陶 房 日 報  とうぼうにっぽう 
陶房かまなりや

2011年11月15日(火)      ソバの音

おソバは音を立てて食べるものだと言われますが、
あながちそうとは思いません。江戸の人は、おソバ
をするする手繰ったといいます。つるつるではなく、
するするというのが良いですね。お蕎麦屋さんで
つるつるどころか、づるづると音を立てて食べて
いる方がいますが、あれは見目の良いものでは
ありませんし、実に不愉快な音だと思います。

 私はソバをはじめ麺類は音を
 立てずにいただきます。一つに
 はあの音は雑音にしか聞こえな
 いからですが、一番の理由は音
 を立てて食べるのは誰にでもで
 きる食べ方だから、それをする
まいと決めています。これ、実はかなり難しいこと
です。特に熱い麺類を静かにすするのは至難です。
が、敢えてそんな熱い種物でもがんばっています。
一説には音を立てて食べるのが容認された背景には
ラジオの普及当初、噺家さんたちが過度に音を出し
て演出したのが始まりであるとか。

江戸風俗研究家の故杉浦日向子氏は、著書『ソバ屋
で憩う』 の中で、見目良いソバっ食いの一例として
『一箸、一口、一すすり』 を提唱していられます。
これは確かに小粋な感じがします。が、音の問題は
個々の感覚ですから、一概にどうすべきかを決める
というわけにはまいりますまい。ソバに関してだけ
言えば、音を立ててすする方が香りを楽しむことが
できるという利点もありますしね。要は個人個人の
食事に対する姿勢でありましょう。

私はこれからもやはり、麺はおとなしく食する方針
で頑張ります。どこかのお蕎麦屋でお会いする
ことでもあれば、遠慮なくお声掛け下さい、お酒の
一献など奢らせていただきます。

かまなりや製 江戸前手打ちソバ(二人前)
皿は、かまなりや製 信楽赤土灰釉六寸皿





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