カゼノトオリミチ
もくじ|過去|未来

時間の糸は 生きてきた分だけ からみつく 手も 足も 繭玉のようになり
大切な日々を こんなふうに過ごしていいはずもなく
口だけ達者な テレビのボタンを プツリ 消したい
日だまりの風が ほんの少し 秋で こどものトカゲが じっとしているのを 見ている
大切な日々を こんなふうに過ごしていいはずもなく
今朝 玄関の小さなアリたちを まとめて ホウキで集めて捨てました そして 新しい秋の服のことを 考えている
それから ぼんやり思い出ている むかし 本の中に書いてあったこと
生きていても いいですか と いったい誰に 聞いていたんだろうか と
かたわらで眠る 老犬が ぶるぶるっと 身震いをする 絡まったままの 糸はほぐれず
季節は今年も 冬へとむかう 繭は ながくながく 糸を ひきずったまま
natu

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