My life as a cat
My life as a cat
DiaryINDEXpastwill


2006年06月14日(水) Cat killers

夜更けまで鳴り止まぬワールド・カップの喧騒をぬってひとり家に戻ると、ダレンと3人のブラジリアンがテレビの前で興奮気味に観戦していた。この時間になるとお腹を空かせてふらりと現れるトロイをフィードしていると、ブラジリアン達が一斉に「フィードするな!明日オマエの猫を見かけたら殺してやる!」と胴間声をあげた。

3人のうちのひとりは名前ではなく”ブラジリアン・ガール”と呼ばれて、細いのに肝心なところはしっかり丸み帯びているセクシーな体つきで欲望に奔放、彼女に涎を垂らす男とひょいっとベッドルームに消えてゆくようなコなのだけれど、気持ちが悪いのは彼女が一番欲しているのはダレンだということ。彼に擦り寄っては他の男性には絶対しない毒があるのに甘いような満面のスマイルを向けて、色目を使って、わたしがちょっと席を外した合間に彼の脇にピッタリと座っていたりしたこともあったし、彼女がわたしを一切無視することからもそれは明らかだった。

一度彼女が”I hate cats”と言ってトロイを足で踏み潰そうとしているのを目撃した人がいたが、「殺してやる!」はない。頭に血が上って、「トロイは食べ物をねだりに来るけど盗んだりはしない。人の食料を勝手に食べてしまうあなた達は猫よりもよほど迷惑な存在じゃない。」という言葉が口から出かかった。もう殆ど彼らが盗みを働いていることは明らかだったけれど、決定的な目撃者がいなくてオーナーのステファンも頭を抱えていた。しかし更に堪えたのはダレンが「カーペットを汚しちゃうからフィードしちゃだめだよ」と言って彼らの前でわたしの味方をしてくれず、ブラジリアン・ガールの勝ち誇った顔にすっかり見下された気がしてしまったことだった。彼がそう思っていることは以前聞いたし、それは二人きりの時に言えばいい。それくらいのデリカシーはないのかと不信感でいっぱいになった。

次の日トロイはやってこなくて、不安になってうろたえたけれど、その翌日また蚊の鳴くような小さな声でなきながらふらりと現れた。そっと抱き上げたら涙が出そうになった。ブラジルが負けてしまったら彼らは腹癒せにトロイを殺してしまうのではないかと恐くなって、しばらくはここに来ちゃダメと言い聞かせた。


Michelina |MAIL