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近所の人が山で採ってきたシャンピニョンを分けてくれた。日中は半袖で過ごせても秋の気配は着々と忍び寄っているのだな。ここでは"Coulemelle"といって日本ではカラカサタケというものらしい。生では香りはないが、焼くと匂ってくる。バター醤油でいただいた。野生のシャンピニョンなんてすごい贅沢。リュカは"肉じゃないのに肉っぽい"という見た目と食感がそうとう気に入ったらしい。
「よし、僕らもシャンピニョン狩りに山へ登ろう!」
「いいよ。わたしもちょうど栗の木探したかったから」
ということで、自宅の目の前に聳え立つ山に登った。地元の慣れた人々は、必ずバスケットを持参する。そうして摘んだ物を入れて歩けば、自然とそこら中に菌がばらまかれてまた生えてくるんだそうだ。2時間ほどで頂上まで登りつめたら休憩。町を見下ろしながら熱いカフェを飲む。しみじみここへ来てよかったと思った。この町が好き。1年暮らしてそう思う。暮らしは町の中心を流れる川のせせらぎと共にある。いつでも山を歩けていつでも地中海を見られる。いつでもイタリアへパスタを食べに行ける。美味しい野菜や果物が豊富に採れる。空気が美味しい。人々はとても良くしてくれる。友達と呼べる人もできた。ここへ来るためのビザを申請した時に書かされたモティヴェーション・レターに"一年を通じて南仏の四季を味わいたい"と書いた。それも十分過ぎるくらい味わい尽くした。18歳の時に手に取ったピーター・メイルの"A year in provence"の世界はまだここに健在していたのだった。
結局リュカは食べられそうな気がしないシャンピニョンをごっそり狩り、わたしは一本たりとも栗の木を見なかった。4時間山を歩き回った心地良い疲れで寝床に就くやいなやぱったりと眠りに落ちた。