蜂蜜ロジック。
七瀬愁



 向日葵と君と

一昨年あたり?にブログで載せたSSの加筆修正。
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教室の下で、向日葵が花を咲かせた。


窓を開ければ、暑いだけの風。それを避けるようにして、体を乗り出して下にある庭を見下ろした。
いつものように一人で水をやるあいつが、自然と俺の視界に入ったところで。

「青春ですかー」

浮かれた声と共に、肩に置かれた掌。

「うっせえな」
「ヒドイ。で、何見てんですか倉橋くん」
「うわ、バカ、見んなっ」

覗き込もうとする日下に慌てふためいて窓を閉めようとすれば、あっさりと押さえつけられる。
それから、ひょい、と窓から顔を出して、それから納得したように一つ頷いてすぐに引っ込めた。

「うわぁ、倉橋くん。誰見つめちゃってたの。片想いってやつ? 意外に純情なんだねー」
「アホかっ」

腕の拘束をほどいて、拳を日下へ振り上げる。
ごん、と鈍い音がした。

「いって、何すんのー。あ。…あの子、こっち見てる」
「は」

鼓動が高鳴る。
覗いた窓の下。花に包まれるようにして、見上げるあいつ。
――向日葵、みたいな。
顔が熱くなって、思わず窓を閉めた。
何だよ、何だってあんな。

あんな、向日葵みたいに笑うんだ?


「知ってた? ヒマワリって太陽のほう向いて咲くの」

唐突に日下が言った。
ちらり、とだけやった視線の中で、キレイに咲いたでっかい向日葵は確かに一斉に同じ方向を向いている。
それが日下の言うとおりなのかどうなのかなんて、俺には知りようもないけど。

「それがどーしたよ」

だから急にワケのわからない話をする日下の真意が飲み込めなくて、自然と声が低くなった。

「別にー? 」

不真面目な笑顔で真面目な声出してんじゃねえよ。
ああ、こいつホント、ワケわかんねーな。

「意味わかんね。日本語喋れ、バカ」

日下は、にんまりとして俺を見て、

「そんな口きいてる内は、教えてやる訳にはいかないね、太陽くん」

そう言って意味深な笑みを浮かべたままの悪友は、窓をこつん、と叩いて笑った。

【END】



2008年11月13日(木)
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