立春の今日は休みをとって、の〜んびり と過ごしました。 倅も女房も出掛けて家には自分ひとりきり、何の気兼ねも無く、 気儘に本を読んだり、ギターを弾いたり、ヒマを楽しみました。
先日、たまさか立ち寄った紀伊国屋書店 に直木賞受賞作 『利休にたずねよ』 の 初版本があったので迷わず買いました。 ちょこちょこ読んでいましたが、今日は 一気に読み終えました。評判通りとても 面白い本でした。千利休が秀吉から切腹 を言いつけられたその日から遡るように物語は語られ、一人一人 の人物別に章立てされた文章は改行が多く読み易くできています。 そのせいかいかんせんページ数が多くなって本が分厚いのが難 でしたが、内容は申し分の無い小説に仕上がっており、文学賞を 受けてしかるべき一冊であると思いました。
焼物屋としてはやはり長次郎の章を面白く読みました。聚楽第の 瓦を焼く傍ら、利休からの依頼で茶碗を工夫するのは思いのほか 難しく、只の茶碗ひとつに命をすり減らす職人魂は 『茶』 の世界 の深遠を物語り、作るということの辛辣を描いて痛快です。また、 それを作らせる利休の妥協を許さない姿勢にもまた茶人の執着の 深さを見、憑かれた者のみが探す 『道』 の長さ深さに感じ入りま した。今作では千利休という人物を熱い人物として描いているところ が秀逸です。僧体の茶人などというと世離れして熱さなどとは無縁 に思うものですが、名物に、美に、人に、そして女人にことのほか 熱く関わる利休像は創作伝奇の域を超え、物語世界ながら血の 通った人物像として印象に残ります。
ヒマな1日、良い本を読んで過ごせました。
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