陶 房 日 報  とうぼうにっぽう 
陶房かまなりや

2009年02月04日(水)      閑 あり

立春の今日は休みをとって、の〜んびり と過ごしました。
倅も女房も出掛けて家には自分ひとりきり、何の気兼ねも無く、
気儘に本を読んだり、ギターを弾いたり、ヒマを楽しみました。

 先日、たまさか立ち寄った紀伊国屋書店
 に直木賞受賞作 『利休にたずねよ』 の
 初版本があったので迷わず買いました。
 ちょこちょこ読んでいましたが、今日は
 一気に読み終えました。評判通りとても
 面白い本でした。千利休が秀吉から切腹
を言いつけられたその日から遡るように物語は語られ、一人一人
の人物別に章立てされた文章は改行が多く読み易くできています。
そのせいかいかんせんページ数が多くなって本が分厚いのが難
でしたが、内容は申し分の無い小説に仕上がっており、文学賞を
受けてしかるべき一冊であると思いました。

焼物屋としてはやはり長次郎の章を面白く読みました。聚楽第の
瓦を焼く傍ら、利休からの依頼で茶碗を工夫するのは思いのほか
難しく、只の茶碗ひとつに命をすり減らす職人魂は 『茶』 の世界
の深遠を物語り、作るということの辛辣を描いて痛快です。また、
それを作らせる利休の妥協を許さない姿勢にもまた茶人の執着の
深さを見、憑かれた者のみが探す 『道』 の長さ深さに感じ入りま
した。今作では千利休という人物を熱い人物として描いているところ
が秀逸です。僧体の茶人などというと世離れして熱さなどとは無縁
に思うものですが、名物に、美に、人に、そして女人にことのほか
熱く関わる利休像は創作伝奇の域を超え、物語世界ながら血の
通った人物像として印象に残ります。

ヒマな1日、良い本を読んで過ごせました。




 < 過 去  目 次  未 来 >


陶 房 日 報