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梨をむく - 2011年08月24日(水)

最近は職場で近くの青果店で買った梨をむいて食べています。30過ぎの男がお昼くらいになると給湯室で梨を黙々とむいているのって気持ち悪い光景のような気もしますが自分はこの梨をむく時間をとても楽しみにしています。

以前は1日に3本くらいのペットボトルをガブガブと飲んでいたのですが、冷蔵庫でキンキンに冷やした梨を食べるようになってからあまり喉が渇かなくなりました。夏だというのに仕事が終わった後に生ビールを飲みたいという気持ちも特に起きなくなるから不思議です。次の日に疲れが溜まらなくなっているような気がします。

しかし何よりも1日中パソコンばかりしている目や手が「包丁で梨をむく」という作業をすることでスーッと癒されるのを感じるのですよ。精神安定としての仕事。包丁などの道具を使って何か作業をするのって良いですよね。何かが満たされます。

ところで自分は10年以上スーパーやコンビニの弁当や外食でごはんを済ませてきたので「果物を自分で切って食べる」って行為はちょっと特別な感じがします。フルーツを食べる時って高級なフルーツ専門店の喫茶店に行くとかコース料理のデザートにちょっとついてくるとか。そんな感覚。女性はそんなことは無いのでしょうが1人暮らしが長い男性の場合はわざわざ果物を買って食べることをしない人が多いのではないでしょうか。(そんなことは無いのかな?)

でも僕のその感覚はとても貧しいですね。中学生の頃からいろんなオシャレ雑誌で洗脳されていたので「都心に住んでいる若者は1000円くらいするカフェ飯みたいなものを食べるものだ」と思っていました。で、10年くらいそういう生活をしていたわけです。もちろんそういうのが格好いいと思っていたのは最初の数年間であとは惰性なのですが。それでも地元の汚い青果店の奥にある桃や梨が素敵な輝きをしていることに気づかずに、代官山だの恵比寿のオシャレな内装の喫茶店の方が素敵だと思うなんて。典型的な大三病というか田舎者というか。

そういう時期真っ盛りの9年くらい前、渋谷にある某クラブ(ダンスフロアがあるやつ)で、お客さんの女の子が突然タッパーから果物を出して「お1つどうですか?」と勧められたことがあります。中身はマンゴーだったかスターフルーツだったか。
周りがオシャレ女子だらけの空間でその女子はとてももっさい格好をしていたし、唐突に果物を勧められたことに面食らってしまってそのときは「いらない」と断ってしまいました。しかもその子が帰ったあとに「いやー変な女がいてさー。TPO的に果物を勧めてくるとかありえないでしょ」と友達に悪口を言っていました。

その子が素敵かどうかは置いといて、そういう子に対して目くじら立てて悪口をいう自分のダサさってのは今思い返すと赤面しますね。

所帯じみたものや生活感が滲み出ているようなものに狭量だった僕はその子の老女みたいな所作を許せなかったわけです。

あれから僕も大人になり自分で洗い物をしたり果物を切ったり炊き込みご飯を作るようになりました。そしてオシャレスポットみたいな場所には行かなくなってしまいました。今ならばフルーツを勧められたらありがたくお1つ頂いてお礼を言って世間話でもするのでしょうか。

格好をつけていた時期に多くの「所帯じみた人」を馬鹿にしたり仲間はずれにしたりしたことは今思い出しても胸が痛みます。暗黒の20代であるがやり直せるのであればその辺の人間関係だけでもやり直したいと反省する次第なのであります。


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