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夕暮れ時のバスの中、飲食はダメだというステッカーがそこらじゅうに貼られているというのに、ドライバーがパリパリ、ポリポリと白い煎餅のようなものをぷくぷくした太い指でしっかり握り締めて、あまりにもハッピーな表情で齧り続けていた。客はみんな空腹を堪えて家路についているというのにな。
夜にアレックスと彼のアフリカンの同僚エディとディナーに出かけた。
「ガールフレンドできた?」
わざとかまをかけてみる。
「残念ながらシングルなんだ。君のような綺麗な女性を探してるところなんだ。」
アフリカ男の典型的ハンティング技にアレックスはただにやにやと見守っている。
「クリスチャンは嘘ついちゃいけないんだよ。」
と言ったらやっと白状しはじめた。写真を見せてとねだると、顔を赤らめて財布から小さな証明写真を取り出した。おでこの妙に広い小太りのブラックガールだった。エディよりは幾分肌の色が明るい。
「い、色白ね。」
そこを褒めるしかなかったが、彼らにはそれは最大の褒め言葉らしい。大切そうに財布にしまってあったように見受けられたその写真は、残酷にも愛だの恋だの彼が語ると全てまやかしのように聞こえるロマンス話に夢中になったエディが無造作に置いた熱い皿の下敷きとなっていた。