さようなら
嘘と隠しごとなら、どちらが罪深い?
どちらも程度によるだろう。
一睡もせず夜明けを待った。

携帯電話を開き、操作音を消した。
初期化して、電源は入れたまま。
彼の画像も、彼専用の着メロも、履歴も、メモリも何もかも。

着信も受信も消音にして、彼のバッグのポケットに入れた。
このまま支払いをしなければいい。

目覚まし時計を買いに行こう。
2度と携帯電話は持たない。
彼に渡していた合鍵を返してもらった。

詰り、罵倒し、嫌味を言い、殴りつけた。
腕を掴まれ、抱き寄せられる。
男の常套手段。

口篭る彼。
無理やり話させ、一つづつ確認する。

 私はね、数学は不得手でも、足し算と引き算はできる。

 私をおもちゃにして、さぞ楽しかったでしょうね。

彼が話せば話すほど、私は逆上する。

 私が確認できない話は、今後一切信用しない。
 
嘘つき男と何度も言い、オマエはサルだと鼻で笑った。

 一生呪ってやるから。
 ううん、今すぐ死んでしまえばいい。

 別れる?そんな甘っちょろいことしないよ。
 付き纏って、仕事できなくしてやるから。

夜中から明け方まで罵り続け、彼が眠った数時間のあいだに
私は携帯を操作し、彼のノートPCから私の痕跡を消した。
デスクトップを起動しているとき、彼が目を覚ました。

ベッドに連れ戻され、惚けたように横になると
幼稚園の頃までを思い出した。
童謡が数曲浮かび、掠れた声で口ずさむ。

私の携帯電話入りのバッグを持ち、彼は出かけた。
メールも電話も届くよ。
彼の傍にあるバッグの中の携帯電話にね。

卑怯で浅はかでバカな男を、それでもまだ愛している。
このまま狂ってしまえれば、どれだけ幸せか。


2005年11月26日(土)

共同生活
  一人の時間と空間が欲しい?

彼の問いかけ。

  そんなことないよ。
 
毎日彼が帰ってくるのは、零時前。
私一人の時間は、今でも充分にある。

彼の荷物は、ほとんどない。
だから、私だけの空間も充分にある。

ただ困ったことに、私はヘビースモーカーで
彼はほとんど喫煙しない。
彼は乾燥して汚れた空気に敏感で、のどを痛めてしまった。

  たばこ、やめろよ。

何年も前から彼は言う。
 
  無理。

言われるたびに、私は答える。
頻繁に部屋の空気を入れ替えて、濡らしたタオルを部屋に干して
気を遣っているつもりなのにね。

今夜、彼は後輩と飲み会。
夕飯の支度をしなくていいのは、ラッキーだ。
兼業主婦になったことがないので、やや疲れ気味。
と書くと、彼に叱られそう。
すでに二人で外食してるものね。







2005年11月25日(金)

形見分け



10年ほど前の父親との会話。

 形見分けに何がいい?
 
父があげたのは、3つ。
一つめは、アンティークの金の懐中時計とその鎖。
二つめは、ローライのアンティークのカメラ2台。
三つめに、オールド・ノリタケ。

三つのうち、どれか一つと言われて、私はオールド・ノリタケと
即答したのだが。

 オールド・ノリタケ?
 見たことないけど、どこに隠してるの?

他二つは、何度も見ていた。

 おじいちゃんの形見だよ。
 どこにやったかな?○叔父さんに預けていたな。

ノリタケの本社に同じものがなく、是非寄贈してほしいと言われた
ことがあるそうだ。

叔父が手放すわけがない。
叔父が私に譲ってくれるはずもない。

残るは、ローライか金時計。
どちらでもいいし、両方でもいい。
あつかましい本音はさておき、
今の私には分不相応だとわかっている。


2005年11月23日(水)

彼との暮らし
昨日から彼と暮らしている。
本格的な同居の前の、試用期間になるのかな。

狭い部屋で、4台のPCに囲まれているのがおかしい。
お互い仕事があるので、朝と夜に顔を合わせる生活。
今まで気ままにしてきたので、どうなるのか戸惑いもある。
二人分の食事と洗濯。

昨夜、彼は自分のPCで仕事、私は自分のPCでネット散歩。
小さな空間で、それぞれがそれぞれの時間を持つ。
すぐ手を伸ばせば、彼がいる。
邪魔しないように、それでも傍に行きたくなる。

朝、目覚ましの音で飛び起きて、彼を起こす。
不思議な楽しい感覚。

さあ、今夜の夕食は何にしよう。
まともに献立を考えるのは久しぶり。


2005年11月21日(月)

