萬葉集覚書

2006年12月14日(木) 7 秋の野の

秋の野の み草苅り葺き 宿れりし 宇治のみやこの 仮廬(かりいほ)し思ほゆ


過ぎしあの秋の日に下草を刈って屋根に葺いた、宇治の行宮の仮屋の一夜が思い起こされることよ。



額田女王の歌と伝えられている歌で、額田女王の歌の初出となります。
およそ数え切れぬほどの歌人が登場する万葉集の中で、屈指の歌詠みとして名を挙げても異論がでないだろうと思われる人です。

この歌は、斉明天皇がまだ皇后として舒明天皇に寄り添っていた頃、狩りに行ったか紅葉を見にに行ったか、宇治の野原に一夜の仮屋を立てて仲良く遊んだ日の思い出を、天皇に代わって額田女王が詠ったものとされています。
あるいは、これの元となるような歌を斉明女帝自らが詠われていたのかも知れませんが、今日に残るのはこの歌のみです。

宮廷歌人というのは、当時の記録係を兼ねていたような感があって、様々な事象や事柄、思い、果ては貴人に成り代わってその心を詠い上げるということまでやってのける技能集団でした。
後の柿本人麻呂や山部赤人などの例を挙げるまでもなく、額田女王自身が不世出とも言えるほどの才能溢れる方でしたから、その作の多くはこうした宮廷歌でした。


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