プラチナブルー ///目次前話続話

リストバンド
April,9 2045

18:00 トッティの店

「ところでヴァレン、アンタのその大きい紙袋・・・一体、何を買ってきたのよ」
「えへへ、これはね、防犯グッズよ」

ヴァレンはブラッドが足元に置いた紙袋から、一つずつ手に取り

「これはね、防弾チョッキでしょ、これは催涙弾・・・そして、これは6連発式の銃・・・」
「なんすか、これ、戦争でもおっぱじめるんですか?」

驚くブラッドに、3人分あるから、と微笑むヴァレン。

「うわっ、重い・・・」

防弾チョッキを手に取るとブラッドは珍しそうに手に取ってみている。

「はあ・・・」

トッティは、カウンターに両手を突き体を支えるようにして頭を垂れてため息をついた。

「ヴァレン・・・アンタ、こんなガラクタ買って来てどうするつもりよ」
「ええ〜ガラクタだなんて、トッティったら、酷い」

「はあ・・・」

再び、大きなため息をつくと、トッティは防弾チョッキを眺めているブラッドに羽織るように云った。
そして、ヴァレンには6連発式の銃を持たせた。

「じゃあ、ヴァレン、その銃でブラッドを撃ってみなさい」
「ええ? 大丈夫かしら・・・ううん、大丈夫よね、防弾チョッキっていうくらいだから」

「ブラッド?この世に言い残しておくことはない? たぶん貴方、死ぬわよ」
「ちょ、ちょっとマジですか」
「ええ、間違いなく即死よ」

すると、突然、アンジェラが手に持っていたパスタ用のフォークで、ブラッドの肩の辺りを突き刺した。

「痛て〜〜、何をするんだ、アンジェラ」

ブラッドがフォークの刺さったままの防弾チョッキを脱ぐと、Tシャツの肩の辺りが微かに血で滲み始めた。

「ヴァレン、このフォークと、その6連発式の銃、どっちが威力があるか、わかるわよね」

呆れたようなトッティの声に、ヴァレンは無言で頷き、俯いたまま椅子に座った。

「まったく、しょうがない子ね・・・ヴァレン、貴方の気持ちもわかるけど、こういうことはアタシにまかせておきなさい」

ヴァレンは叱りつけられた子供のようにただ黙って下を向いている。

「ブラッド、このリストバンドを右手に付けてみて」

トッティがカウンターの奥の棚から手に取ったのは、ごく普通のスポーツ用のリストバンドだ。
ブラッドは、怪訝そうにそれを右手首辺りにつけると、腕を顔の正面に持ってきて2,3度くるくると腕を回した。

「はい、アンジェラ、もう一度フォークを持って」

アンジェラは、トッティから、先ほどと同じタイプのフォークを手に取ると、
ブラッドの方を向き、刺すぞ、刺すぞという攻撃的なポーズをとった。

その仕草が可笑しくて、ヴァレンはようやく顔を上げ、表情に笑みを取り戻した。

「ちょ、ちょっと・・・まだこの世に言い残すことを考えていないよ・・・」

後ずさりするブラッドに、容赦なく襲い掛かるアンジェラ。
芸達者なアンジェラは表情までも殺人者っぽく振る舞い、周囲の笑いを誘った。

アンジェラが振り下ろしたフォークがブラッドの肩口に刺さろうかと云う瞬間に、
右腕のリストバンドが光を放った。
眩しさにたじろいだアンジェラだが、振り下ろした腕のスピードは落ちない。

体を硬直させたブラッドは、次の瞬間に力が抜けた。

「あれ? ぽよん? なんだこりゃ・・・」

フォークを持ったアンジェラの腕は、はまるでトランポリンの上で跳ねたように、
ブラッドの肩口の一歩手前で跳ね返された。

「この光はね、車のエアバックみたいなもので、あらゆる武器を跳ね返すのよ、便利でしょ」

あっけにとられているブラッドとアンジェラ、そしてヴァレンが大きく頷いた。

「さ、これを貴方たち3人に渡すから、その紙袋はアタシがごみの日に出しておくわ」

ブラッドが足元の紙袋をカウンターの向こうにいるトッティに手渡した。

「そのリストバンドがあれば、致命傷なんてことにはならないんだから、銃も持たなくていいわ」

ヴァレンが右手に持っていた銃を寄こすようにと、トッティが手のひらをヴァレンに向けた。

「はい・・・お願いします」

申し分けなさそうなヴァレンから銃を受け取ると、トッティはヴァレンにビールジョッキを持たせた。
そのジョッキに、アンジェラとブラッドがジョッキをぶつけた。

「さあ、ヴァレン飲もう」
「あ、ジョッキは跳ね返されないんだ」
「きゃはは ブラッドったら面白い」

ヴァレンがブラッドの右肩をポンポンと叩いた。
ブラッドは額から脂汗が拭き出るような激しい肩の痛みを、ヴァレンの笑顔を見て忘れようとした。


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