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運転免許証の更新に出向いた。いつか男友達がわたしの免許証を見て、
″This is the sexiest driver's license I've ever seen"
と言ったが、誕生日が真夏なもので、何度更新しても露出度高し。この免許センターに来るたびに初めて免許を取得した日のことを思い出す。わたしは長髪をきれいにネットに入れておかっぱのかつらを被っていたのだった。免許証のためにではなく、その頃気に入って、ドレスのごとく被っていたのだった。ところが筆記試験中に係員が近づいてきて耳打ちする。
「あのぉ、変装は禁止となっていまして、そのかつら取って写真を撮ってもらうことになるかもしれません」
これを取ったらネット頭だ。咄嗟に、
「変装じゃありません。いつもこれ身に着けてますから!」
と言い張りなんとか許してもらえた。無事に免許をもらって帰り道、強風に煽られ、スカートの裾と頭のかつらを抑えて必死に駅まで歩いたのだった。
更新料3000円の収入印紙を購入して申請書に張り付けて、すぐにゴミ箱に行く冊子をもらって30分の中身のない形式だけの講習を受ける・・・ってどんなに時代が流れても、免許センターだけは変わらない。免許証にICチップが埋め込まれれるようになったことくらいか。古い免許証に穴をあけてもらって、持ち帰るのは女性ばかりだ。わたしもその女性の列に並んで古い免許証をもらった。
帰り道、向かい側から歩いてきてすれ違ったマダムに思わず振り返る。推定50代だが、ショートパンツから延びる脚は綺麗にブロンズに焼けていて、ライザップの広告塔のような見事な引き締まりよう。胸の大きく開いたシャツにジャケットを羽織り、背筋をすっと伸ばして脇目もふらず真っ直ぐ歩いていた。なんて美しいのだろうと見惚れた。顔の皺やシミは自然と増えていく。注射を打ったり整形したりしてまで若い見た目を保たなくたっていいじゃない、と思う。でも、背筋はその人の人生に対する姿勢をそのまま映し出すかのようだ。いつかそのくらいの年齢に差し掛かるとき、痛々しい若作りなんかではない、内側から滲み出る若々しさを漂わせるような女の人になっていたい。