My life as a cat
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2016年02月02日(火) Babettes gæstebud

料理の腕があがったと思うのは冷蔵庫の余りもので適当に作ったものが美味しかった時だ。炒めた玉ねぎ、キャベツ、じゃがいも、にんじんを野菜の屑で取ったスープで煮て、牛乳を足したら美味しいスープの出来上がり。リンゴの芯から起こした天然酵母で焼いたミルクブレッドを添えたら立派な朝食の完成。そして自分が幸せ者だと思うのは、自分の作った料理がこの世でいちばん美味しいと思っていることだ。自分の舌に好みを伺って作るのだから当然といえば当然だが。野菜の栽培、買い出し、調理すべての過程をこの目で見ているという安心感もあって美味しく食べられるというのもおおいにあるが。

″Babettes gæstebud(邦題:バベットの晩餐会)″という映画を観た。静かで清らかで心洗われるような映画だった。何もかもが過剰で、うっかりしていると永遠にもっともっとと競争の渦に呑まれてしまいそうな社会に生きていると、欲のない世界が眩しく思える時がある。こんな地味な映画が傑作と賞されるのは、デンマークという国が福祉国家である所以だろうか。パリから来たオペラ歌手のパパンとフィリッパの歌のレッスンで、モーツァルトの″ドン・ジョバンニ″の掛け合いのシーンはうらぶられた海辺の村一面に一斉に花が開くように甘美だった。二人の心のリズムがぴたりと通じあったかのように見えた。それなのに、フィリッパが思いとどまり、神のみに仕えることを選んでパパンに別れを告げたのは酷く残念だった。神とパパンの両方に仕えちゃダメなの!?全てがストイックなプロテスタントの村に嵐のごとくやってくる飲めや歌えや愛せや(マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!だね)のカトリック教徒達はちょっと能天気な感じに見えて可笑しかった。人はこの世で与えたものしかあの世に持っていくことができないそうだ。

しかし、いつも不思議に思うのは、スカンジナビアと呼ばれる場所は何をとっても歴史や生活の染みついた感じがしない。北欧雑貨は日本でも人気があって、それなりにいいと思うが、どこか永遠に手に馴染まないように感じる。風景や家屋はのっぺりと見えて、全て映画のセットのような違和感を漂わせる。この映画の中の風景も、どこか不自然に見えて、″Wallace and Gromit″の粘土細工を思い出させた。


Michelina |MAIL