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早朝マーヴに会いにいった。元気がない。わたしがここを去るのが辛いという。大人の男はそんなことは口に出さず、態度だけで胸を締め付けるのに、子供みたいにしょげてしまうマーヴは幼い。
午後、アレックスが空港までのタクシーを呼んでしまうと、わたしも気持ちが沈んできた。ラストミニッツになって急に、火曜の夜は僕が家に着くの待ってればいいじゃん、空港まで送っていくよ、と言い出した。わたしが国際空港に着かなければいけない時間にアレックスがパースの国内線の空港に帰ってくるから危うい。首を横にふった。
“Ok, give me a hug”
と力強くハグした。彼とは何度も別れたけど、今回のは特別な別れのような気がした。アレックスはマーヴとは全くタイプが違う。気が強くてきっぱりして、歯の浮くようなセリフは言えない性質だ。それでもタクシーに乗り込む前にもう一度振り返って手を振ったりした。
家の中が急にがらりと静かになって、ドラエモンを失ったのび太君のようになった。寝転がって本を広げて自分の世界にこもっていても、隣に人の気配があるのとないのじゃ大違いだ。スリランカ食堂に夕飯を買いに歩いた。マーヴが毎日愛していると言ってくれる。2年前と一寸も変わらず、同じ熱をこめてそう言ってくれる。だから、一緒にいられなくてもわたしは孤独じゃない。でも頼れる人はいない。これは子供の頃からのコンプレックスだ。強くもないのに、強くあるように扱われてきた。妹と5つも離れているから仕方ない。だからアレックスのようにテキパキと仕切ってくれて、ただ後ろに着いていけばいい頼もしい存在にほろりとよろけてしまう。良い所だけ両方欲しいとワガママに思ってみたりもする。