陶 房 日 報  とうぼうにっぽう 
陶房かまなりや

2008年10月21日(火)      戯 作

本日も女房に教室を任せ、素焼きの窯を焚きながら、書の作品を
一つ仕上げました。昨日は漢字一辺倒でしたが、今日は一気に
バレて江戸の草双紙、いわゆる黄表紙から恋川春町の安永五年
の戯作 『うどんそば化物大江山』 の序文を拝借しました。

 筋は武士の蕎麦が物の怪のうどんを退治
 するという他愛ない勧善懲悪。その中に
 多々戯作特有のパロディーが埋め込まれ、
 江戸好みの洒落を楽しめます。絵本の形
 をとっていますので、今で言う漫画といって
 差し支えないでしょう。序文はその本筋を
匂わせるように蕎麦の効用と薬味の大切さを説きます。漢字かな
混じりで、所々のの字だけを強調して書いてあるのは視覚的な
効果を狙ってのことでしょう。その部分だけは原典に忠実に、
他は自分の字でリズム良く書きました。紹介されているサイトが
無いのでここに序文全文をご披露します。
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本草にいわく蕎麦は気を降し腸をゆるくし白濁帯下泄痢腹痛上気
熱腫の痛を冶寿脾異虚寒の人に忌むとあり誠にそれ蕎麦の徳揚げ
てか楚うべ可らずしかりと雖も莢菔おろし陳皮蕃椒乾松魚などの
役味なければ其蕎麦の賞玩も薄しこれまったく君臣合体乃如しと
昔時の大江山になぞらへ天春雨のねむけを覚寿のみ

ほんそうにいわくそばはきをくだしはらわたをゆるくしびゃくだく
こしけせつりふくつうじょうきねっしゅのいたみをじすひいきょかん
のひとにいむとありまことにそれそばのとくあげてかぞうべからず
なりしかりといえどもだいこんおろしみかんのかわとうがらしかつ
おぶしなどのやくみなければそのそばのしょうがんもうすしこれまっ
たくくんしんがったいのごとしとむかしむかしのおおえやまになぞ
らえてはるさめのねむけをさますのみ
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要は、蕎麦に薬味がなきゃぁ始まるめぇってことを大仰にくどくど
書いているのですが、この芝居がかった前文を読むことでこの後
の本文がいかにも面白みを増してきます。最後のところで、春雨
の眠気を覚ますくらいのことしかできませんけどね。と、さりげ
なーく圧を抜くあたりも小洒落ていて気が利いています。

昨日は漢字だったので肩に力が入った作業でしたが今日は楽しく
筆を踊らせて愉快な気分で書きました。もともとがバレた人間です
から、こういったものの方が自分には合っているように思います。
明日はもう少しやわらかいものを書いてみようと思っています。




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