My life as a cat
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2007年04月07日(土) Halfway back

とうとうマーヴの部屋は空けることになって、静まりかえった部屋でお兄ちゃんとふたり、ぼそぼそと大した量でもない彼の持ち物をまとめた。服でも何でも質の良い物がひとつだけあればいいという人で、浮気性な雰囲気のないそういう品の良さが好きだった。一緒に過ごした部屋の景観がみるみるうちに変わっていくことにどうしようもなく心細くなっていると、いつも必要最小限しか喋らないお兄ちゃんが、わたしの生い立ちを調べるように色々と質問をしてきて、それに答える度にずっと知りたかったことがやっとわかったというような満足げな表情をするのでそれが少し可笑しくて、雁字搦めだった精神が少しほどけた気がした。無言で強く信頼し合っているような男くさいこの兄弟の間には「女」の話題などないのだろう。けれど、どうしようもないくらいシャイな弟がはじめて家に連れてきた女が気になって、それでも突っ込んで聞くことができずにいたのに違いない。

もう一息で終わるという頃、ふと顔を上げるとお兄ちゃんが水を飲みながら窓の外をぼんやり眺めてぼそりと、「あぁ、つかれたな」とつぶやくように小声で口にした。それは人生のあらゆることにつかれてしまったのではないかと想像してしまうくらい重く響いて、人命を預かるプレッシャーの大きい仕事と自分の築いた家族と弟の狭間で責任感ばかりに生きてしまっているのではないかと本当に可哀そうになってしまった。

わたしがキープすることになった、ゴロゴロと寝そべってお菓子を食べたり、音楽を聴いたり、あらゆるふたりの時間を刻んだ大きなベッドに横になったら、マーヴが半分帰ってきたような気がして久々にあたたかい眠りについた。


Michelina |MAIL