萬葉集覚書

2006年12月13日(水) 6 山越しの 風を時じみ

山越しの 風を時じみ 寝る夜おちず 家なる妹を 懸けて偲ひつ


山を越えて吹きつける風は止むことを知らず、夜毎に家に居る妻を思い出してしまう。



5の長歌に応じた反歌です。
いいたい事はこれで十分伝わってくるんですが、何が不足だと思ったんでしょうか?
万葉の時代は、旅に出ることが即ち今生の別れになる場合がありました。
もちろん、陸路を行く場合ですらその危険性は日常生活の比ではなかったわけですが、内海とはいえ海を越えてゆく旅というのは、危険性がとんでもなく跳ね上がったものでした。
現代の言葉で餞別といえば、これで土産でも買ってきて、というような軽い気持ちで渡すものですが、当時にも餞という言葉があって、それには「うまのはなむけする」と訓が付いていました。
もう会えないかも知れないから、付いて行けるところまで一緒に行って、その間馬の手綱を取ってあげる、という強い気持ちが込められた言葉でした。
また、旅に出るに際しては、残る人たちに形見分けをしてから出発するというのも、当然のように行われていたことでした。

それだけの危険を冒して行く旅ですから、長歌が冗長になったとしてもまぁ、割り引いて考えてあげるべきなんでしょうね(笑)


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セレーネのためいき

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