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| 2006年03月29日(水) |
Tannhäuser |
ベッドに横になっていたらマーティンがリビングでかけているヴァーグナーが聞こえてきて咽び泣いてしまった。お互いが外国人で生活はいつも不安定だったけれど、マーティンとミケはわたしがはじめて自分で選んだ家族のように思っていた。前途多難に思えて、一生一緒にいようという決意などなかったけれど、かといって別れを想像しただけでいつも泣いてしまっていた。
夜中にアイスクリームを買いに行く途中なんとなくマーティンに聞いた。
「もしオーストラリアをでていきゃなきゃいけなくなったら悲しい?」と。
「うん。少し。」
「少しだけ?」
「うん。だって僕は故郷にいた頃欲しい物が手に入らなかったことのほうが多かったから慣れてるんだ」
と言われてはっとした。
彼は夢や希望に溢れているけれど、同時に現状を素直に受け止めることも出来る。お金を取っておくということをあまり知らなくて、あれば使ってしまうから何かあると素直に貧乏になってしまう。そしてそんな時もお酒ばかり飲んでいて、この人と家族を持つことができるのだろうかと不安にさせられたけれど、きっと彼は既にわたしよりも沢山我慢をしてきたのだ。わたしは欲しい物は何でも手に入るのが当たり前だと思って育ったから、それが手に入らないと泣き喚く。マーティンに「絶対ミケリーナの未来には沢山いいことがあるから、それだけを想像するんだよ。絶対大丈夫だよ。Trust me」と言われた。彼よりもよほど安定した幸せを分けてくれる人がいたかもしれないけど、やっぱり彼とでなければ得られなかったことが沢山あると思った。