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 お婿にいった四+カカのお話
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   ぎむれっと-40話 -キリリク話
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2007年08月22日(水) ■
香る珈琲、そして恋 〜ぶれいぶ・ぶる 5)


コツコツと鳥がくちばしで窓を叩く音に起こされる。
先輩の部屋にいるボクのところにやってきた鳥を見て、思わずため息をついてしまった。
急な召集だが、任務ではなさそうだ。
先輩はまだ寝ていた。
ボクが帰宅するまで、どうか眠っていてください。
願うように呟いて、ボクは暗部棟へと向かった。

「待っていた、こちらだ」
捕虜の尋問を担当する、拷問尋問部隊の後に続いて、ボクは曲がりくねった道を下へ下へと降りていく。
この道筋に、記憶がある。
大蛇丸の施設から助け出されたあと、しばらくボクは捕虜も同然の扱いを受けていたのだ。
といって、そこが居心地が悪いというわけではない。
1年中安定した温度と湿度に保たれ、外部から遮断された殺風景な部屋、というだけのことだ。
一定期間、捕虜が寝起きできるようにつくられた部屋ではなく、別の部屋に通された。
別々の寝台に横たわるのは、男と女?
「あ?」
と、思わず声をあげていた。
「やはり、おまえか」
呟きを無視して、ボクは問いかけた。
「死んでいるのか?」
「いや、確保した上忍の判断で、補足に留めた」

その男女は、鳥面との任務のあとボクに声をかけてきた……つまり今回の先輩との騒動の発端ともなった、元木の葉の里の女性と、おそらくはその情夫と思われる男だった。

「なぜ、彼らが」と呟くボクに、拷問尋問部隊長がため息をついた。傍らに控えている暗部に、
「副隊長、説明してやれ」
と指示を出す。ガタイのいい強面の男は、しかしその面構えに似合わぬ笑みを寄越した。
「火影直属、暗殺戦術特殊部隊拷問尋問部隊副隊長を勤める森野イビキだ」
そのフレンドリーな笑顔に、以前、里外任務のときにイナダから聞いた話がふっと甦る。
こいつか? と思い、いや、まさか、と打ち消す、そんなボクの内心に気づかぬ風で、森野は
「これは、内々の話だということを、まず承知してもらいたい」
と言った。頷くボクに、またニッコリ。一見した外見とのギャップの大きさは、先輩に勝るとも劣らない。
「ひと月ほど前、某同盟国の某隠れ里から、緊急の連絡が入った。内容は、木の葉の里の忍の極秘写真を買わないかと声をかけて回っている輩がいる、との情報だ」
え、とボクは死んだように横たわっている男を見る。まさか、こいつ……。
「説明ははしょるが、男は、さもいかがわしい写真であるかのように持ちかけていたらしい。それで罠を張り、極秘写真をわが暗部が入手した。それが、これ、だ」
見せられたのは、あの女性が見せてくれた先輩のアカデミー時代の写真だ。
はあ、とボクは写真を見る。
しかし……どことなく、くたびれた――ボクが彼女に見せられた写真も、だいぶくだびれていたが、それとは少々違う、くたびれ方をしているように思う。
「これ、複写ですか?」
ボクの言葉に、森野は嬉しそうに頷いた。
「ああ、オリジナルの写真から複写したものだ。フィルムから焼き増すのとは違って、画像は多少劣化する」
で、とボクは森野の顔を見る。
「だが、暗部が接触した相手は雑魚で、本来の写真の持ち主までは辿りつけなかった。そこで、先日、この写真に登場している本人を含む、正規部隊があぶりだしの任についた」
え? 本人って……四代目は亡くなっているから、先輩?
「が、出立したその日に、別方面から報告が入った。木の葉の忍の写真を保有している女性と、そのバックにいる情人について、だ」
あ、とボクは森野の顔を見る。森野は、うん、と頷いた。
「後追いで、売買のルートを探るチームと、本元と叩くチームに編成を分けるように指示が出た。いちおう、根っこはひとつだろうと考えられたが、別々という可能性も否定はできないので、安全策をとったのだ」
ボクは静かに横たわる女性を見た。彼女が加担していたとは思いたくなかったが、いずれにせよ、報告を翌日延ばしにしたボクには、某かの責任があるだろう。

