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ブレンド - 2005年05月12日(木) 彼はコーヒー豆屋さん。 ひとりでふらっと入ったバーのカウンターで偶然隣り合わせになって意気投合。その日の帰り際、少しだけ濃厚なキスを店の外の階段でした。 そんなひと夜の出来事も記憶の隅の方にひっそりとなりを沈めたある晴れた日の午後、彼の店の近くに行く用事があったからちょっと立ち寄ってみた。 ガラス張りの店内を覗くと、隅のスツールで何やら読書中。 入り口の扉を軽くノックして、顔をのぞかせる。 「こんにちは」 「いらっしゃい……あ」 本から顔をあげた彼の目が丸くなる。 すぐに思い出してくれたことがちょっと嬉しかったり。 「コーヒー買いにきた」 「おお、ありがと。こないだと同じのでいい?」 たった一回会っただけで、しかも2ヶ月の前のことなのにちゃんと覚えてるところがさすがだなー、と思わず褒めると 「そりゃ覚えてるよ」 と笑顔を向ける。 でもそれ以上は何も言わない。 こういうのっていいな。 何も言わなくてもわかってるって空気が心地良い。 指定したブレンド用の豆を丁寧に一種類ずつ秤にかけていく手際の良い手元を見てるうちに、あの夜のことをリアルに思い出しそうになってしまう。だめだめだめだめ。 …あぁでもほんといい香り。 レジカウンターに頬杖ついて、目を閉じて計量される豆のパラパラという音を聞きながら、芳醇な香りに思わず目を閉じて深呼吸したそのとき、 「素敵な酔っぱらいだよね」 と彼の声。 「え?」 目を開けるとミルに豆を入れながら、こちらをちらりとも見ずに作業を続けるうしろ姿。 うわーちょっとふいをつかれた。どきどきしちゃったよ。 「はい、お待たせ。200ね。すぐ飲まないときは冷凍庫入れといてね」 挽きたてのコーヒー豆を受け取りお会計をしてると、ドアベルの音と共に次のお客さま。 ちらっと彼の顔を見ると、しっかり目が合ってしまった。 顔にね、書いてあったよ。 残念。またね。 たぶん私の顔にもおんなじこと書いてあったかも。 何が「またね」だかわからないけど、何だか「またね」な気分だった。 いろんな気持ちがいいブレンド具合。
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