見つからない言葉
大丈夫?
大丈夫なわけがない。

がんばって。
ピントはずれ。

どんな感じ?
既に知っている。

体調どう?
声を聞けばわかる。

彼にかける言葉が見つからない。

ネットに繋がらない環境の彼に代わり、部屋を探した。
仕事中の私は、一人になった時間を使う。
携帯での短いやりとりは、意志の疎通がうまくいかない。
PCから彼の携帯へ。

疲れと慣れない環境と治らない風邪。
こんなときの彼が、どうなのかわかっていたはずなのにね。
ちょっとした行き違いで、かっとなった。
蔑ろにされたようで「馬鹿にするな」と返事した。
彼には毛頭そんなつもりなどなかったのに。

そのまま怒りをぶつけ、それでも時間が迫っていると焦りを抑え
メールを送る。
けれど、私の「馬鹿にするな」の一言で、彼の気持ちが離れてしまった。

最後に越えられない壁に突き当たり、私は降参した。
放棄したと言っていいかもしれない。
私ではどうにもならない。
今の私では。
「続き柄」の文字を見て、現実が押し寄せた。
赤の他人だと書いてやろうか。
恋人だと、婚約者だと。
自嘲交じりに呟いた。

帰りの彼からの電話。
彼の声が冷たく突き放したよう。

話すと言い訳にしか聞こえない、私の言葉。
自分の気持ちを押し付けるだけの、私の言葉。

彼は呆れ果てた、冷たい声、疲れた声。
彼は家に帰り、まだ仕事をすると言った。
まだ眠れない彼に、おやすみなさいと言えなかった。

2005年11月18日(金)

2つ目のストラップ
新しいストラップが届いた。
彼と一緒に探し、彼が決めた。
前のストラップは私の好みで決めたから、今度は彼に選んでもらった。
片方だけのままじゃ、やはり寂しい。
彼が今度来るまで、チェストへ。

色違いの携帯電話に同じストラップ。
恋人たちにとっては、ありふれた光景かもしれない。
よくあることかもしれないね。
それでいいよ。
彼と私には、特別だから。

彼は風邪が悪化して、本当につらそう。
往復4時間かかる場所での仕事。
突然のSOSに応えてあげられない。
 
 すぐに部屋を探して。すぐに来て。

よほど苦しいのだろうと探した。
だけど今すぐに、動けないのは私だった。
ごめんね。
飛んで行きたいのに、行けない今が歯がゆい。




 

2005年11月16日(水)

風邪と花粉症
彼は本当によく風邪をひく。
月に一度のペースかもしれない。
花粉症もあるから、春と秋と冬は辛そうだ。

彼が風邪をひくたびに、都会で暮らそうと言うのは気の毒だと
思ってしまう。
空気は悪いし、花粉もひどい。

形成外科の先生と、花粉症談義になったときのこと。
私が脛が痒いと言ったら、先生もそうだと言った。
コンクリートに落ちた花粉が、風などで舞い上がり
ちょうど人の脛の高さと地面を往復するそうだ。

最初の年は、春先に痒くなり赤くなっていた。
去年あたりから、乾燥し始める今頃から春先まで痒くなる。
私は不精だから、皮膚科には行かずじまい。
だから花粉症なのかどうかわからない。

彼はきちんとアレルギー検査をしている。
風邪や花粉症で、内科と皮膚科に行く。
いつも診て貰っている医院があるのに、知らない土地で
また一から相性のいい医院を探さなければいけない。

こんな心配は、子供に対するものだろうか。
だけど、彼が辛そうにしていると、いつも思うのです。
冗談で
 虚弱体質なの?
 そうかもしれないね。
と、笑いながらも気の毒だと思ってしまうのです。


2005年11月15日(火)

いつの日か





あちこちぶつけ、傷だらけになった。
今は片方しか残っていない。
それでも、初めてお揃いで買ったもの。

彼は私と暮らすために、地元から離れたところで仕事を探している。
 
 仕事が見つかったら、ようもすぐに来られる?
 
