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もう何本もグレッグと美味しいワインを飲んだのに、先日たまたまシェア・メイトのダレンと飲んだ帰り道、何故か急に彼を好きだと思って"I like you"などと言いながら勝手に部屋まで着いていってしまった。"プリンス"といった感じの見た目で、立ち振る舞いも絵に描いたようなイングリッシュ・ジェントルマン、ワーキングホリデーと言いながら日本人のそれとは全然雰囲気が違って、言葉の壁の無い彼は、いきなりセント・ジョージ・テラスの高層ビルに本業アキテクトの仕事をゲットしてきて、パリッとシャツを着て通っていて、みんなちょっと風が吹けばそちらへ流れていってしまうような"ラテンノリ"のこのシェア・ハウスでは浮いていた。素直にステキな人とは思ったけれど、どちらかといえば何か聞けば誠実に答えてくれる、何か頼めばちゃんと面倒をみてくれるただいいお兄ちゃんのような存在だったのに、自分でそれを突然壊して相手に近寄って面食らわせたのだから、もしかしたら逆に遠い関係になってしまうのかもしれない、と朝になってまだアルコールの抜け切らない重い頭を抱えて落ち込んだ。一日しっかり落ち込んで、まぁいいや、好きだと思ったことは本当なんだから、どの道じわじわと駆け引きをしながら上手に自然に相手に近寄るなど性格的に出来ないのだ、仕方ないわ、と開き治った。
夕方シェア・ハウスに遊びに来たリサとコーヒーを飲んでいた。北イタリアの出身で背もすらりと高くダーク・ブラウンのたっぷりとしたまつげにダーク・ブラウンの瞳が大半を占める目が魅力的な彼女を見るや、シェア・メイトの男の子達は紹介してと言わんばかりにいつもよりわたしに優しくなった(いつもは冷たいとは言わないけどさっ)。そのうちダレンも帰ってきて、リサを紹介し、空腹だったわたし達はさっさと手を振って出てきてしまった。レストランへ向かう途中、何も知らないリサが突然「ねぇ、ダレンはあなたのことが好きだと思うわっ。ずっとあなたを目で追ってたもの。」などと言い出した。驚いて「本当?わたしも彼が好きなのよ。」と答えると今度はリサが驚いた。「Wow! You are so lucky!! 何か話したそうだったから戻ってみたら?」と言われ、彼女を残して走って戻ってパソコンの前にいたダレンに近寄ってみると、突然「今夜会える?」との誘い。うわぁ〜っと喜んでまた走ってリサのところに戻った。
マレーシアン・レストランで、リサは欧米人らしい得体の知れないワガママな注文をして中国人達を困惑に陥れ、出てきたヌードルに首を傾げながら、恋愛や社会のことについてあれこれと自立に満ちた強気な発言をした。わたしはひらすらその逞しさにうぅんと唸るばかりだった。
家に戻るとダレンが待っていた。何をするわけでもなくテレビの前であぁだこうだと意見をぶつけあって、いつもと変わらないのに少しだけ近くなったようなほんのりと甘い夜を過ごした。
わたしは一体誰が一番好きなのか。誰も大して好きではないのか。またビザの問題が近い将来に待っているだろうことを考えては気が遠くなって、みんな時間が経てばただの思い出になってしまう刹那的なものなのだと思ってしまう。