陶 房 日 報  とうぼうにっぽう 
陶房かまなりや

2011年09月09日(金)      随 筆

女房がジジ子さんから借りた回覧文庫、佐野洋子さんの
エッセイが面白かったというので、何気なくパラパラと
読んでみたら面白くてついつい全部読んでしまいました。

 絵本作家としての佐野さんの
 作品は知っていましたが特に熱心
 なファンでもなく、畢竟作家さん
 個人のこともぜんぜん知りません
 でしたが、この 『役にたたない日々』
 は晩年の佐野さんのぼやき日記と
いう形で、とてもすいすい読めちゃいます。女性が読め
ばなるほどおもしろかろうなあと思いました。私は男です
が、舞台となっている佐野さんが当時お住まいの荻窪の、
それも教会通り界隈で少年時代を過ごした身には、たい
そう身近に感じることができました。

佐野さんは昨年に他界され、この本の中で毒づいたり、
自己嫌悪に陥ったりする姿はすでに過去のものですが、
伝法な振る舞いの中にも細やかな観察があって、人や
物や世の中を見る切り口が痛快です。老いと病を主体
的に受け止めながらも世間とのつながりを危うく保ち、
ともすれば引きこもる自分を正当視しつつも、事あら
ば客観的に自己を見つめて焦り、一喜一憂しながらも
自分の中へ落ち着きどころを見つけていく生き方は、
老獪さと幼さが同居していて、ああ人はこれだけ生き
てもやはり迷い続けるのだなあと、自分の歳でくよくよ
していても仕方ねえやなあと、ちょっと安心しました。
佐野さんのナマの生きザマに学ぶところの多い本です。

ジジ子さん、ありがとうございました。ハンコ押して
おきました。次はどなたへ回しましょう。

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