 通勤時間が短いほうがいいよね。

彼は仕事を探し、私は部屋を探す。
そして現実にぶつかる。
それでも1歩づつ前に進む。
 
 お願いだから、立ち止まらないで。

 そんなこと思ってたの?
 ずっと前から、進むことしか考えてないよ。

形あるモノは、いつか傷つき、壊れたり無くしたりする。
彼と私の心は、傷つくことはあっても消えたりしない。

彼は何度も言う。
  
 一緒に暮らすのが、ゴールじゃない。
 その先をいつも考えてる。

だから、焦らないように着実に1歩づつ。
いつの日か、必ず。


2005年11月12日(土)

彼の声
息子は、父親に彼女ができようと、結婚しようとかまわないと言いました。
どう言うか知りたくて
 じゃあ、私も彼氏を探そうかな。
と言ったところ、やはり少しむっとした様子でしたが
 俺にとっては、いつまでも父親は父親、 母親は母親だ。
と答えてくれました。

それなのに、息子は「向こうの家族の一員」で、
私はいつまでも一人だとの僻みと焦りが募りました。
思い出したくない、普段は全く思い出さない過去が
あとからあとから、こみ上げてきて、mixiで暴発しました。
ブログと同じように、1日何度でも書ける点がいいです。

息子に、彼氏がいると言えなかったのは、私のずるい点です。
私が言えたのは、彼氏ができたら紹介するね、でした。
別にしなくていいと言ってました。
息子にとって父親と母親は、やはり違うのだと思います。

mixiで私が怒りのあまり、次々に書き散らす様子を
彼はリアルタイムで見ていました。
元夫に対する憎悪を具体的に公開したのは初めてです。

それでも、いつものように穏やかな声で電話をくれました。
俺の声は癒しの効果がある?と笑っていましたが、
万人に効くかどうかはわかりません。
私には鎮静効果があるようです。

息子と話して、踏ん切りがついたのも確かです。
息子は自分の人生を進み、謳歌しています。
私も前に進もうと思います。




2005年11月10日(木)

息子への謝罪
息子の携帯が、また繋がらなかった。
いつもなら、息子の友達に連絡していた。
今日は元の家に電話した。

離婚してから、元夫と話したのは1度きり。
息子を男手一つで育ててくれたことに、いつかお礼を言おうと思っていた。
いい機会だと思った。
お正月に聞いた話も思い出し、女性が電話に出ることも予想していた。

思ったとおり、女性の声。
どう名乗っていいかわからず、元夫の名前を告げるとあっさり
呼んでくれた。
どちら様ですかと問うこと無しに。

30分ほど話してわかったことは、男手一つではなかったこと。
その女性が、掃除洗濯料理一切を息子のためにしてくれていた。
相変わらず能天気な元夫だった。
その女性と同居していた。
中学1年と小学1年の子供二人と共に。

息子に電話して2時間近く話した。
息子は3年近く彼女の存在を知りながら、父親から話してくれるのを
待ったそうだ。
息子が家を出る直前、知らない間に家に入られることだけは
いやだと思い、息子から切り出したらしい。
その女性をとてもいい人だと息子は言う。
私も話を聞いてそう思った。

きちんと紹介してくれと言ったのは息子。
家賃がもったいないからと同居を勧めたのは息子。
祖父母、つまり元夫の両親に話せと言ったのは息子。
いつ私に言おうか、悩んでいた息子。
息子は、私よりよっぽど大人だ。

当時、元夫の悪口を、息子に言わずに家を出た。
息子にとって父親だし、父親の悪い面を聞かせたくなかった。
今夜、私はもういいだろうと思い、息子に言った。

 気分を悪くするだろうけど、ごめんね。
 あの男は、本当にヘタレだね。

 俺もヘタレだと思う。
 つくづくそう思った。
 自分からは何も話さずに、周りが気を遣ってる。
 息子の俺までが、そうしてしまう。

女性のことを、祖父母に話したのは、やはり息子だった。
それもたったの数週間前らしい。
いつも業を煮やし、私が動いていたことを思い出した。
今は、息子がそれをしている。
少しでも早い独立を夢見ている息子が不憫だった。
俺にだって子育てくらいできると、威勢良く啖呵をきった元夫。
あの祖父母がいれば、との思いで一人家を出た。
後悔しても始まらない。
自分が決めたことなのに、今夜は何度も息子に謝った。
心から申し訳なかったとお詫びした。


2005年11月08日(火)

もうすぐ1年
テレビで『スイングガール』を観た。
ロードショー前に、この映画のポスターを制作した会社の
記事を読んだことを思い出した。

Google Videoで『FFVII Advent Children』を観た。
画質は荒いが、懐かしかった。
このゲームの世界観はすごい。

会社に行くと、真新しいノートPCがあった。
社長は、この類は躊躇なく購入する。
この人は、こういう人なんだと改めて思った。

ポスター制作についても、FFシリーズについても
社長と交わした話題だったと思い出した。

珍しく飛び込みの営業がやってきた。
俺もしないとねと言いながら、一度もやったことがない。
それも思い出した。
なんだかんだ言いながら、一人でやっていける人だと確信した。

