歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2008年10月28日(火) 謎の入れ歯名人!?について

関東方面の方はあまりご存じない方も多いとは思いますが、関西方面では知らない人はいないというくらいの人気長寿番組があります。探偵ナイトスクープという番組で、既に20年以上続いている人気番組です。
この番組は視聴者から寄せられたユニークな依頼に基づき、番組が芸人の探偵を派遣し、視聴者とともに謎や疑問を解明していくというコンセプトの番組で、試行錯誤を重ねながら笑いあり、涙ありの番組です。

それはともかく、先週の番組のある依頼には笑ってしまいました。その依頼とは、入れ歯に関する依頼だったのです。

依頼者の職場は公民館で、管理人のおじいちゃんのことで調べて欲しいとのこと。おじいちゃんは春ごろまで、前歯が1本無かったが、歯医者に行った形跡がないのに、ある日突然立派な歯が入っていた。本人に聞くと、自分で作って入れたらしい。どうやって作ったか、詳しく話してくれないが、そのうち入れ歯は2本になってしまった。本当に自分で作っているのか、職員全員が気になって仕方がないので調べて欲しい。できれば、実際に作る様子を見学したいというものでした。

実際に番組をみていると、管理人のおじいちゃんは上顎が総入れ歯で、総入れ歯の人工歯が2本脱落していたのです。この人工歯を歯ブラシの白い柄を切り取り、自らグラインダーを駆使して加工し、それを入れ歯に瞬間接着剤で接着していたということが放送されていました。

実際に映像を見てみると、素人としてはかなり念入りに人工歯を加工していたように思います。特に、取り扱いが難しいグラインダーを器用に使い、歯ブラシの柄の一部から歯の形に削っていく様子はなかなかのものでした。出来上がった歯の色は他の歯の色とはことなりかなり白い色調ではありましたが、歯のなかった入れ歯に取り付ければ、一般の人からみれば急に歯が生えてきたように見えるかもしれません。

ただ、歯医者として注文をつけさせてもらえれば、実際の入れ歯に使用する人工歯とは全然違います。まず、形態そのものが非常に雑でした。もっと湾曲して欲しい所、隣の歯とバランスを取らないといけない場所、かみ合わせとの関係などを見ていると、入れ歯の人工歯としては不十分としかいいようがありません。色も妙に白く他の人工歯と比べ浮き上がっているのは如何なものかと思います。
また、作った歯を入れ歯本体に瞬間接着剤でくっつけていますが、この接着力も長続きしません。
歯医者も入れ歯の修理に瞬間接着剤を使用することはあります。しかしながら、これはあくまでも一時的なもので、きちんとした修理は専用材料で行わないともちません。人工歯も同様です。専用の材料できちんと歯を入れ歯にくっつけないと直ぐに取れてしまう可能性が高いものです。
やはり餅は餅屋。専門的な知識、技術、経験を持った専門家でないと入れ歯にふさわしい人工歯は作れません。

番組では、管理人のおじいちゃんの器用さを称えていましたが、僕自身、危険なグラインダーを用いて人工歯を入れ歯にくっつける暇があれば、歯医者に行って入れ歯に合った人工歯をつけてもらった方がはるかに質の良い入れ歯になるのではないかと感じた次第。


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