「調べた結果、売買はもっぱら男が独断でやっていたとわかった。女の持っている写真を一度複写して、それをオリジナル代わりに使って複写を繰り返し売りさばいていたらしい、とはいうものの、そうは売れなかったらしいがな」
「彼女のほうは、まったく何も?」
「ああ、気づいてなかったようだ」
「ボクの……術は?」
「幻術を応用した、強い暗示術だろう? あれは、なかなかのものだ。実際、男も女も、逆催眠をかけて深層を探るまで、まったく記憶を失っているのと同じ状態だったらしい」
もしかしたら、逆催眠をかけたのが、先輩? 
だが、それは聞けなかった。任務に関わることだ。聞くことはできない。
「うちの里の主な幻術使いが使う術とは微妙に違っているので、現場ではちょっとした話題になったらしい。某上忍びは、間違いなくおまえの術だと言ったそうだが」
「ボクからの報告が後追いで部隊に届いていたのなら、ボクの術だというのは帰納的必然だと思うのですが」
「それでもな、お前が幻術を使うとは知らなかったからな」
「どこにも披露したことはありません。あれは、まだ開発中のもので、記憶操作は副産物みたいなものです。本来は、まったく違った方面に使う予定の術なんで」
「そこは、詳しく聞かないでおく。まあ、そんなわけで、一応、二人を確保したので、接触のあったおまえの確認も得たいと思ったまでだ。こいつらが、接触した二人に間違いないな?」
問われてボクは、改めて二人を見る。
視認できない部分はチャクラを使って、探る。
確かに、ボクが施した術の痕跡も確認できた。
「間違いありません。施された術までをも再現しつつ同一体を作りだす術がないのなら」
「なら、間違いない」
「彼らの処遇は?」
それがボクとしては、一番気になるところだった。
「女のほうは、木の葉の息のかかった個人医に戻す。目を覚ませば、1日2日経過していることはわかるだろう。往来で倒れて担ぎ込まれた、おそらく過労だろう、というストーリーが出来上がっている」
「男は?」
「完全に記憶を消して、火の国の貧民窟にでも放り込む。あとは、本人の力量次第だろう」
嫉妬と欲が絡んだ、ほんの軽い悪戯心だったのかもしれないが、男にとっては高くついたことになる。
「ありがとうございました」
ことの顛末をいちいち、関わった忍に知らせる必要はない。たとえ暗部でも、いや暗部だからこそ、かもしれない。それを、わざわざ知らせてくれたのは、関わったのがボクで、そのボクの恋人である先輩が関わっていたからに違いない。

と、そこで、ボクは一計を思いついた。
「これで、先輩と四代目の不名誉な噂も少しは立ち消えてくれるでしょうか?」
先輩が語ってくれなかった秘密。聞かないと言ったものの、やはり気になっているそれ。
だが、言葉を口にした瞬間、ボクは背筋を粟立てた。
「おまえ、知っているのか?」
森野が今までのフレンドリーさを払拭して、ボクに迫る。
あ、やばい、と本能が告げる。拷問尋問部隊を相手に、ゲームを仕掛けるものじゃないと。
ボクが殺気を向けられて、一瞬、のまれるなど、先輩以外にあってはならないのに。
ボクもまだまだ修行が足りないと思いながら、両手を上げた。
「すみません、知りません。ただ……先輩が気にしているようで、だから、ボクも逆に気になってしまって」
森野は隊長を振り返った。隊長が、渋い顔をしたまま、しかし、どこか笑いを堪えている顔で頷く。
「これは、おまえには決して知らせるなと、言われている」
言われている? だれから? と聞こうとしてやめた。
「だから、話すのは俺の一存だ。俺の姿が木の葉の里から消えたら、個人的制裁を加えられたと思ってくれ」
恐ろしい内容を笑顔で告げた森野は、ふっと息を吐いた。
「某木の葉の里の忍は、下忍になっても夜尿症が治らず、師に毎夜、トイレに起こされていた」
え? えっと……。
先輩が下忍になったのは5歳で、その歳では腎臓機能が充分に完成していないこともなきししもあらずで、だから……トイレ?
「真相は、それを口実に四代目が戦地でもその下忍を、自分のテントに寝泊りさせていた、ということだ、わかるか? その意味が」
排泄物の匂いというのは、やっかいだ。だから、野生の生き物は排泄場所と、休息のためのテリトリーを明確に分ける。そして他の動物の排泄物の匂いにも敏感だ。
つまり、忍が野営をするとき、第一に気をつけるのは火の扱いなのだが、次に大切なのが排泄物の処理なのだ。
でも、個体差があるとはいえ、他の運動機能に遜色がなければ5歳で夜尿症は……あるのか?
あ、いや、違うか。それを口実に、と森野は言った。
「口実?」
「忍界大戦のころの殺伐とした時代だ。男だろうが、女だろうが、子どもは例外なく性的陵辱の対象になる。それも、敵だけでなく、場合によっては身内からも」
あ、とボクは思わず叫んでいた。
「アカデミーを卒業し、いまとはシステムは違うが下忍選抜にも合格した忍だ。幼児だから、と、里内任務ばかり割り振るわけにはいかない。でも、幼児は幼児だ、子どもだ。大人の欲望の捌け口にしていいわけがない。守るべき部分は守ってやらねばならぬ。だからこその、四代目の苦肉の策だったのだ」
「えぐい、ですね、その噂、流したヤツ」
森野は、ふんと肩をすくめた。
「今までだったら、あいつは気にしない。どんな噂が流れようが、笑って取り合わなかった。最近、変わってきた。たぶん、おまえの影響だろう」
ボクは、ツンと痛くなる鼻の奥を意識しながら、森野を真似て肩をすくめる。
「そんな噂ぐらいで変わるような安い気持ちは持ち合わせてない……って、言ってやりたいです」
「はは、おまえも苦労するな」
肩を叩かれ、思わず涙がこぼれそうになったのは、内緒にしておきたい。