眠る金

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Hello, my dears!

●2014年08月13日(水)

昨日、出勤途中にTwitterをいじっていて、ロビン・ウィリアムズ自殺の報に触れた。
詳細が判らないまま仕事に入って、自分でもなんでこんなに、と思うほど落ち込んだ。
いつもの通り仕事をして、馬鹿話をふられれば応えるけれども。
つらいなあつらいなあと思いつつ一日を乗り切った。

高校生の頃「ミセス・ダウト」が封切りになって、すごく興味を惹かれて映画館へ観に行った。映画を一人で観に行ったのはこれが初めてじゃなかっただろうか。
予想以上によくて、その後ロビン・ウィリアムズ出演の映画をいくつも観たが、未だに一番好きなのはミセス・ダウトだ。

そういうわけで、ミセス・ダウトのDVDを借りて久しぶりに観直してみた。
観たら泣くかなあと思いきや、もう、ずっとにやにや笑いっぱなし。さすがだよ、すごいよロビン。
最初の視聴では涙一滴も出なかった。

Mrs. Doubtfire Trailer

(簡単にいうと、妻に愛想を尽かされて離婚したものの、子供愛しさに老家政婦 Mrs.Doubtfireになりきってかつての自分の家に通う男の話)

(以下、若干ネタバレ注意)

DVDの特典映像をはしごしていたら、未公開映像がたっぷり入っていた。かなり毒が強めの映像(そりゃカットされるだろう)の中でひとつ、異色のシーンが有った。主人公ダニエルと、元妻ミランダとの(幾度目かの)諍いによって苦しめてしまった娘・リディアとの会話。

リディア「ダウトファイアさんや鳥になれるでしょう? ママと幸せなふりをして」
ダニエル「できるけど、偽物の家族だ。本物じゃない。演技だから。(中略)演技もいいが、あれは仕事だよ」
リディア「父親も仕事よ」
ダニエル「違うよ、父親でいることは喜びだ。演じる必要なんてない」

これを観た後、再度本編を観直した。

ラスト近く、Mrs. Doubtfireを失ったミランダと子供たちの会話。
「ダウトファイアさんのスパゲッティ……」
「ダウトファイアさんのジョーク……」
「ダウトファイアさんのお話……」
恋しがる子供たちに、
「確かに彼女のいた生活は素晴らしかった……でも、彼女は本当にいた人じゃないのよ」
ミランダがそう言い聞かせたところで、聞こえてくる、Mrs. Doubtfireの声。

「Hello, my dears!」

ここで不意に、涙が出てきた。
本当の存在ではない、演技によって生まれた「彼女」の声が何故こんなに嬉しいのか。

その後、ミランダはダニエルに言う。
「ダウトファイアさんは、子供たちのいいところを引き出した。そして、あなたのいいところも」
ダニエルは返す。
「君のいいところもね」

あくまで、元の家族には戻れない。それは最後まで徹底しているが、新しい道が示される。

本当にいない、演技によって生まれた架空の人物。偽物の家族を演じるよりかもっと難しいはずなのに、たくさんの人に愛される存在になった。

この映画はロビン・ウィリアムズのパフォーマンス無くして成り立たないことは誰にでも判る。
架空の存在がリアルになげかけてくる笑い、怒り、涙。そんな役をたくさん演じてきたロビン・ウィリアムズが、鬱に苦しんで世を去ったことに、今は何とも言えない。

自死遺族は自殺報道についてどう考えているか。
「大事なのは生きることだ。自殺した人から、その自殺から過剰なメッセージやその裏に特殊なファクターがあるように思うことなく生きることだ。自分のことだってわからない。他人のこと、まして死んでしまった人のことなんてわかるわけないのだから。「グッド・ウィル・ハンティング」というタイトルの意味だってよくわからない。」

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