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2006年11月11日(土) 僕たちは池を食べた(ネタばれあり) / 奇跡の海

来週の東京行きまで休みがありません!何とかやっていきたいものです…やる気の無さに甘いもの攻撃してみましたが効果があんまりない。どうしたものか。

春日武彦さんの小説を本屋で見つけてびっくりしました。ファンとしては買わずにいられません。予想通りセミフィクションというか、小説というよりエッセイっぽいです。お医者さんなのでそのまま患者さんのことを書けない事情があってこういう体裁になったのだろうか。

他の小説とか漫画にありがちな熱い人間ドラマな展開は殆ど無く、淡々と流れる精神科のお医者さんの生活の中で、患者さんの存在は風景の一部のような薄い感じになってます。そんなもんなんだろうなあ。でもその余白に春日先生の趣味・フェティッシュの記述が隙間無く埋まっているのが味というか。うわ〜きたよ〜(はあと)という感じなのですが。

例えばひとり缶詰工場でラベルの絵を描いていた方が抑うつ症状を起こして患者として来るんだけど、その前景にびっちりカスガ先生の缶詰工場に住んでみたいという夢の話が描かれていて(旅行に出る時は貴重品を缶詰にして、ひとつひとつこういうラベルを貼っていくんだとか)、その妄想に対してむしろ患者さんの存在が現実世界に引き戻すきっかけになっているようなのがおもしろかったです。その患者さんがカスガ先生の人生を大きく変えるとかはないんだけどね。

この本では奥様が登場することが多いのがまたファンにはありがたいかもしれません(笑)。インタビューでちろっと紹介されてたりしていたけど、奥様も個性的な方なのですね。家での様子とか、なかなか普通の本では書けない所だろうし。各々のエピソードはフィクションなんだろうけど、実際そういう方なんだろうな〜と思いました。またもネタバレですみませんが、表題の「池」なる真緑のクリームで彩ったケーキをつくって食べるくだりが印象的でした。円柱形の、池にはめこむ型としてのケーキ、そしてケーキとしての池を食べること。日曜日の午後のお茶の時間。

なんかそういうキッチュでファンタジックな世界が村上春樹の挿絵の佐々木マキの絵をほうふつとさせて、毒消しになってくれたような感じです。癒された。先日ラース・フォン・トリアーの奇跡の海を見てしまったダメージが大きかった…仕事にも支障が出てしまったほどです。中学生か。ユリイカもしんどかったけどこれはキツかった。

ラース・フォン・トリアーは好きな監督なんだけど、この作品はさすがに見れないなと避けていた作品でした。主演のエミリー・ワトソンがすばらしいというのでおそるおそる見てみたのですが、やっぱりかわいそうすぎてつらすぎました(涙)。エミリーかわいいけどな。これはほとんどコメディだろうと震えながら見ていたのですが、おとぎ話として笑い飛ばす余裕が無い…この監督は女を虐め過ぎっていうのはわかってるんだけど、自分にはドッグウィルよりきつかった。ダンサー・イン・ザ・ダークよりも救いが無かった。主人公が自分が間違っていると思って死んじゃったからね。

見ていてついコーチングの視点というか、精神障害者としての主人公をどう扱うか、彼女の行動について分析しようとしてしまって大変でした。義姉の看護婦さんが出ていたのも大きかったけど。(この女優さん、いろんな映画で見かけてけっこう好きだったんだけど、もうお亡くなりになっているのを先ほど知ってびっくりだ。残念です。)

たぶん旦那の言うとおりにしなくてもすむやり方ってあったと思うんですね。と言ってしまえば身も蓋もないのですが。周囲の人たちのように宗教の縛りで罰したり、法の力で隔離(措置入院)するというのとも別の方法でソフトランディングというか懐柔というか、彼女の目線に合わせて軌道修正する方法はなかったのかな、などとぐだぐだ考えたりしてました。まあ実際そんなことできたら映画にならないんだけどね。

ただ旦那があんな元気になる(不自然すぎ)というなら、もうちょっと生きていてくれさえすればなと思った。ベスが重傷で命を落とす時に、自分は間違っていたの?という問いに答えてくれてたら、というのはあった。あそこで義姉さんは何で無言だったのかなあ。せめてなにか言葉をかけてやったり触れてやったりしていれば命がつながる可能性があったんじゃないかなと思ったんだけど、あの場面はつらかった。本当に取り返しがつかないという感じで。

自分としてはベスの犠牲精神?にはあまり感銘を受ける所は無く(大変なことをしてたけど果たしてそれが旦那の意思に報いていたのかすら不明なので・その件自体は彼女はやりたいことやって気が済んだんだろうと思うだけだ)、時代とか宗教とか、父親の不在とかいろいろ背景はあるにせよ、とにかくベスが死んじゃって旦那のヤンに会えなくなるというのが単純にそれだけでかわいそうで打ちのめされるばかりでした。その辺はうまい作り方だなと思った。最後の鐘が鳴った所はよくわからなかったけど。


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