嫌悪感がなくなり、同時に気負いも消え
全くの過去の人になった。
冷たいけれど、一人で生きていけばいいと思えた。

もうすぐここに来て1年が経つ。
東京見物はほとんどしていない。
東京タワーは『Google Earth』で見ただけ。
通天閣に上ったことがないのと同様、東京タワーもどうでもいい。

今はただ、彼といたい。
彼とならどこででも暮らせる、とは言えないけれど
花のお江戸に執着はない。
彼と暮らせる日を、ただひたすら信じて待っている。






2005年11月07日(月)

言わなくていいように


彼は私と別れようとしたらしい。
私の送る毎日が暗く塞ぎがちで、彼の存在が私を苦しめていると。
決して彼のせいじゃない。
彼に逢えなかった3ヶ月のせい。

彼がいなくなるのは耐えられない。
彼に別れようと言われたくない。
だからもう少し強くならないといけない。

彼と知り合い、彼に惹かれ、恋しく思うようになってから
何年経ったろう。
今も変らず彼が恋しく、毎日会話する。
遠く、離れているからかもしれない。

彼に逢いたい。
でも本当は、もう逢いたいと言わなくていいようになりたい。
いつも傍にいれば、逢いたいと言わなくていい。


2005年11月06日(日)

深いところで
先月、彼がお揃いのストラップをなくした。
ショックを受けた様子が、短いメールから伝わったのに。

そのメールが着く10分ほど前に、強めの地震があり
私は、ちょっとしたパニックに陥っていた。
彼の落胆が、私には響かなかった。

今までも何度か落としそうになったり、千切れかけたりしていたから
大切に扱わないほうが悪いと思った。
そして、こっちはそれどころじゃないと思った。
あのときの私は
 たかがストラップごときで、騒ぐな。
としか思えなかった。
彼が地震を知らなかったせいもあった。 
彼のショックを、受け入れられなかった。

どれだけ愛してると言い、深く思っていても、
相手を全て理解はできない。

人は、関心のある相手を理解しようとする。
趣味を尋ねたり、共通の話題を探ったり。
自分の過去に照らし合わせもする。
恋の初めは、特にそうかもしれない。

結婚相手に愛情を持ち、不満なく生活していても、
似たような過去や経験をしている相手に出会ってしまったら、
理解してもらおうと、そちらに気持ちが傾く場合もあるだろう。

昔、彼に言った。
私たちは深い部分が似ているみたい。

少しの行き違いで、心が通じないときもあり、ケンカになることもある。
腹が立って口を聞きたくないときだってある。
それでも、彼と続いていくのは、
愛情はもとより、目に見えない共通の何かがあるからだと思う。
今更だけれど、あのとき彼と出会えてよかった。
何度も知り合う以前に戻してくれと、無茶を言ったけれど。
彼を失うなんて考えられない。


2005年11月03日(木)

半端者
彼が逢いに来てくれたおかげで元気になり
会社でも明るくできる気力が出た2日目。
激怒してしまった。
前々からそうだったけど、私に尋ねながら返答をすると
小ばかにして聞き入れない態度と言葉。
今まで何度も、金輪際尋ねられても返答しないと決めたのに。

今日は怒鳴ってしまった。
 いつもいつも、鼻で笑うような言い方されて、マジでむかつく!

本気で辞めてやろうかと、その場で辞めますと
言いたかった、きっぱり言えない自分が情けなかった。
心臓の鼓動がおかしくなり、私は終業時まで顔を引きつらせ
モニターを睨み続けた。

 私が辞めてしまえば、その給与分助かるでしょう。
 これまでお世話になり、ありがとうございました。
 友達もいない、仕事も減っているのは、その自分の
 頑固で古臭い思い込みに、周囲がウンザリしてるから。
 最初は良くても、だんだん人が離れていくのは
 どうしてだかわからないようですね。

恩を仇で返す言葉しか浮かばなかった。
だから黙ったまま、モニターを睨み、定時に飛び出した。
次の仕事を探そうとせず、ずるずると居座る私は愚かだ。
無能な自分を棚に上げ、怒りがおさまらない。

彼には言ってはいけないと思ったのに
彼からの電話で「融通が利かない相手」の話を聞いて
思わずぶちまけてしまった。
私はいつも、何をしてもどこに行っても中途半端だ。


2005年11月01日(火)

初日 最新

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