女房がジジ子さんから借りた回覧文庫、佐野洋子さんの エッセイが面白かったというので、何気なくパラパラと 読んでみたら面白くてついつい全部読んでしまいました。
絵本作家としての佐野さんの 作品は知っていましたが特に熱心 なファンでもなく、畢竟作家さん 個人のこともぜんぜん知りません でしたが、この 『役にたたない日々』 は晩年の佐野さんのぼやき日記と いう形で、とてもすいすい読めちゃいます。女性が読め ばなるほどおもしろかろうなあと思いました。私は男です が、舞台となっている佐野さんが当時お住まいの荻窪の、 それも教会通り界隈で少年時代を過ごした身には、たい そう身近に感じることができました。
佐野さんは昨年に他界され、この本の中で毒づいたり、 自己嫌悪に陥ったりする姿はすでに過去のものですが、 伝法な振る舞いの中にも細やかな観察があって、人や 物や世の中を見る切り口が痛快です。老いと病を主体 的に受け止めながらも世間とのつながりを危うく保ち、 ともすれば引きこもる自分を正当視しつつも、事あら ば客観的に自己を見つめて焦り、一喜一憂しながらも 自分の中へ落ち着きどころを見つけていく生き方は、 老獪さと幼さが同居していて、ああ人はこれだけ生き てもやはり迷い続けるのだなあと、自分の歳でくよくよ していても仕方ねえやなあと、ちょっと安心しました。 佐野さんのナマの生きザマに学ぶところの多い本です。
ジジ子さん、ありがとうございました。ハンコ押して おきました。次はどなたへ回しましょう。
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