ひとりごと
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妹から電話があった。
妹「次の日曜にフリーマーケットをするのだけれど参加しない?」 私「日曜…特に用はないのだけれど、 そろそろ巣立ちするかもしれないからなぁ。 いない間にヒナが巣立っちゃったらさびしいものね。」
妹「巣立ち?何?鳥?」 私「シジュウカラ。巣箱をかけてそこでヒナが育っているのよ。そろそろかも。」
妹「えぇっ!?シジュウカラ?巣箱!?勝手に??」 私「??えっと…『勝手に』って、何に対して?うちの庭なんだけれど。」
妹「だって、そのシジュウカラ、野良なの?」 私「シジュウカラはみんな野良だよ〜。」(爆笑!!)
妹「えっ?そうなの〜〜?みんな野良?勝手に巣箱かけて飼っていいの?」 私「(笑いながら)飼ってないよ。シジュウカラに住んでもらいたくて巣箱をかけているの。 小鳥にお部屋を貸しているのよ。野良じゃなくてそう言うのは野鳥って言うのよ。 野鳥は飼ってはいけないのよ。シジュウカラもスズメもカラスも。」
妹「えっ、そうなんだ!でもなんでその野良シジュウカラが巣箱に住むってわかったの?」 私「シジュウカラが住むように作っているからよ。」
妹「へぇ〜!?すごいね!シジュウカラがいるって知っていたんだ。」 私「シジュウカラはいるでしょう。庭にも来るし。見たことない?」
妹「見たことがない。この辺にはスズメもいないよ。」 私「まさか!スズメこそ、どこにだっているでしょう?」
妹「ううん、最近見ない。ねぇ。(近くの家族に同意を求めている風)」 私「気がつかないだけなんじゃない?」 妹「そうかもしれない。興味ないから。」
なんだかトンチンカンな会話に笑いっぱなしだった。 妹は「えぇ!?」「へぇ〜〜」の連続だった。
すぐ下の妹は、生きものには興味がなくて、動物を飼ったことも植物を育てたこともない。 子どものころ、虫や小鳥でいっぱいの私の部屋に入るのもこわごわだった。 同じ親から生まれて、同じ家庭に育って、同じ学校で学んできても嗜好はこんなに違う。 だからと言って仲が悪いわけではなく、普通に仲のいい姉妹だと思う。 お互いに、自分の知らないことを知っている姉妹をおもしろがり、 時に教えられて新鮮に思う。 それにしても…まさか野鳥のことをこんなに知らないとは。
「野良シジュウカラ」はヒットだった。 小鳥に興味がない人は、こんな風に思っているんだなぁ。 それこそ新鮮!
さて日曜日、まだヒナが巣立たないことを祈りつつ、 フリーマーケットの手伝いに行ってまいりま〜す。
水の底のように涼しく静か。 無邪気で気高い。 深い青が目にしみる。
紫陽花の美しさ。
午後から晴れてきた。 窓を開け放し、ノリのいいCDを流して掃除をした。 お天気がよくなるだけで、気分がよくなるのよね。
調子に乗って、お風呂から洗面所、キッチンと掃除しながら回り リビングに帰ってきたところでひと休み。 お茶を入れて雑誌を広げ、音楽を聴いていた。
CDが終わった。 急にしんと静かになる。 聞こえるのは風に揺れるカーテンのきぬ擦れ。 遠くで遊ぶ子どもたちの声。 高く昇っていくヒバリのさえずり。 緑の香りの風が心地いい。
パサッ。がさがさ…ことん。 窓の外を小さい影が横切った。 シジュウカラが巣箱に帰ってきたらしい。 巣箱をかけて6年目にして、ようやく住んでくれたシジュウカラ夫婦。
…チイチイ…チイチイ…。 かすかな声が聞こえた。 あれはもしかして?
サンダルを履いて庭に出て、そっと巣箱の下に寄って耳を澄ませた。 …チイチイ…チイチイ…チイチイ。 まるで超音波のように高くて細い声だけれど、確かに聞こえた。 ヒナの声だ。 卵が孵ったのだ!
