歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年07月24日(火) お硬いのがお好き?

「歯ブラシの毛は硬いのがいいのでしょうか?」
歯科医院に来院される患者さんからしばしば尋ねられる質問です。歯ブラシの毛は、歯ブラシの最も重要なパーツですが、患者さんの中には意外と無頓着な人、無関心な人が多いように思います。

歯ブラシの毛は硬いものから柔らかいものまであります。ある会社の歯ブラシでは数種類の硬さの歯ブラシの毛が用意されており、それぞれ、患者さんの口の中の症状に応じて選択できるようになっています。本来、患者さんの口の中の状態に合わせて歯科医院でどの歯ブラシが適切なのか確認してほしいのですが、僕の今までの経験から、どんな歯ブラシの毛の硬さが良いのか書いていきたいと思います。

まず、歯ブラシの毛が柔らかいものは、基本的に歯周病に罹っている患者さんに適しているといえるでしょう。歯周病に罹っている患者さんの歯肉は少し歯ブラシで触れただけでも血が出やすいもの。けれども、血が出やすいからといって歯磨きを怠っていると、歯周病は進行し、血がより出安くなり、口臭が伴います。挙句の果てには歯が動揺し、抜けてしまう結果となります。
歯周病は、歯に付着する歯垢が原因であることが科学的に証明されています。歯磨きの仕方により歯周病の進行を止まるかが決まるといっても過言ではありません。
歯磨きの際、なくてはならない道具が歯ブラシであるわけですが、歯周病の患者さんの場合、使用する歯ブラシの毛が硬いと歯垢を除去するよりも歯肉を傷つけてしまいます。歯肉に傷をつけずに歯についた歯垢を取り除くためには、柔らかめの毛のある歯ブラシを使用し、歯磨きを丁寧に行う必要があります。

ここで問題となってくるのが、歯ブラシの毛の柔らかさに対する違和感でしょう。歯ブラシの毛が柔らかいと、“コシがない”“磨いた気にならない”と訴える方がいるものです。その疑問に対して、僕はこのように答えます。
“問題ありません”と。

某歯科大学の歯周病の研究者の調査で、毛が硬い歯ブラシを使用した人と毛が柔らかい歯ブラシを使用した人の歯垢の除去具合を調べた研究があるのですが、結果は同じだったのです。一見すると、毛が硬い歯ブラシの方が歯磨き効果が高いように思うのですが、実際のところは柔らかい歯ブラシと同じくらいの清掃効果だったのです。

愚考するに、歯磨きの場合、歯の汚れを取るポイントは歯ブラシの毛の硬さ、柔らかさではありません。それよりも歯磨きにかける時間が大切です。歯磨きが出来ていない、歯周病の患者さんの場合、実際に歯磨き時間を計測してみると1分も罹っていないものです。一回の歯磨きに1分以内しか時間をかけていないようでは時間が少なすぎます。
僕は患者さんに対し、一回の歯磨き時間の目安として最低ボクシングの1ラウンドを目標にするよう指導しています。すなわち、3分以上です。3分という時間、意外と長いものです。実際にボクシングの試合を見ていると、1ラウンドの攻防というのは非常に濃いものがあるのではないでしょうか?ついつい、時間を見ているとまだ2分しか経過していないなんて覚えがある人は少なくないと思います。
実際に自分が1度の歯磨きに要する歯磨き時間を計ってみてください。3分に満たない場合は、歯磨きが不十分です。僕の歯磨き指導は歯磨きに3分以上かけているかどうかを重要視します。
3分以上の歯磨き時間をかければ、歯ブラシの毛の硬い、柔らかいは関係ないものなのです。どちらのタイプの歯ブラシも充分に歯についた歯垢を取り除くことができます。しかも、歯肉を傷つけないという利点を考慮すれば、歯ブラシは毛の柔らかいものを選択した方がいいと思うのです。

実は、歯肉が健康な人、すなわち、歯周病に罹っていない人の場合の歯ブラシも同じことがいえます。歯肉を傷つけたり、必要以上に歯を傷つけないためには、歯周病で無い人も柔らかめの歯ブラシを使う方がいいと僕は考えます。

“歯ブラシの毛は硬いのが好き!“という気持ちはわからないではないのですが、歯ブラシの毛に関しては柔らかいものを勧めたいと思います。但し、具体的にどのような歯ブラシが合っているかどうかは、かかりつけの歯医者さんで診てもらった方がいいでしょう。


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