| 2008年10月10日(金) |
ノーベル化学賞のおこぼれ |
昨日、ノーベル化学賞の発表があり、前日のノーベル物理学賞に続き、日本人の下村脩さんが受賞されました。(南部さんは国籍が既に米国籍になっていますが、一応、出身が明らかに日本なのでここでは日本人ということにさせてもらいます。) 今回のように日本人が同時に4人受賞するようなことはノーベル賞が制定されて以来、初めてのことだと思いますが、ノーベル賞に4人の日本人が同時に受賞されることに、純粋に日本人としてうれしく、誇りに思います。
さて、今回のノーベル化学賞ですが、僕にとって非常に印象深いものとなりそうです。それは、僕が歯医者をする前に某大学大学院研究室に在籍していた時に行っていた仕事の一部が今回のノーベル化学賞の受賞理由になっていたからです。 今回のノーベル化学賞の受賞者は3人います。受賞者一覧はこちら。中でも、受賞者の一人であるロジャー・Y.ツェンが考案した実験装置は、まさに僕が研究室で用いていた装置のオリジナルになっていたものだったからです。 今回のノーベル化学賞では、目に見えない分子にクラゲ由来の蛍光物質を結合させ、可視化することでカルシウムイオンの動きを捉えられるようになったことを評価しています。下村さんは、このクラゲ由来物質であるGFPの発見者として、ロジャー・Y.ツェンはこの物質を用いて様々な目に見えない分子を測定する技術の確立者として評価されたのです。
僕が研究室に在籍していたのは今から10数年前の話ですが、ツェンの仕事は既に研究仲間の間ではノーベル賞級の仕事だという評価が一般的でした。それくらい画期的な仕事だったわけですが、ノーベル賞が今頃になってから与えられるというのは、正直言ってかなり時間がかかったなあというのが正直なところです。 しかも、この仕事はどちらかというと化学の仕事というよりも、医学生理学分野の仕事に近い仕事です。下村さんは、今回の受賞のインタビューの中でノーベル医学生理学賞の受賞ではなく、化学賞での受賞が以外だったことを述べておられましたが、僕も同感です。 ただ、ノーベル賞の選定委員会は時間をかけ、物理学、化学、医学生理学での実績を綿密に検討することで有名です。今回の選考も慎重に慎重を重ねた結果のことでしょう。
それはともかく、今回のノーベル化学賞について、僕は密かにうれしく感じます。僕の仕事の評価ではありませんが、ノーベル賞の価値のある仕事に少しでも関係していた仕事をしていたことに、僕は密かな喜びを感じます。ノーベル賞の仕事のおこぼれに預かったわけですね。研究室での仕事はつらいことばかりでしたが、何だかその時の仕事がほんの少し認められたような気がしてなりません。今回のノーベル化学賞の受賞者を、他人事ではなく自分のことのように称えたいと思います。
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