あの人との喧嘩に疲れ切っていた頃、
友達だった彼と映画を観に行きました。
彼がメールで提案した3つの映画のうち、
私は一番リアルではない壮大なファンタジーを選びました。
私には気分転換が必要だったのです。
映画館を出た後、
彼と繁華街を歩きながら、観たばかりの映画のテーマについてお喋り。
私と彼はその映画のテーマについて
全く同じフレーズを同時に口にしました。
その後に行ったワインの美味しいレストランで、
彼は私のことを映画や美味しいものの感動を共有できる人と
形容しました。
終電が無くなる時間まで、時間を忘れてお喋りしていた私達。
あの人の冷たい言葉がこびりついていた私の頑なな心は、
彼の楽しい話と美味しいワインで柔らかく溶け出すのでした。
彼は私よりずっと大人で気負う必要などなかったから、
私はあの人と話す時よりもずっと無邪気に振舞えるのでした。
長いこと信じ続けていた大切なものが壊れた時、
もう誰も、何も疑いなく信じることはやめようと心に決めたから。
駐車場に置いていた彼の車をタクシーの運転手に代行運転させて、
彼は後部座席で私の隣に座り、私を家まで送り届けてくれました。
家に着くとすぐに彼からメール。
とても楽しい時間を過ごしたと書かれていました。
あったかい夢を見て下さい。
メールの終わりはそう結ばれていました。
眠れない夜ばかりが続いて、
夢を見ることなどなかったあの頃の私でした。
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