VITA HOMOSEXUALIS
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じめじめした梅雨の蒸し暑い晩だった。
その日私は酒店の一角につくる臨時居酒屋で近所のおじさんたちにしこたま飲まされ、熟柿のような熱い息を吐きながらよたよたとアパートに帰って来たのだった。
汗臭いシャツとパンツ姿のまま、私はどん、と横になった。そのまま眠ろうと思ったが眠れなかった。かなりの尿意を感じていたからだ。だが、私は廊下の端にある共同便所まで行くのがおっくうだった。
「このままここでやっちまえ」私の頭の中に、悪魔の発するような、そんな声が響いた。それはいかにも異様なことのように思えた。でも、何もかも投げやりになっていて、どうでもいいと思う自分もいた。どうせ誰も見ていない。誰にも迷惑はかからない。
そこで私はタオルと洗面器を取って、とりあえずタオルの中に吸い取ってしまおうと思った。芋虫のようなペニスを引きずり出した。しかし、オシッコなど出なかった。人間には何かそういう、羞恥で彩られた禁を犯すようなことが出来ない脳の仕組みが備わっているのだ。既に膀胱は破裂しそうだった。だが先端は一滴も漏らすまいとして硬く閉じていた。私はそのせめぎ合う力を何度か味わった。 苦しくなった私は苛立ち、思い切りぐいといきんだ。
腰の下で何かが動く気配がした。
その数秒後、ペニスの先端から黄金の水滴が顔をのぞかせ、涙のように茎を伝わって股の叢の中に落ちた。そのときつんと刺激のある匂いが鼻を打った。
それで私の頭は真っ白になってしまった。
それからも力を入れ続けると、オシッコはだんだん滑らかに出るようになった。タオルでそれを受けたが、タオルがだんだん濡れて熱く、重くなってきた。洗面器にしようと思ったが、仰向けになったままの姿勢では液体を洗面器に受けることは出来ないのだった。
そのうちに、それは噴水のように吹き上がって止まらなくなった。パンツの脇が濡れ、シーツが濡れて行くのがわかった。一部は畳にも吸い込まれたようであった。それはまことに奇態で哀れな放尿だった。私は低い声をあげて涙を流した。
やがて腰回りはぐっしょりと濡れ、タオルはぽたぽた水滴を垂らすようになった。私はそれを顔に押し当ててみた。刺激のある、しかしどこか懐かしいような、甘い香りがした。
いつしか私のペニスは勃起し、先端からぬらぬらと先走り汁を垂らしていた。
私はそのまま左手をペニスに当て、上下にしごいた。オシッコで濡れ、先走り汁で濡れたペニスは手がよくすべり、激しく手を動かすと細かな白い泡が立ち、私の手が動くたびピチ、ピチ、といやらしい音を立てた。
ついに快感の疼きがやってきて、私は大きな声をあげ、思いっきり射精した。
それは腰が抜けるような快感だった。精はほとばしって私の腹にも、胸にも、太ももにも飛沫を散らした。
その晩のオナニーはこれまでに経験したことのないほど強烈なものだった。
ぼんやりとかすむ頭の中で、私は「明日洗えばいい」と思い、濡れたものを洗面器に入れて、下は裸のまま共同水道でタオルや下着を見ずで濡らした。
その晩はいつになく熟睡した。
こうして私はおシッコ遊びのファンになってしまったのであった。
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