プラチナブルー ///目次前話続話

サークル・BLUE
April,29 2045

『あ、リカちゃん。久しぶり』
『元気だったか?』


私が久しぶりに顔を出した、WEB麻雀サークル「BLUE」
声をかけてくれたのは、部長の田頭と同級生の西平だった。

元々は10年ほど前に大学生が作った麻雀サークルBLUEのOBが
卒業後、趣味代わりにWEBでプログラムを公開して立ち上げたらしい。
ノーレート・参加自由という気軽さから、高校生や、社会人、主婦も数多く参加。
一時期は登録会員が数万人規模に膨れ上がり、その後、紆余曲折を経て、
幾つかのサークルに分かれた。

私が参加している「BLUE」はノーレート、ノーランキング。
自由奔放というよりも、部長の田頭雄吾(たがしらゆうご)の人柄で
人を集めているといったサークルだ。

高校時代に仲の良かった神谷詩織(かみやしおり)の勧めで、
なんとなくサークルを覗くようになった。

「あ、誠也くんだ。リカちゃん、一緒に応援して」
「うん。いいよ」

詩織とは、彼女の恋人である西平誠也(にしひらせいや)の試合をいつも応援していた。
バスケットボールの県大会でリカ達の高校に来ていた西平誠也に詩織が一目ぼれをして告白し、
ふたりが付き合うようになってから半年になる。

「君たち高校生?」
「はい」

パソコンの画面から、声が突然、飛び出してきた。
サークルBLUEでの交流は、テキストチャットではなく、
ヘッドフォンマイクで会話が交わされることが多い。
声をかけてきたのは田頭雄吾だった。

「いつも、観ているけど、打たないの?」
「だって、ルールを知らないんです」
「じゃあ、教えてあげるよ。自分で打つともっと楽しいよ」

私と詩織は、応援中に雄吾からルールを教えてもらいながら、
少しずつ、麻雀を覚えていった。

「どうしてあがりじゃないの?」
「うん、役がないからリーチをかけないとあがれないんだよ」

「すご〜い。こんなに点数が貰えるんだ」
「リカちゃん。がんばったね〜」

「え〜 当たり?」
「ごめんごめん。12,000点だ」

「今日は、リカちゃん ひとり?」
「はい」

次第に麻雀の面白さに感化され始めた私は、
詩織が誠也と別れて姿を現さなくなってからも、時々アクセスし続けた。
そして、自分も打ち始めた頃の高校3年生の時には、ほぼ毎日参加するようになり、
高校卒業時には、その腕前は一目置かれる存在にまでなっていた。

「強くなったね、リカちゃん」
「ありがとうございます。皆さんに色々と教えていただいたお陰です」
「高校生でこれだけ打てるようになったのは、誠也と龍正以来だな」
「龍正さん?その人は見かけたことがないけど・・・」
「うん。なんでも、彼が高校を辞めたっての事を聞いたんだけど、最近、来てないね」

強い人との対戦が楽しみになり始めた私は、少し残念な思いで、
発声ではなく、キーボードで文字を入力した。

「そうなんですか」

「そういえば、龍正は学校を辞めてから、家出したらしいよ」
「え? そうなのか?」

そのテキストに反応したのは、西平誠也だった。
雄吾が誠也に尋ねた。

「そういえば、龍正と誠也は同じ高校だったな」
「ええ。なんでも、後輩が隣町の不良にからまれていたところを助けに入って相手を病院送りにしちゃって・・・」
「それで退学はキツイな」
「ちょうど停学中だったこともあって、学校を辞めたのは家庭のトラブルって噂ですよ」
「どうしているんだろうな、あいつ」
「なんでも、オジサンが経営しているBarで時々麻雀打っているって話でしたけどね」
「バーか。誠也とリカが高校を卒業したら、遊びに行ってみるか」
「はい」
「うんうん、私も行ってみたい」

私は雄吾と誠也のテキストチャットを眺めていたことを思い出しながら、
みんなとの再会を懐かしく感じていた。



2ヶ月ぶりのサークル。

「やっほ〜元気だよ〜」
「おお、リカちゃん。高校卒業おめでとう」
「ありがと〜。雄吾部長は大学卒業できた?」
「ううん。ダメ6回生決定」
「あはは」
「ま、人生長いし、のんびりやるよ」
「うんうん」

温かく迎えてくれる部長は、もうひとつの家族のような安心感を与えてくれる兄みたいな存在だ。

「試験はどうだったんだ?」
「ダメだった〜」
「あらら、リカなら難関を突破できると思っていたんだけどな」
「ごめんね〜みんなが応援してくれていたのに」
「医者になるより難しい試験らしいからね。次はがんばろうぜ」
「うん」

誠也はバスケットボールでの高校時代の活躍が認められ、推薦で大学に入学したらしい。
詩織が浮気をして誠也と喧嘩した時に、彼から相談を受けたの私だった。
それ以来の良き友人だ。

「久しぶりに 一緒に打ってみるか」
「いいですね」
「はい、お願いします。 あ、その前に部長。相談があるんですけど」
「ん? どうした?」

私は、雄吾に本物の麻雀を打ってみたいと相談した。

「う〜ん、雀荘か〜。女の子が1人で行くところじゃないな〜」

雄吾はリカの話に、心当たりの雀荘をいくつか思い浮かべた。
どこも、ろくでなしの吹き溜まりで、リカの麻雀の腕よりもむしろ
高校を卒業したばかりの女の子に勧められるような店が思い浮かばなかった。

「あ、雄吾さん。いつか話していた龍正のいる店に3人で行ってみますか?」

そう切り出したのは誠也だった。

「お、そうだな。雄吾の入学祝と俺の留年祝と、リカちゃんの残念会だ」
「うんうん。 楽しみ〜」
「じゃあ、来週の5月4日の午後8時はどうだ?」
「ええ。僕は大丈夫です」
「アタシも〜」

私はまるで初めてのデートの時のように心が躍った。

(そういえばアタシ・・・初めてのデートっていつだっけ)

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