胸がふるえた。 目が熱くなった。 そして、自分がそんなにも感動していることに驚いた。
私の家の軒下で、小さい命が生まれた。 ここを選んでくれた小鳥の夫婦がいた。 同じ屋根の下で、子どもたちが育っていく。 ここがふるさとになる。
シジュウカラたち、ありがとう。
夕暮れがやってきて、巣箱は静かになった。 ヒナたちは眠っているらしい。 親鳥たちも同じ巣箱の中かしら? 小さい丸い頭を並べて、すやすやと眠っている家族のことを思って またほのぼのと幸せになった。
「のだめカンタービレ」の新刊が出た。 夫と順番に読んだ。 おもしろかった!
「のだめ」を読むと、ピアノが弾きたくなる。 自分の指で音を奏でたくなる。 でも私のピアノは姪たちにあげてしまったのだった。 楽譜だけが手元に残っている。
姪たちは一生懸命練習しているらしい。 発表会もあるらしい。 楽しんでいるらしい。 よかった。 これでよかったんだよね。
そのうち、上達したところを聴きに行かなくちゃ! そしていつか、母から譲られたいくつもの楽譜を 彼女たちに渡しましょう。
2年前の紫陽花の頃、遠くの友だちが仕事で東京に来た。 忙しい合間を縫って私たちは会って、バラ園に出かけた。 盛りは過ぎていたけれど、バラ園にはまだ彩りがいっぱいだった。
その一番奥に、赤い小さい花を滝のように枝垂れさせた薔薇があった。 赤い星をちりばめた天の川みたい! 彼女はひと目でそれを好きになった。
「この薔薇をほしいのですが」と園主の老婦人に言った。 「ごめんなさい。お売りできないのよ。」と園主は言った。 「これは名前がわからなくってね、苗も作っていないのよ。」と 申し訳なさそうに、おっしゃるのだった。
残念。 せめてもの思い出に、と友だちはその薔薇の写真を撮り、 花を見上げ、別れを惜しんでいた。
そんな私たちを見ていた園主は「そうだわ。ちょっとこの枝切ろうと思っていたの。」と 鋏を持って近づき、花のついた枝をばさばさと何本か切った。 「はい、お持ちなさい。」と、豪勢な花枝を差し出してくださった。 そして「もしかしたらつくかもね。」と、小さく言い添え、いたずらっぽそうに微笑んだ。
「え…?いいのですか?」戸惑いながらも、嬉しそうな友だち。 「いいのよ。切るところだったんだし、売り物にもならないのだしね。」と言いながら くるくると紙に包み、2つの花束を作ってくださったのだった。 そして「名前は好きにつけちゃっていいわよ。あなたたちの名前をつけなさいな。」と 笑いながらおっしゃった。
その後私たちはささやかなお礼の気持ちをこめて、発送する薔薇苗の梱包を手伝った。 「あぁ、どうもありがとう。助かったわ〜。」と園主は笑顔で腰を伸ばした。 実際には、私たちよりずっと小柄な園主の方が、ずっと力もあって 梱包の手際もよかったのだけれど。
ほんのちょっとの労働と引き換えに、私たちはそれぞれ2本の花枝を持ち帰った。 薔薇にはお互いの名前をつけることにして。 そして園主の思いのとおりに、花のあと、枝を土に挿した。 その枝は2本ともつき、ゆっくりと根を伸ばし育っていった。
そんな薔薇が2年経って、ようやく咲いた。 ローズピンクを帯びた明るい赤の小さいカップ咲きの薔薇。 黄色い蕊がぱっちりと愛らしい。 そうだ、あのときの薔薇だ。 あの陽射しを思い出す。 園主の笑顔を思い出す。
いつかはバラ園で見たように、流れるように咲くのだろうか。 彼女の手元では、私の名がついた薔薇が咲いているのだろうか。
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