる



125







十二月の頬杖

 



細い指が丸く頬っぺを包みこみ
物憂げな唇がキュートに濡れる

君の言葉は
見えない宙(そら)を漂っているよう

桜色の爪が白い指を染めて
丸く頬っぺを抱(いだ)

君の瞳(め)は知らない宙(そら)を彷徨っているよう

心はどこにも置かないで
誰にも届かない秘境を巡る

その一瞬が
君と大切な人を結ぶただ一粒だけの光(あい)だと
信じるように・・・

この世界でひとつだけの希望(かがやき)
不意に降ってくるものだけど
決して見逃したりはしたくない
だからずっとこうやって見張っているの

君は悪戯な笑顔でそう呟いて 今も 
頬杖でこの宙(そら)を見上げているのだろうか

あの日と同じ十二月の窓辺 君の頬杖・・・


124





白水仙のなみだ

 




君が君であり続けること

願いと後悔の淵に跪き 叫んでみても
今の君に僕の言葉は届かないだろう

君が一番君らしく
君の心が自由に遊んでいて
光が眩く君を照らすこと
それが僕の変わらない祈り

君の語らない目が虚ろに何かを見つめている
君の悲しい唇がただ黙って結ばれている

そう・・  あれはボルドーの夕暮れ
木枯らし舞う街に君の影が揺れていた
ただ前だけを見つめて足早に交差点を渡っていった

君の後姿を遠くから見つけて
追いかけようとした僕の心は・・・
なぜだろう 踏みとどまってしまった

もしもあの時 君を追いかけていたら
もしも君を捕まえることができたなら

今の君はそんな風に
この花を見てはいなかったのだろうか

何があったと言うの
君の何が変わってしまったというのだろう
その狂おしいほどの深く蒼い瞳には
今何が映されているの

僕は君のそばに居るよ
今こうやって君に話しかけているのは・・
僕だよ

いつか気づいて僕を見て笑ってくれる?
いつか気づいて僕の名前を呼んでくれる?

君には見えているかい

初冬の柔らな陽射しが
君が好きだった水仙の白い花を包み
こんなにも いっぱい
君を抱きしめているよ

こんなにも いっぱい
君に頬ずりしているよ


123






十一月の輝き

 



太陽の恵みを真上に感じて
私は新たな道を歩き始める

昨日の涙はまだ乾きを知らない
それでも私は
新しい道に一歩踏み出してみる

永遠じゃないかもしれない
すべてなんかじゃないのかもしれない

心が燃えている限り
この空が輝いている限り

きっと
誰にも見えない場所
誰にも教えられない場所
でもそれは
隠された確かな目的地だから

いつか
私にも許される日が
訪れることを
願いの光に祈りつつ

今は
ひたすら信じて
この道を歩いていこう 

十一月の輝きに
ひそかなる望み託して・・・


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